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承認欲求の防波堤



王都の城門の前で、一行はデッドロック停滞に陥っていた。


「ヘッへー! 俺のこの上腕二頭筋が見えねえのか! 誰も通さねえぜ! おい、もっと見ろ! 褒めろ! 浮き出た血管が芸術的だろ!?グラッチェグラッチェええ!!」


アルヴィス「だ、だめだ。話が通じない。魔王討伐の件を言っても、自分の大胸筋の話に強制置換変換される!(号泣)」


佐藤ウルグアイ「あー、筋肉?筋肉バカ。脳みそまで、ささみ。ささみで、出来てるねうん。もうボリビア!! 俺、いま、ボリビア。いや、いやいや?


ここはどこ?ん?「ボリンビア?」ボリンビア高地。空気が、薄いよ、てかどこソレねぇ!!」


 ヘッペは面倒くさそうに耳の靴下を防音モードミュートから対話モードアクティブに切り替え、門番に歩み寄った。


「ふむ。いいか? 門番よ。貴様、ここの門番になって何年だ? ん?…ほう、見事な立ち姿だ。機能的な骨格をしているな」


 その瞬間、門番のスイッチが臨界点を突破した。


「ッギョッへー!? 分かるか!? 分かるのかよネーチャン!! そうなんだよ! 最近のスーパーオザムの値上がりにも負けず! 燃料費高騰で風呂を控えてもこのツヤ! なのに王族の野郎ときたら『門の油が切れてるぞ』だぁ!? 自分の頭の油でも塗っとけってんだ! 同僚のジャックなんて昨日、詰所でこっそりプロテインを……!!」



 止まらない出力。門番は筋肉を誇示しながら、機密情報を平文で垂れ流し始めた。その演算処理に門番が全リソースを割いている隙に、ヘッペは半開きになった通用口を指差した。


アルヴィス「えっ、良いのかな? ねえ、ヤバく無いですか? 不法侵入不正アクセスですよこれ!」


佐藤(ボリビア?)「バカ、うん、筋肉バカ。脳みそが、筋肉。多分、身体の中で、一番美味しいの、脳みそ的な?ウツボそうそうウツボ的な 珍味。珍味だよ、ねぇ!!」


ヘッペ「ご苦労なこって。そのまま、永遠に虚空に語り続けていろ」



ようやく城内へ向かう3人。

果たして…



———


謁見の間。そこには、左右非対称な栗色の髪型を弄りながら、あくびを噛み殺すレオニウス卿がいた。


レオ「あぁー、おせーじゃーん。もう出ちゃったよ、討伐隊ぃ。行っちゃった。だから君たち、もう要らない。用済み。帰ってー? ういーっした!」


アルヴィス

「そんな! ですが魔王は、わたくしの聖剣でなければ傷一つ付けることも――」


レオ

「えー?知らない〜!うーざーいー! 知らないー、だるいもー、帰ってー? 僕はね、これから『プリズン・ブレイク』観ちゃうんだからー。もう一気見!

一気見ってやつ?へへw


……っていうかさぁ。なんか君たち、臭くない? なんか匂う。やだーもう、臭いしー。はいはい、衛兵さーん! この人たち、つまみ出しちゃってー!ういーっした!うぃした!」


 問答無用で引きずり出される一行。城門まで戻されると、そこにはまだ、虚空に向かって熱弁を振るう例の門番がいた。


門番「……だからあの時言ったんだよ! 俺が悪いのかぁ!? それをジャックの野郎ときたら、他人のプロテインを勝手に……ッ!」



ヘッペ「あやつ…まだ喋るか…」


 独り言の永久機関と化した筋肉を尻目に、三人は噴水広場まで後退を余儀なくされた。


アルヴィス「ひ、ひぃいいいいん! 追い返されたぁ! ですが……あの魔王はわたくしの持つこの聖剣でなければ、傷一つ付けることもできませぬが! レオニウス卿は何も分かっておられない!そういう設定なのにぃ(号泣)」


佐藤ボリビア「あー、あの変な髪型。なんとかならないのかね? もうなんか、栗。喋る栗、うん。マロン的な? 何も知らない、バカね。うん。俺、いま、ボリビア。標高高い。栗、茹でるの、時間かかる的な?うん。」


ヘッペ「ふん。いいか? アルヴィス。無知バグは、現実システムに殴られるまで治らん。……。……お、見ろ。伝令が走ったぞ」


 その時。一人の伝令が、血相を変えて城内へと駆け込んでいった。


【城内・謁見の間】

伝令「レ、レオニウス様! ほ、報告です! 先遣の討伐隊、全滅しました! 攻撃が一切通りません!!」


レオ「えー、もー、なーにやってんのー。強そうなヤツ、いっぱい行ったじゃーん。ねー、誰かー。


……これ、一気見できない感じー?もースコフィールド終わっちゃうー!マジでーだりーなぁ。」


そして魔王軍の追撃が街に手を伸ばし始め、

街外れでは略奪や破壊が既に始まっていたのである。




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