一、
東京某所にある下町。その一角にひと際大きい屋敷がある。
下町の住民に曰く、その屋敷は宮内庁の役人が主人であり、なんでも平安時代から天皇に仕えてきた由緒正しき家柄なのだとか。
その屋敷にある部屋の隅で、少年、土御門護は、一枚の板を睨みつけていた。風水羅盤を思わせるそれは、護が手を触れていないにも関わらず、ひとりでにくるくると回転している。
ふと、円形の部分が外側から一つ一つ、ひとりでに動きを止め、最後には北斗七星が描かれた中央の板が動きを止めた。
そして、動きを止めた羅盤を見て、護はそっとため息をついた。
「何を占っていたんだ?」
「……朱雀か……いやさ、前に夢渡りで会った男子から頼まれていたことを占っていたんだが……」
突然現れた紅い髪の毛の青年、朱雀の言葉に驚くことなく、護は彼の問いかけに答えた。
しかし、その表情は穏やかなものではなかった。敵に対して恐怖心を抱いているような、険しい表情をしている。
「……何と出た?」
「……星辰、整いし時」
星辰の整いし時、大いなる海のもの、死の眠りより目覚める。古の星の支配者の再臨なり。
護は羅盤のはじき出した結果をそのまま読み上げた。その言葉に、なぜか朱雀も言い知れぬ恐怖を覚えた。おそらく、護の険しい表情もこれが原因なのだろう。
「大いなる、海のもの?」
「……詳しくはわからん。けど、よくないものだってことはよくわかる」
そして、それを呼び出そうとしているがために、精霊たちが呼び掛けに応じないのだろう。
「……さて、どうしたものかな……」
護は依然、浮かない表情のまま、今後の方針について思案していた。




