表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/16

第8章:秘密のお茶会と静かな取引

【1】


「ぱんちゃんってさぁ、どうしてそんなに“みんなに好かれる”の?」


屋上。放課後。風の音だけが響く場所で、そらんは一人の少女と対峙していた。


──ぱん。


制服のボタンは一個外し、ほんわか笑顔。今日も周囲の男子たちから「癒される〜」と評判だった。


ぱんはにこにこ笑って、そらんの問いに答える。


「うーん……“好かれたい”って思ったこと、ないの。

でも、“嫌われたくない”って思ったら、いつのまにか“好きになってもらってた”んだよね♪」


そらんは少しだけ笑った。


「ふーん……なんか、ずるい」


「ずるい……って言われたの、久しぶりかも」


ぱんの目が、一瞬だけ揺れた。

でもすぐに、いつもの優しい声に戻る。


「そらんちゃんも、ずるいよ?

“りおんちゃん”の中に隠れてたのに、今は主役みたいな顔してる」


「……やだ、バレてる♡」


【2】


ぱんとそらん。

“ふわふわ”דふわふわ”の会話は、異様に静かだった。


だが、内容は静かに火を灯す。


「ねぇ、ぱんちゃん。ふーくんに……あんまり近づかないでくれる?」


「そらんちゃんこそ、あんまり“物を消さないで”くれる?」


ぱんはにっこり笑いながら、伊勢丹の紙袋をそらんに差し出す。


「これ、例の写真。キャットくんのやつ。

消したくなったら、勝手にどうぞ。でも、もし私が困ることになったら……そらんちゃん、消されちゃうかもよ?」


そらんは数秒間無言だった。


そのあと、少女の声でコロコロと笑った。


「ほんと、ぱんちゃんって……最高にかわいくて、最悪な子♡」


ぱんも笑う。


「そらんちゃんもね♡」


【3】


一方、校舎裏。Aちゃんとねるちゃんが並んで自販機の前にいた。


「……ねるちゃんって、そらんと親友なんだよね」


「ん、そう。昔から」


ねるちゃんは肩の力が抜けたような笑顔で微笑んだ。


「でも、そらんは“誰かを守る時”しか出てこない。自分のために怒らない。

だから、もし誰かを攻撃してるなら……それは、そらんが“本気で怒ってる”ってことなんだよ」


Aちゃんはその言葉を胸に刻んだ。


「ねるちゃん……私はね、今でもりおんが大好き。

でも、それと同じくらい、そらんのこともちゃんと知りたいんだ」


ねるちゃんは何も言わず、肩をぽん、と叩いた。


……Aちゃんの肩が外れた……。


【4】


その夜、校門前に置き去りにされた封筒。


中には、髭もぐら先輩の30年前の生徒証と、キャットの動画の一部。


差出人の名前は書かれていない。だが、裏面にだけ文字があった。


「これが“お茶会”のルール。次は誰の番?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