第6章:消えた声と満月の告白
【1】
翌朝、学校はざわついていた。
「……キャットが、いないって」
ホームルーム前、ガバチョがぽつりと呟いた。
やはり声は誰にも届いていない……。
「いつも“仮面キャラ”やってんのに、ガチで姿消すとはな……」
「やめてよ。今、冗談きかないから」と、あめめが睨む。珍しく声が震えていた。
ふー太郎の心臓がざわつく。キャットは昨夜、第三理科室で確かに“そらん”の名前を口にした。
まさか──それが原因で、何かが起きた?
まさかね……
【2】
午後、生徒会から全校放送が入った。
「キャットくんは体調不良により、しばらく登校を控えるとのことです。問題はありません。風紀は乱れていません」
生徒会長の無機質な声が流れると同時に、教室内の空気はさらに冷えた。
「“問題はありません”って言えば言うほど、問題あるやつじゃん」とぶるべるがボソリ。
「そういうのって、大体最初に消える奴が情報持ってんだよなぁ……」とトマ。
「次、誰が消されるんだろうね」とさくらが真顔で言い、全員が固まる。
「……やめて、そのテンションで言わないで……」とうかんむりが涙目になっていた。
【3】
放課後、ふー太郎は1年の廊下である人物を探していた。
「……いた。うかんむり」
「ふーくん?」
「お願い、ちょっとだけ時間、いい?」
ふー太郎はうかんむりを図書室の隅に連れていった。誰も来ない、古い洋書棚の裏側。人気のない空間。2人きりだ。
「そらんって……知ってる?」
「……りおんちゃん、昨日とは別人だった」
うかんむりは静かに目を伏せた。
「目が……優しくない。あれは、りおんちゃんじゃない。別の、誰かだった」
やはり、気づいていたのか。
「ふー太郎くん……そらんって、りおんちゃんを守ってるの? それとも、壊しにきてるの?」
その問いに、ふー太郎は答えられなかった。
【4】
その夜、ふー太郎のスマホに再び通知が届く。
──送信者:そらん
メッセージ:「満月の夜、真実が見えるよ。だから“彼”は消えたの」
添付されたのは、一枚の写真。
そこには、キャットの姿が写っていた。
ただし──背景は、学校ではなかった。見たことのない、古びた地下室のような場所。
ふー太郎の手が震える。
このまま何もしなければ、次は──自分か、それとも。
写真の片隅、手書きの文字が映っていた。
「Pから始まる人、次、気をつけてね♡」
P?ぱん?ぽんぽこ?それとも──。