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第3章:星の輝き、そして新たな道へ

 予感は的中した。ある日、里の長老たちがルナの前に集まり、彼女と隣国の王子との秘密の関係が明らかになったことを告げた。彼らの表情は怒りと悲しみ、そして深い失望に満ちていた。ルナの胸に、その視線が重く突き刺さる。同時期に、カイもまた、国王から直接、ルナとの関係について問い詰められていた。王宮の一室で響く国王の激しい声が、カイの心を締め付ける。


「我が国の未来のため、その娘との関係を断ち切れ! 星詠みの一族など、所詮は迷信を語る山猿ども。奴らとの関わりは、この国の恥となる!」


 国王の言葉は、ルナへの侮辱だけでなく、星詠みの一族全体を貶めるものだった。そして、両国間の緊張は一気に高まった。元々くすぶっていた領土問題や資源の争いが表面化し、互いに軍を動かし始める。戦争の危機が、現実のものとして迫っていた。ルナとカイは、自分たちの恋が引き起こした事態に責任を感じ、激しく苦悩した。


 ルナは星見の塔にこもり、ひたすら星を読んだ。悲劇的な未来を回避する方法はないのか。古の預言に、本当に救いはないのか。何日も眠らずに星を見つめ続けたルナの目に、一つの光が差し込んだ。それは、水晶板の奥に輝く、遠い星々の間に隠された、微かな光の筋だった。


「分かつ」……。その言葉は、本当に「破滅」を意味するのだろうか?


 ルナは、里に伝わる最も古い預言の巻物を広げた。そこには、これまで里に伝えられてきた預言の最後に、記されていなかったはずの、もう一節が隠されていたのだ。


「星は引き裂かれ、世界は分かつだろう。しかし、それは終わりではなく、新たな始まりの光。二つの異なる星が、一つとなりて、世界を繋ぐ礎となるだろう」


 預言は、破滅を告げていたのではなく、二人の愛が既存の対立を打ち破り、新たな時代を切り開くという、希望に満ちた意味が隠されていたのだ!同時に、この預言を故意に歪曲し、両国の対立を煽っていた人物の存在が、星の光によってルナの目に映し出された。それは、隣国の王宮に潜む、カイの叔父である宰相だった。彼は、国王の座を狙い、両国を戦わせて混乱に乗じようと画策していたのだ。


 真実を知ったルナは、カイにこのことを伝えなければならないと強く思った。同じ頃、カイもまた、王宮内の不穏な動きから、叔父の陰謀に気づき始めていた。彼は、ルナの星詠みの力を信じ、彼女が告げる真実が、世界を変える鍵となることを直感していた。


 ルナは命がけで里を抜け出し、カイは王宮の監視を掻い潜り、二人は再びあの国境の森で再会した。月明かりの下、ルナはカイに、預言の真の解釈と、叔父の陰謀を告げた。カイはルナの言葉に一切の疑いを持たず、深く頷いた。彼の瞳には、これまでの冷徹さではなく、決意と、ルナへの揺るぎない信頼が宿っていた。


「君と共に、この運命に立ち向かう」


 二人は、それぞれの立場で行動を開始した。ルナは、星詠みの一族の長老たちに預言の真実を訴え、彼らの協力を仰いだ。最初は信じようとしなかった長老たちも、ルナの熱意と、彼女が示す星の証拠に、次第に心を動かされていく。彼らは、ルナの覚悟と、彼女が読み解いた希望の光に、里の未来を託すことを決めた。


 カイは、王宮内の信頼できる者たちと連携し、叔父の不正を暴き、その陰謀を阻止するための計画を進めた。彼のカリスマと、国を思う強い心が、王宮に仕える兵士や官僚、そして民衆の心を動かしていった。彼は、これまでの冷徹な王子ではなく、真に国を憂う若き指導者として、その真価を発揮した。


 そして、ついにその時が来た。両国が全面衝突寸前まで高まっていたその日、ルナは星見の塔から、カイは王宮の広場から、それぞれに人々に語りかけた。


 星見の塔に登ったルナは、全身の魔力を集中させ、天空に巨大な光の渦を呼び起こした。それは、古の預言の真実と、対立を煽る宰相の邪悪な意図を、天に映し出す星の絵巻だった。人々の頭上に輝く光の絵巻は、宰相が仕組んだ計略の全貌を、誰の目にも明らかにした。


 同じ頃、カイは王宮の広場で、集まった兵士と民衆に向けて力強く演説していた。


「我々は欺かれていた!真の敵は外にはない!この国を内側から食い破ろうとする者に、我々は立ち向かわねばならない!」


 ルナが示した星の絵巻と、カイの真摯な言葉が、混乱していた人々の心を一つにした。宰相は狼狽し、抵抗しようとしたが、すでに多くの兵士たちがカイの味方についていた。裏切り者の宰相は捕らえられ、両国の兵士たちは武器を下ろした。


 困難を乗り越え、二人の努力が実を結んだ。両国間に新たな関係が築かれ、和平が成立したのだ。それは、単なる停戦ではない。互いの文化を尊重し、助け合い、共に未来を築く、真の和平だった。国境に引かれていた線は、もはや分断の象徴ではなく、交流の架け橋となった。


 ルナは、星詠みの一族の次期長として、両国の平和の象徴となった。彼女の預言は、世界の危機を救い、新たな時代を拓く光として、人々に崇められた。カイは、未来の国王として、そして和平の立役者として、民衆から尊敬を集めた。彼の治世は、賢明で平和なものになるだろうと、誰もが信じて疑わなかった。


 二人は、もはや秘密の逢瀬を重ねる必要はなかった。公式の場でも、彼らは互いを尊重し、隣に立つ。それは、恋人としての甘い関係だけでなく、互いの国を支え、新たな時代を築くための、かけがえのないパートナーシップだった。


 ある夜、二人は再び、あの国境の森の奥で会っていた。満点の星空が、二人を祝福するように輝いている。


「星は、本当に私たちを導いてくれたね」


 ルナが静かに呟くと、カイは彼女の手を取り、その掌をそっと包み込んだ。


「ああ。そして、私たちの愛が、星の光のように、これからもこの世界を照らすだろう」


 二人の瞳に映る星の輝きは、以前よりもずっと明るく、希望に満ちていた。それは、預言に縛られることなく、自らの手で運命を切り開き、世界を新たな未来へと導いた、二人の愛の証だった。そして、この星の輝きが、永遠にこの世界を見守り続けるだろう。

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