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常勝街道記  作者: 鈴神楽
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血塗れのシルバーバッチ

ジャングルでアメリカ兵との対決

 貫達は、映画を観にいった帰り道。

「しかし、海兵さんって強いんですね!」

 走の言葉に瓜が頬をかく。

「まあ、あたし達より格段弱いけどね」

「そうそう、あんなチンケなブービートラップに引っかかる奴なんて八刃には、いない」

 貫も同意する。

「あんなものは、映画だ、真のアメリカ軍人は、あの程度のトラップに引っかかる事は、ない!」

 貫達の後ろに将官服を着た男が立っていた。

「敢えて無視していたけど、お前なんだ?」

 貫の言葉に将官服の男が答える。

「お前の次の対戦相手だ。最初に言っておく、私は、日本人が嫌いだ。特に八刃は、憎んでいる」

 憎悪の視線にひく瓜と走であった。



 ぬいぐるみショップシロキバ。

「次の対戦相手だけどね、実は、私がらみで恨みを持ってるのよ」

 ヤヤの言葉に貫がため息を吐く。

「またですか? どれだけ恨みを買ってるんですか?」

 ビールを飲んでいた良美が言う。

「それこそ数え切れないほどだろ? だけど、この件は、あたしも詳しく知らないぞ?」

 ヤヤがうなづく。

「まだあちきがバトルの闘士をやっていた時代。ほら副都心のジャングルを再現したテーマパークのイベントに参加して、疲れていた時があるでしょ。その時の対戦相手だよ。今更だけど、あちきがちゃんとしていればもう少し違った結果になっていたのかも」

 瓜がフォローする。

「そんな、ヤヤさんの所為では、ないですよ。だって、対戦後に自殺したんでしょ?」

 苦笑するヤヤ。

「その場で殺さなければ、命をとったことにならないなんて、自己満足。自分との対戦が原因でその後に死んだ相手が居たとして、それを自分に関係ない事は、ない」

 走が、沈んだ顔をする。

「戦いって、そこまで考えないといけないんですね」

 ヤヤがうなづく。

「だからって戦わないって言う選択肢は、私は、選べない。対戦相手のその後も背負う覚悟を持って戦えって事」

 長い沈黙の後、貫が搾り出すように言う。

「……重いです」

 良美が背中を叩く。

「ガキのお前らは、目の前の事だけを考えてろ。ファイアーバトルの後の事は、あたし達大人が責任もってやるから」

 ヤヤも頷く。

「そうよ。今は、自分を高める事を優先しなさい。間違うこともあるかもしれないけど、私たちがその間違いを正してあげるから」

「解りました」

 貫が応えると、ヤヤが釘を刺す。

「だけど、甘く見ない事。本当の現代戦のプロは、多くの実戦を積み上げられた結果の存在。貴女のシュートネイルみたいな歴史が浅い技では、色々と苦戦するはず。でもそれを糧にしなさい」

「頑張ります!」

 貫が強く頷いた。



 戦いの場所は、竜夢区に再建されたジャングルテーマパーク。

 深夜のジャングルを貫が歩いていた。

「動物の気配が多すぎて、気配が掴み辛い」

 汗を拭う貫が小枝を踏み折った。

 次の瞬間、無数の弾丸が迫ってくる。

 右手の『貫』と刻まれた親指の爪と黄色の中指の爪を擦り合わせる。

『雷よ盾となれ、サンダーシールド』

 雷が盾の様に発生し、銃弾を逸らす。

 腕を掠める銃弾に貫は、唾を飲む。

『中々、粘るな。だが何時まで保つかな?』

 四方八方から聞こえる、クリムゾンフィンガーの声に歯軋りをする貫。

「場所さえ掴めれば、何とかなるのに。気配を消された状態では、気を放っても他の気に紛れて特定出来ない」

 自らも気配を消しながら移動するが、クリムゾンフィンガーが指揮する部隊は、微かな音で貫を捕捉してくる。

 右手の『貫』と刻まれた親指の爪と黄色の中指の爪を擦り合わせる。

『雷の矢を射よ、サンダーアロー』

 敵を発見した貫は、一撃で倒す。

 それでも、敵の詳細の数は、解らず、貫は、強いプレッシャーの中、疲労を高めていく。

「かなりの数を倒した筈、銃弾の数だって確実に減ってる。もう少しがんばれば、なんとかなる筈」

 貫が大きく息を抜いた瞬間、その足元が崩れた。

「落とし穴!」

 咄嗟に蓋になっていた場所の僅かな抵抗を使って飛び上がる貫。

 その瞬間、ガトリング砲が唸った。

 右手の『貫』と刻まれた親指の爪と黄色の中指の爪を擦り合わせる。

『雷よ盾となれ、サンダーシールド』

 貫が必死の思いで防御を行ったが、逸らしきれなかった弾丸を貫の太ももを抉った。

『貴様の負けだ。お前がプレッシャーの中、気が緩み、落とし穴に嵌り、緊急回避に移る瞬間を待ち続け、この一撃に勝敗をかけた』

 クリムゾンフィンガーは、周囲の落とし穴が見える若干高い場所に、身を隠して、チャンスを待っていたのだ。

 周囲から近づく兵士達の足音、絶体絶命と思われた時、テーマパークのスピーカから良美の声が聞こえた。

『貫、見事に負けフラグを立ててるな。最後にヒントだ。そこは、急ごしらえのテーマパーク、木々が根付いていない。その意味は、解るよな?』

 動けない貫は、最後の力を振り絞る。

 右手の『貫』と刻まれた親指の爪と左手の緑色の薬指の爪を数度擦り合わせる。

『木をその身を倒し、敵を潰せ、ウッドドミノ』

 根付いていない木々が貫の呪文でドミノ倒しの様に次々と倒れていく。

 大騒音と共に、視界が開け、木に押しつぶされ、気絶するクリムゾンフィンガーが見えた。



「今回は、勝ちを確信して油断した私の負けだ」

 勝負の後、クリムゾンフィンガーが告げる。

「そんな、良美さんのヒントが無かったら、負けていたのは、あちきだった」

 貫が何処か後ろめたそうに言うが、クリムゾンフィンガーは、取り合わない。

「横から助言があったから負けたなど、戦場では、言えないに決まっているだろう」

 クリムゾンフィンガーは、胸の銀バッチを外し、貫に投げつける。

「それは、預けておく。必ず勝って取り返すから大事にとっておくのだな!」

 そういい残しクリムゾンフィンガーは、去っていくのであった。

「あちきは、もっと強くなって見せる!」

 預かった銀バッチを握り締める貫であった。

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