穴が穿たれるプラチナの簪
神との対決、それは、八刃の定め
貫と走が神社にお参りに来ていた。
「「次の試験でいい点がとれます様に」」
付き合わされた瓜が呆れる。
「神様がいちいち、個人の成績まで干渉してくるわけないじゃん」
すると奥から同じ年位の巫女が現れる。
「そんな事は、ありません。神様は、私達、全員を見守っていらっしゃるのですから。真摯に願えば、きっと届きます」
走も同意する。
「そうだよ、万が一の可能性もあるんじゃない?」
瓜が頬をかきながら言う。
「見てないとか、応えられないって訳じゃないよ。ちょっと祈っただけでいい成績がとれたら、同じ条件で成績が低い人間が可哀そうだとだと思わない? そんな不平等を神様がする訳ないよ」
流石の巫女も言葉に詰まる。
「やっぱり駄目だよね」
ため息を吐く走。
そのまま帰って行こうとする貫達を見て、巫女があわてる。
「せめて、家内安全のお守りを買って行って下さい!」
それを聞いて貫が振り返りもせず手を振る。
「あちきの家族達がお守り程度でどうにかなるトラブルで、危険に陥ることは、無いから要らない」
すると、泣き崩れる。
「もう駄目だ! やっぱファイアーバトルに出ないと!」
それを聞いて、振り返る貫達。
瓜が近づき確認する。
「貴女も闘士なの?」
巫女は、涙を拭いながら頷く。
「ついこの間、この神社の維持費を稼ぐ為に登録しました」
それを聞いて貫が頬をかく。
「でも、貴女、戦闘訓練を受けていないでしょ?」
それに対して、巫女が答える。
「一応、神降ろしの家系なんです」
顔を見合わせる貫と瓜を背に走が同情する。
「大変なんですね」
瓜が手をあげる。
「一つ質問あるんだけど、どうしてそんな家系の人間がこんな流行っていない神社の巫女をやっているの?」
巫女は、思い出しながら答え始める。
「確か、あたしのお婆ちゃんが、八刃の偉い人に喧嘩を売って、その後、色々あって、あたしのお母さんとこの神社に入れられて管理される事になったって聞いています」
それを聞いて走が首を傾げる。
「何か、どっかで聞いた覚えが……」
貫がため息混じりに告げる。
「ヤヤさんの武勇伝の一つにそんなのがあった気がする」
瓜がひきつった笑顔で確認する。
「もしかして、貴女の名字って八神じゃない?」
巫女が驚く。
「どうして判ったんですか? はい、八神美代って言います」
眉を寄せる貫達であった。
「八神なんて、懐かしい名前が出てきたな」
ぬいぐるみショップシロキバに戻った貫達が質問すると良美が懐かしむ。
「やっぱり、あの武勇伝に出てくる八神なんですね?」
良美が頷く。
「そうだぞ。しかし、何で金銭的に困っているんだ? ヤヤ、援助してないのか?」
ヤヤが頬を掻きながら答える。
「えーと、美代さんの祖母は、純粋な神降ろしの人間で一般常識が無くってね。一般人として暮らしていた娘さんがその非常識さに怒って、八刃からの援助を全部遮断して、自分達が降ろす神の神社を使って生計を立て様としてたんだけどね」
思い出した様に良美が言う。
「思い出した、流行っていないからって、あの人が一発逆転って馬鹿高いお守りを大量生産して、これっぽっちも売れなかったんだよな。確かこれこれ」
良美が、極上の絹で作られ、一流書道家の字が描かれたお守りを見せてくる。
瓜が手に取りあきれる。
「これって一万じゃきかないですよね?」
ヤヤが沈痛な表情で指を三本あげる。
びっくりした顔をする走。
「三万もするんですか!」
ヤヤが頷くと貫が納得する。
「それは、売れないわけだ」
「一応、借金は、私が買い取ったんだけど、何としても返すって、美代ちゃんがファイアーバトルに参加する事になったのよ」
ヤヤの説明に瓜がしみじみという。
