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第15話 再会(6)

扉が、静かに叩かれる。


エリオスは顔を上げた。


「どうぞ」


返した声は、

いつもと同じ温度だった。


面接室には、

エリオスを始め

副会長・顧問・役員数名。


志願者は多い。

誰もが入りたがる場所だ。


その最後の枠。


扉が開く。


入ってきたのは、

灰色の髪の少女だった。


――その瞬間。


ガタッ。


椅子が鳴る。


立ち上がっていた。


自分でも、

なぜ立ったのか分からない。


考えるより先に、

身体が動いていた。


視線が合う。


淡い瞳。


吸い込まれる。


頭が、

真っ白になる。


何も浮かばない。


ここがどこかも、

誰がいるかも、

一瞬、全部落ちる。


目の前の姿だけが残る。


心臓が、

遅れて跳ねる。


強く。


触れたい。


触れたい。


名前を呼びたい。


抱きしめて、


確かめたい。


……何を?


分からない。


ただ、

今すぐにでも。


衝動だけが、

胸の奥から溢れてくる。


――会長。


声が落ちる。


届かない。


触れたい。


名前を呼びたい。


抱き寄せて、

この胸に閉じ込めたい。


……彼女を?



――会長?


二度目の声で、

ようやく世界が戻る。


「ああ……」


一拍遅れて、

エリオスは

ゆっくりと椅子に戻った。


少女が静かに一礼する。


「リリアナ・クラリス・バルディエと申します」


――リリアナ。


その名前が落ちた瞬間。


胸の奥の、

幼い頃から空洞だったところに


水が落ちるみたいに、


何かが満ちた。


説明はつかない。


理解もできない。


ただ、

そこにあった。


「……よろしく」


声がわずかに遅れる。


右手を差し出す。


考えていない。


気づけば、

そうしていた。


リリアナが

同じ高さで手を重ねる。


冷たい。


指先が触れる。


――離したくない。


一瞬。


そう思う。


もっと握っていたい。


理由もなく。


意味もなく。


すぐに離す。


……何をしている。


面接が始まる。


質問。


返答。


声は聞こえている。


理解もしている。


だが。


何も入ってこない。


視界の端に

灰色の髪が入るたび


思考が止まる。


触れたい衝動だけが残る。


――やめろ。


内側で理性が落ちる。


初対面だ。


令嬢だ。


面接だ。


何を考えている。


「……次の質問に移る」


声だけは整える。


だが、


喉の奥に残っている。


名前だけが。


――リリアナ。


そっと、

心の中でだけ


もう一度呼んだ。

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