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常勝街道記  作者: 鈴神楽
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足を速める蛍石の髪留め

傭兵との対決。最後に勝負を決めるのは?

「明日は、自由とデートなんだ」

 貫が幸せにそうに言うと瓜が不思議そうな顔をして言う。

「あれ、でも明日ってファイアーバトルじゃなかった?」

 その一言に貫が大声を上げた。

「忘れてた!」



 ここは、竜夢区にある倉庫。

「協力感謝する」

 鍛えられた肉体で硝煙の匂いを漂わせるその男の言葉に、武装した男達のリーダーが言う。

「報酬さえ、貰えれば何でもする。それが俺達、傭兵だろ?」

 男、エリア44は、苦笑する。

「そうだった。しかし、今は、違うのだ」

 傭兵の一人が肩を竦める。

「今でも信じられないぜ、最強の傭兵って呼ばれたあんたが、何でこんな下らない賭け試合なんてやってるんだ?」

 エリア44は、深刻そうな顔をして答える。

「昔の話だ、俺がある国に雇われていた。軍人達と出撃を待っていた時、そいつは、現れた。最新兵器で武装した兵士達がたった一人の素手の男に壊滅させられた。信じられるか?」

 質問した男が顔を引きつらせる。

「冗談だろ?」

 エリア44は、苦笑して言う。

「ついでに言えば、四つの基地があって、残りの三つも単独で落とされた。この世界には、そんな化け物が居る。そして俺は、その化け物と戦えるようになる為にファイアーバトルに参加している」

「冗談が過ぎるぜ……」

 エリア44の言葉は、誰も信じなかった。



 明朝、ぬいぐるみショップシロキバに朝の鍛錬の為に来ていた貫を狙ってエリア44に雇われた傭兵達が集まっていた。

「それにしてもおかしな指示だ。どうして店にいる間に攻撃を仕掛けたら駄目なんだ?」

 一人の傭兵の言葉に他の傭兵が肩をすくめていう。

「命令は、命令だ。あの店には、流れ弾一つ当てるなって話だ」

「何を躊躇してるんだ。ここは、思い切って」

 傭兵の一人が手榴弾を手に持った時、戦車が落下して来た。

「何だ!」

「あれは、最新型の投下式の軍事基地制圧用戦車だぞ!」

 傭兵達が驚愕している間にも次々と投下される戦車。

「何が起ころうとしているんだ……」



 その頃、シロキバの中では、ヤヤがこの頃こっているクロワッサンをテーブルに並べていた。

「どう、太陽の手でこねた生地で作ったのよ」

「ヤヤさんの場合、本気で太陽位の温度が出てそう」

 何故か食事に来ていた瓜の言葉にヤヤが朗らかに答える。

「馬鹿ね、そんな事をしたら生地が焦げちゃうじゃない」

「出来ないって言わない所が怖いよね」

 貫が半ば呆れた顔をしていると走がやってくる。

「ヤヤさん、大変です。また戦車が来ました」

 大きくため息を吐くヤヤ。

「もう、誰が後始末すると思ってるんだろう。もう一度、あの大国には、思い知らせておいた方が良いのかな?」

「百爪様が対応に出てますけど、止めた方が良かったですか?」

 走の言葉に眉を顰めてヤヤが言う。

「百爪様にももう少し、被害を抑える戦い方をしてもらいたいんだけど、私がお願いできる立場じゃないからなー」

 その次の瞬間、大きな爆発音が連続して、一同がため息を吐く。



「なんだ、あの化け物!」

 傭兵のチームリーダーが携帯に怒鳴る。

『あの店は、地球上で一番危険な場所だ。聞いた話では、あそこの店にいる幼女風の生き物は、木星クラスの惑星までだったら破壊できるらしい』

 長い沈黙の後、傭兵のチームリーダーが言う。

「……冗談だよな?」

『因みに、あそこの店主は、ホワイトハウスを半壊させた事があり、ブラックリストのトップページに載り続けて、莫大な賞金が掛かっている。八刃と言う化け物集団のトップでファイアーバトルのナンバーゼロだ。だから、あそこにターゲットが居ると解っていても襲撃がかけられないんだ。店に被害が及ばない限り、干渉して来ないから、安心して仕事をしてくれ』

