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常勝街道記  作者: 鈴神楽
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ただ並べられる金属の留め金具

戦闘ロボットとの戦い

「次の対戦の事なのですが、ちょっとイレギュラーが発生しました」

 囁が告げてきたので貫が首を傾げる。

「イレギュラーって、あのノンルールのファイアーバトルでいまさら何かあるの?」

 囁が眉を寄せて尋ねる。

「対異邪用の戦闘ロボットってあるのを知っていますか?」

 瓜が頷く。

「当然、確か、ドイツの方で本格的に作られているって話だよね。それがどうかしたの?」

 囁がため息を吐きながら言う。

「次の対戦相手がそれなんです」

 長い沈黙の後、走が首を傾げる。

「それって流石にルール違反じゃないの?」

 囁が疲れた顔で答える。

「戦車等を装備の一つと認めた前例をだされて、装備だと主張してきました」

 貫が呆れた顔をして言う。

「あちきが別に構わないけど、どうして、そんなに嫌そうな顔をしているのかが解らないが?」

 囁が視線をそらす。

「それは、いくらなんでも百体の戦闘ロボットの相手をしてとは、言い辛いですから」

 流石に固まる貫。

「随分と、太っ腹ね、一台数億は、掛かってるのに、それを百体も作ったの?」

 瓜が全く関係ないことで感心していると走が言う。

「いくらなんでもそれって卑怯だと思います」

 囁が頷く。

「あたしも同感ですが、相手は、装備の個数の制限は、無かった筈だと主張しています」

「ルールブックに載ってなければなんでもOKって言うつもりなの?」

 走が不愉快そうにする中、瓜が言う。

「でもそういう何でもありってどっちかと言うと八刃の流儀だよね?」

 貫が腕を組む。

「何かヤヤさんの影が見え隠れしてるような……」

 他のメンバーも同感の様子であった。



 そして、対戦の時間が来た。

「良く来たな! 今日こそ、個人の才能等は、科学の万人性には、勝てないって事を証明してやろう!」

 白衣を着た科学者が百体のロボットの後ろで仁王立ちして宣言する。

 貫がため息を吐く。

「あのさ、一応そっちが挑戦者だって事、理解してる?」

 貫の言葉に科学者は、鼻で笑う。

「私がやるのは、科学の実証。お前らみたいに無意味な戦いに興じる趣味は、無い!」

 肩をすくめる貫。

「はいはい。それで、もう始める?」

 科学者が余裕の笑みを浮かべて言う。

「いつでも構わないぞ!」

 貫は、右手の『貫』と刻まれた親指の爪と右手の茶色の薬指の爪、左手の金色な中指の爪、右手の茶色の薬指の爪の順番で擦り合わせる。

『大地に金の大鎚を叩き落さん、アースメタルハンマー』

 地面に放たれた力は、衝撃波となり、地震の様に戦闘ロボット達の動きを僅かに停止させる。

「その程度の振動で倒れると思うな! オートジャイロ機能を装備している私のロボット達は、直ぐに戦闘可能状態に復帰する!」

 科学者の言葉を無視して、貫は、右手の『貫』と刻まれた親指の爪と右手の青色な小指の爪を数回擦り合わせる。

『大海の導きを大砲に、シーウォーターキャノン』

 何故か上空に放たれた水の砲弾は、周囲に大量の水を撒き散らす。

「無駄、無駄、無駄! 防水も完璧!」

 勝ち誇る科学者をやはり無視して、貫は、右手の『貫』と刻まれた親指の爪と右手の青色な小指の爪を数回擦り合わせる。

『北極の氷の槍を放て、ノースアイスランス』

 地面に放たれた氷の槍は、地面を覆う水を凍らせて、一気に戦闘ロボット達へ氷の束縛を与える。

「その程度の拘束、直ぐに打ち破れる!」

 自信たっぷりの科学者の言葉に貫がようやく答える。

「所詮、物理法則にとらわれている限り、異邪への有効な武器になりえないね」

 貫は、右手の『貫』と刻まれた親指の爪と右手の黄色の中指の爪、右手の赤色な人差し指の爪を数回擦り合わせる。

『雷炎の矢を乱れ撃たん、プラズマアローラッシュ』

 目標もろくにつけられず放たれた高熱の電撃が乱立した戦闘ロボット達に命中し、凍りつかせる氷を伝わって、内部に侵入、爆発させていく。

 一度、爆発を開始すると、接近しすぎた所為もあり、連鎖爆発が始まってしまう。

「そんな……」

 愕然としている科学者をひっ捕まえて、安全圏まで退避する貫。

「戦いにおいて数は、武器じゃない。数を有効に使う事で初めて武器になる。ただ、数を集めただけじゃ、異邪への武器になれないよ」

 力を落とす科学者であった。



 ぬいぐるみショップシロキバ。

 八刃の長、ヤヤは、新作のぬいぐるみを作成していた。

「ところで、今回の戦闘ロボットの予算の出所ってお前だろ?」

 親友で、八刃学園の学園長の大山良美が質問するとヤヤは、あっさり頷く。

「丁度良い機会だから、単純な戦闘ロボットじゃ、駄目だって証拠と対異邪機械の生産ラインの確立に利用した」

 良美が苦笑する。

「ゆっくりと気付かれず、準備を進めているって所だな」

 ヤヤが頷く。

「あの子達も戦力になると良いけど」

 店先で、貫が今回の報酬で買った金属製のバックルを自慢する姿を見るヤヤと良美であった。

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