「商売下手が家族に居ると大変なんですよね」
多額の借金を作りまくった祖父を持つ瓜の言葉には、強い説得力があった。
「一日も早く借金を返せるのを祈ろう」
貫の言葉にヤヤが一つのファイルを取り出す。
「次の貴女の対戦相手ね、その八神美代ちゃんなの」
「うそー!」
驚く貫であった。
美代が住んでる神社の境内に深夜に関わらず、少女達が集まっていた。
「よろしくお願いします」
頭を下げる美代にやり辛そうな顔をする貫。
「負けたら拙いんだよね?」
瓜が無言で頷く。
ため息混じりに戦いの準備をする貫。
「それでは、行きます!」
美代がその身に神を降ろす。
「どうするかな?」
油断しまくりの貫の視界から美代が消えた。
目を見張る貫が吹き飛び、木にぶつかる。
せき込みながら呟く貫。
「神速の攻撃、油断した」
気を張りなおす中、美代の右手が貫に向けられる。
本能のままに右手の『貫』と刻まれた親指の爪と左手の金色の中指の爪、緑色の薬指の爪、黒色の小指の爪を擦り合わせる。
『金よ、木よ、闇よ、強固な盾と化せ、ダークメタルネットシールド』
貫が自分の持つ最強の防御を作るが、美代の手から放たれたそれは、盾など無い様に貫のプラチナの簪が穴を穿つ。
顔が引きつる貫。
「うわー、森が!」
美代が泣きそうな顔をしているので、いや予感がする中、貫が振り返ると、美代の手の形完璧にコピーした穴が、森にくっきり生み出されていた。
「洒落にならん!」
貫が叫び、手加減抜きモードに移行する。
右手の『貫』と刻まれた親指の爪と左手の白の親指の爪を擦り合わせる。
『光の矢を射よ、ライトアロー』
まさに光速の矢が、森を傷つけてしまって動揺する美代に迫る。
しかし、あっさりはじかれる。
貫は、言葉に詰まる中、見学していた走が思わず尋ねる。
「美代さん、今のって防ごうって考えた?」
「何の事ですか?」
気付いてさえ居なかった美代。
「どうしろって言うのよ!」
冷や汗を垂らす貫。
瓜が頬を掻きながら言う。
「まあ、本当の神降ろしされたら、八刃の力も殆ど無効化されてもおかしくないか」
「そんな! それじゃ、勝てないって事?」
戸惑う走に瓜が、真剣な顔で告げる。
「そうじゃない。八刃の技は、元々そんな奴らに戦うために生まれた物だよ」
貫が深呼吸をして、気を取り直す。
「そうだよね。一発、かましますか!」
右手の『貫』と刻まれた親指の爪と左手の白の親指の爪を数度、擦り合わせる。
『光の矢を降り注がん、ライトアローレイン』
無数の光の矢が美代に降り注ぐ。
「嫌!」
美代の力が光の矢を防ぐ為に放たれる。
そして、光の矢を防ぎ終えた時、美代の視界から貫が消えていた。
「あれ、貫さんは、何処に行ったの?」
左右を見た時、足元が崩れて、落下し、そのまま頭を地面にぶつける美代であった。
「なんとか一発いれたみたいだね」
走が嬉しそうに言い、瓜は、頷きながらも緊張した様子で呟く。
「美代に普通に影響していた重力を使った絡め手、上手いけど、同じ手は、何度も通じないよ」
そんな中、地面をシュートネイルで掘り進んで美代の下まで来ていた貫が、やりきれない表情で美代を抱きあげて穴から出てくる。
「もしかして、気絶してる?」
瓜の言葉に盛り上がった不完全燃焼の貫が叫ぶ。
「何であちきの術で傷一つ負わないのに、地面に頭をぶつけただけで気絶するのよ!」
やるせない貫の気分を他所に勝負は、貫の勝利で終わった。
翌日の神社。
「次は、勝てるように頑張ります!」
拳を握りしめて誓う美代。
「頑張ってね」
素直に応援する走。
「普通にやれば勝てると思う」
正直の感想を告げる瓜。
「負けたら、苦戦したあちきの立場が無いから、絶対に勝ってね!」
半ば脅迫する貫の言葉に、涙目になる美代であった。