 エリア44からの答えに傭兵のチームリーダーが疲れ果てた顔をして言う。

「残念だが、無理だ。全員、心が折れてる。使い物にならない。俺もだがな」

『そうか、前金は、慰謝料としてとっておけ』

 通話が切れる。

「エリア44、お前は、凄いな、あんな物を見て、まだ戦おうと思うんだからな」

 そう呟く傭兵のチームリーダーの前では、どこかの幼な妻風の女性ヤヤが幼女(百爪)に戦車でお手玉を教えるのであった。



 携帯を切ってエリア44が舌打ちする。

「大国の奴等の税金の無駄遣いで、作戦が一つ駄目になった。次の作戦に移る」

 そういって、狙撃銃を持った大量の人員を動かし始めた。



「ねえ、このフローライトの付いたバレッタ、似合うでしょ」

 嬉しそうに言う貫に走が素直に頷く。

「はい、凄く似合ってます」

「そうでしょ!」

 上機嫌の貫に対して瓜が意地悪な顔をして言う。

「フローライトは、壊れ易いんだから気をつけてね。もちろん修理代は、有償だから」

 口を膨らませる貫が、手提げを持って店を出ていく。

 そんな貫を見て走が呟く。

「でも、大丈夫なのかな?」

 瓜が大して気にした様子もなく答える。

「ファイアーバトルの方は、デートの後に対決するって、宿題をしない子供みたいな事を言ってたね」

 心配そうな顔をする走にヤヤが笑顔で答える。

「大丈夫、自由君には、うちの方でガードを付けて置いたから」

 走が頬をかきながら言う。

「貫の事は、心配しないの?」

 失敗作のぬいぐるみでさっき習ったお手玉の練習をしながら百爪が答える。

「命懸けの勝負、それ相応の覚悟があるよ。それに、本当に危ない時は、どうにかする奴等は、いくらでも居るから」

 開店の準備を始めるヤヤを指差す百爪であった。



「卑怯だよね、銃弾が発射音より早い距離での狙撃なんて」

 道路に無数の弾丸痕をつくりながら貫は、走る。

「まー殺気があって射線が解るから平気だけど、うざったいな」

 足を狙う弾丸をあっさりかわしながら貫が言う。

 次の瞬間、地面が爆発した。



「ダメージを与えられたか?」

 エリア44の言葉に傭兵の一人が言う。

「対戦車地雷の直撃です。死体が残るかも疑問ですよ」

 エリア44を除く傭兵達が勝利を確信した時、次の報告が入る。

『目標、ダメージありません』

 その言葉に、傭兵達が驚くが、エリア44は、平然と対応する。

「やはり、狙撃で気を散らしただけでは、地雷もきかないか。狙撃チームに伝達。ターゲットを出来るだけゆっくり動くようにさせろ。突入部隊と一緒に俺もでる」

 そして、バイクに跨るエリア44。



「流石にやばかった。この間、作ったばっかりの『ゴールデンミラーカーテン』で攻撃を逸らさなかったら服が汚れるところだった」

 攻撃を避けながら走る貫にとっては、先程の地雷もその程度の認識しか無かった。

 十字路に差し掛かった時、自分の来た方向を除く三方から道を塞ぐ様な形で車が突っ込んでくる。

 貫は、右手親指の爪で、右手の茶色の薬指の爪を数度擦りながら地面に右手を向ける。

『土の盾よ巡れ、アースシールドサークル』

 地面が盛り上がり、直前で車の方向を変化させてスペースを作ると貫は、そのスペースに駆け込む。

 車をやり過ごした時、衝突した車を飛び越えて、エリア44のバイクが現れる。

「何故、素直に後方に避けなかった?」

 貫が軽くため息を吐いて言う。

「あんな見え見えな誘いに乗ってたらどんなトラップを敷かれているか解らないからね。咄嗟の時こそ、相手の想定しない道を進めって教わってるの」

「実戦経験が豊富な奴だ。しかし、これからが本番だ!」

 エリア44が指を鳴らすとブロック塀が爆発し、貫に襲い掛かる。

 それに対して貫は、それを瞬時に目視して、右手親指の爪で、右手の赤色の人差し指の爪を連続して擦る。

『炎の矢を射よ、ファイアーアロー』

 炎の矢の連射で、その全てを撃ち返し、その後ろから襲撃者達をノックアウトする。

 その次の瞬間、エリア44が乗っていたバイクが突っ込んでくる。

 貫は、右手親指の爪で、右手の青色の小指の爪を擦りつけながら振り下ろす。

『水の刃よ敵を斬れ、ウォーターブレード』

 水の刃がバイクごとエリア44のヘルメットを切り裂く。

 エリア44は、飛び降り際に小口径の拳銃で連射する。

 咄嗟に顔を逸らす貫だったが、髪に銃弾が掠る。

 間合いを取る二人。

「今まで派手だったのに、いきなりしょぼくなったね」

 貫の言葉にエリア44は、両手に一丁ずつ構えた接近して、至近距離で連射する。

 貫が舌打ちして、銃弾を避けながらなんとか間合いを取ろうとする中、エリア44が言う。

「やはりな、お前達も物理法則を捻じ曲げるには、時間が必要。普通に撃っていたら効かないだろうが、この至近距離なら捻じ曲げる時間もあるまい」

 正解であった。

 貫も八刃だ、一秒も時間があれば拳銃を弾くくらいの気の収束が可能で、直撃を食らっても平気だが、ここまで接近されては、それも不可能な上、下手に気を集中させたら、行動が遅れる。

 貫は、純粋な体術のみで、至近距離からの弾丸を避け続けているのだ。

 そして、貫の掌がエリア44の腹に触れた。

「こっちが先だ!」

 しかし、エリア44は、軽く後ろに弾かれてしまう。

 貫は、右手親指の爪で、左手の白色の親指の爪を擦りつけ放つ。

『光の矢を射よ、ライトアロー』

 高速の光の矢がエリア44を打ち倒した。

 倒れたままのエリア44の携帯がなるが、ダメージが大きいエリア44は、出られない。

「あの一撃、どうしてあれほど早かった?」

 口だけが動くエリア44の質問に貫が服についた埃を払いながら言う。

「簡単だよ、あれって単なる寸勁スンケイ。体に染み込ませた鍛錬の成果を出しただけ。常識を捻じ曲げる意思の収束も必要なかった。あちきが常に八刃の術を使うと油断したあなたの負けだよ」

 エリア44は、悔しそうに言う。

「自分の油断に負けたと言うわけだな。次は、必ず勝つ」

「出来ればあちき以外にして」

 そのまま貫は、デートに向かうのであったが、最初の銃弾で、折角のバレッタが壊れていて、自由が慰める事になる。

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