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シルフの舞~精霊と人の輪舞(ロンド)~  作者: 風間 義介
一章「精霊を操るもの」
3/40

二、

 退魔士の実習というものは、実際にあやかしとの戦闘を行うことを意味しているのだが、実際にはそこまで強力なあやかしを相手にするわけではない。

 鬼や妖狐の類、あるいは、ヴァンパイアや人狼(ワーウルフ)のような人間を襲う可能性の高いあやかしを相手にするには、荷が勝ちすぎると言う教官側の判断によるものだ。

 そのため、勇樹たちが討伐するあやかしのほとんどは、ゴブリンや瀬戸大将か、ランクが高くてもオークや妖狐(ようこ)のように、少しばかり手こずる程度のあやかしだ。

 だが、年齢的に高校生である彼らには、これくらいがちょうどよかった。何より、退魔士の仕事は四人一組(フォーマンセル)三人一組(スリーマンセル)、最低でも二人一組(ツーマンセル)で挑むことが原則となっている。そのため、今の彼らは実力を伸ばすことよりも、己の特性をつかみ、どのようなパーティでもあやかしに対応できるようにすることが重要なのだ。

 「よし、これから実習を始める!各自、装備を整えたのち、男女別、奇数番号と偶数番号に別れて整列するように」

 地下に用意された広い空間で、教師の声が響き渡る。指示されてた通り、自分たちの装備を整えた生徒たちは男女別で偶数番号と奇数番号に整列し、四つの列を作った。

 ――今回は四人一組か……さて、誰と当たるのやら

 勇樹は教師が何を意図してこのような並び方にしたのか、何となくそのような予想をつけた。

 もっとも、勇樹からしてみれば、誰がパーティメンバーであろうと、自分の役割を認知してそれに徹底するつもりなのだが。

 「では、自分のいる横の列が今回のパーティとなります」

 パーティの編成についての説明の後、今回の実習で討伐対象となるあやかしについての説明が行われた。

 今回の実習で討伐するのはゴブリンと同系統の精霊、レッドキャップと呼ばれる、一種の人食い鬼だ。

 彼らは鈍器を用いて人を襲う種族で、襲った人間の血液を自分のかぶっている帽子に浸すといわれている。その布はある種の大麻のようなもので作られているため、下手をすれば、一生を廃人として過ごす可能性が高くなる。

 そのため、仮に怪我をした場合はすぐに帰還し、治療を受けること。

 そう指示が出た後、生徒たちはパーティごとに集まり、作戦会議を始めた。

 ――さてと、俺の班は……

 勇樹は自分の班員を見渡し、自分の立ち位置を考察し始めた。

 現在、勇樹の所属する班は接近戦を得意とする人間が多いようだ。その証拠に、彼らの腰には日本刀やレイピアのような形状をした剣が携えられている。どうやら、自分が進んで前線に進むよりも、後ろの警戒や補佐に回った方がよいのかもしれない。

 唯一問題なのは。

 ――召喚士はいないと……なら、久々にあいつの力を借りるかな

 勇樹は心のうちでそっとため息をつきながら、出発し始めた班員の後に続いた。

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