デッドロック インザ ルーム
「……ふむ。いいか? 二人とも。私はまだ、お湯を沸かしていない」
弱々しい火が、アルミ鍋を舐める。数分後、ヘッペは慣れた手つきで『カップ鍋焼きうどん』にお湯を注ぎ、一人で啜り始めた。
「……あー、。……え? ……いま。……いま、。……一人。……一人で。……食った? ……あー、。……ズルい。……ズルいよ、。……賢者様。……。……あー、。……しかも。……焼いてない。……。……焼かない。……。……お湯、。……入れただけ。……。……あー、。……もう。……ベネズエラ! ……俺、。……いま。……ベネズエラ、。……だよ!! ……ねぇ!!」
「鍋焼きうどんと謳いながらも、焼くという行為を一切せずに焼きうどんと言い切る潔さ。これが美味さを増幅させているのだよ。…はむはむ。」
佐藤が絶叫バーストする中、一口味見をさせてもらったアルヴィスは、畳に突っ伏して号泣していた。
「……っ、……う、うわああああああん! ……美味しい、……美味しすぎます大賢者様ぁああん!!」
「…ふぅ」
ヘッペは空のカップを置き、二人をじっと見つめた。
「……で?」
「……えっ? ……あー、。……え?」
「……えっ? ……大賢者、様……?」
「……だから、。……『で?』……と言っている」
「……いやあの、。……w……えっ?」
「……えっ?」
そのデッドロック沈黙を切り裂いたのは、壁を走る一筋の黒い影だった。
「カサカサっ!!」
「……ッ!? ……キャァッ! ……いやっ、……来ないでっ!!」
ヘッペがアルミ鍋を盾に、部屋の隅へ飛び退く。その声は、どう聞いても可憐な少女メスボイスのものだった。
「……あー、。……え? ……いま。んー空耳かなぁ。……あー、。……女子。 女子いたよね?……。……いまの。……『キャァ』。……。……女子。……だった、。……ねぇ!!」
アルヴィス「……なるほど!大賢者様は、……女性だったのか……!?」
佐藤「……とあーーーーーーーい!!
……あー、。……。……あー、。……女子。……女子が、。……耳に。……靴下。いい!!」
異世界の運命は、Gの飛来と、賢者の正体発覚によって、さらなる混沌カオスへと突き落とされた。
震えながら壁際に追い詰められたヘッペ。その薄いスウェットの胸元が、激しい呼吸で上下する。
「……あー、。……え? 。……揺れ……あー、。……揺れ。……。……揺れ。おそらくは震度D弱… …確信。…いま。……ノーブラ。……ノーブラ」
佐藤が、鼻血を堪えながら叫ぶ。
だがヘッペは、Gが視界から消えると同時に、瞬時に賢者モード通常処理へと復帰した。
耳の靴下を最大感度で整え直し、冷淡な眼差しで佐藤を射抜く。
「……ふん。いいか? 佐藤よ。ブラジャーなどという不要なミドルウェアは、思考の柔軟性を奪うだけのノイズゴミデータだ。磨け。その執着にまみれた視覚回路「スケベ心」を。……いいか? 胸があるかないかは問題ではない。揺れない静止という名の安定セキュリティが重要なのだ」
アルヴィス
「……な、なるほど……! 物理的束縛下着を捨て、常に自然体デフォルトで世界と繋がっておられるのですね……!!(号泣)」
佐藤(仮)
「……あー、。……え? ……いま勇者。いい話。…いい話にまとめたねぇ!! …あー無理だわ。ノーブラ賢者。もうそれ賢いブラ。うん。でもでも?ん…ブラ着けないのにwww
靴下はいちゃうw……あー、。……もう。ブラ……ブラ………ブラジル!! ……俺いまベネズエラ、からブラジルに入国!」
ヘッペは、耳の靴下を耐震補強しながら、冷淡に告げた。
「……ふん。いいか? 佐藤よ。揺れ震動はエネルギーの分散ロスだ。私が「サラシ免震構造」を施している以上、このエイプリル・コーポ聖域に震度D弱の衝撃被害は発生せん。磨け。その妄想の「震央エロ脳」を」
佐藤はあまりの衝撃に佐藤になり…勇者は何故か泣いている。
ヘッペは彼らを見下す様に腕を組み
「…なんか、面倒なことになりそうだな…」
と草原を眺めていた。




