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第12話 協働(1)ノア

気づけば、

図書館に足を運ぶ回数が増えていた。


目的ははっきりしている。

アストレア王国――とりわけ王宮の歴史だ。


その記録を、改めて確かめる必要があった。


視線が、

いつものように書架の奥へ向く。


灰色の髪があるはずの場所。


――いない。


そのまま、

何事もなかったように本へ視線を戻す。


別の日。


また同じ場所へ足が向く。


やはり、いない。


そんな日が、何日か続いた。


図書館に来る間隔は、

もともと一定ではない。


毎日通う場所でもないし、

来ない日が続くこともある。


それだけのことだ。


本を開く。

ページをめくる。


視線は文字を追っているのに、

集中がわずかに浅い。


小さく息を吐き、

手元の本を閉じる。


机に積まれていた年代記の束から、

一つ前の巻を引き寄せる。


歴代の記録を、

さらに遡る。


王の代替わりの時期。


表に出るほどではないが、

並べてみると、

わずかに早い。


病や事故。


歴史の中では、

誰も気に留めない程度の差。


だが、

気づいてしまうと、

そのままにしておくのが落ち着かなかった。


――エリオスの顔が、

一瞬だけ浮かぶ。


そのまま、

書架のさらに奥へ進む。


一般区の奥。


立ち入りを制限された扉。


《特別資料閲覧室》


王立図書館の中でも、

さらに奥に設けられた場所。


古い記録、

専門資料、

王家に関わる史料。


許可のある者しか入れない。


今日は、

別の用があった。


閲覧室にしか残っていない資料を、

遡って確かめる必要があった。


扉を開ける。


空気が変わる。


紙の匂いが、

わずかに重い。


足を踏み入れた瞬間、

視界の奥に、

見覚えのある色があった。


灰色の髪。


書架の前。


背を向けて、

資料をめくっている。


一瞬、

思考が止まる。


――ここにいたのか。

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