表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
左遷の錬金術師の解決薬  作者: 氷純
第二章 雪町キノル

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

64/89

第二十六話 漂白

 ボグス族の集落を出発したセラたちは道中雪に降られながらも旅程通りにキノルに帰り着いた。

 キノル冒険者ギルドに帰還の報告をすると、我慢できなくなったさび猫イルルが一直線にセラの研究室へ駆けていく。

 ずっと猫姿で過ごしていたイルルはいい加減に人の姿に戻りたかったのだろう。一応、ボグス族の集落ではセラが見張りに立ってお湯で体を拭くくらいはできていたが、流石にお風呂に入りたいらしい。


 セラも少しのんびりしたいところだったが、そうも言っていられなかった。

 セラたちの帰還を聞いたのか、キノル冒険者ギルド長マルドクがギルドホールに出てくる。


「セラさん、お帰りなさい。早速で悪いんだが、ちょっと一緒に来てくれ。アウリオも」

「こちらからも報告がありますが」

「道中、聞かせてもらう。ハーニアが外に馬車を回してくれている」


 マルドクは足を止めずにホールを突っ切り、建物の外へ出る。ちょうど箱馬車が通りに停まった。

 セラはマルドクに続いて外に出て、御者台を見る。セラと歳の変わらない金髪の女性が手綱を握っていた。彼女がハーニアだろう。


 雪像のように無表情なハーニアはセラと目が合うと小さく頷く。同じく無表情気質なセラはハーニアの雰囲気で笑ったのが読み取れた。

 おそらくハーニアもセラが笑ったことに気付いたのだろう。

 無表情のまま頷き合って交流するセラとハーニアに、アウリオとマルドクが顔を見合わせる。


「なにか通じ合うものがあるっぽい?」

「キノル冒険者ギルドの雪の女王の真意がわかるとは。セラさんはやはり只者じゃないな」


 マルドクとアウリオが馬車に乗り込み、セラも続く。御者台に乗ってハーニアと話してみたい気もしたが、マルドクへの報告があるのでまたの機会にしよう。

 馬車が動き出し、マルドクは大柄な体でやや窮屈そうに身じろぎして話し出した。


「これから、美白美容液を密売していた連中の幹部との面会に行く。セラさん、あの美白美容液は本当に効果がないんだな?」

「検査結果では効果を認められる成分は検出できませんでした。何か新しくわかったことがあるんですか?」

「美白美容液の購入者から実際に肌が白くなったとの報告が上がっている。肌の染みが消えたそうだ。これは家族からの証言も得られているし、私も実際に見た」


 ボグス族の集落に行っている間に事態が悪い方向に進んだらしい。

 美白美容液の密売人を捕えたのは、詐欺商品の販売という罪状があったからだ。それが詐欺ではなく実際に美白効果があったのなら話が変わってくる。

 ただ、セラはすぐに核心を突いた質問をした。


「肌の染みが消えたんですか? 色素が抜けて真っ白になったのではなく?」

「よくわかったね。その通り、シミのあった部分というより美白美容液を塗り続けていた肌の一部分が白くなっていた。本来の肌の色より明らかに白く、蝋でも塗っているのかと疑うほどだ。あれは美白じゃなく漂白だ」


 ヤニクで見たパラジアの中にも体の一部が白くなっている個体がいたことを思い出す。

 アウリオが口を挟んだ。


「ボグス族の集落近くにある水源地、龍伐の湖に白化したトレントの群れがいて、これを全滅させてきたんだ。キノルの周辺で白化した不審な魔物はいないか?」

「なるほど、それでわかったのか」


 マルドクは頭痛をこらえるようにこめかみを押さえつつ説明する。


「密売人に事情聴取をしたところ、身体が白化したスライムを発見したそうだ」

「スライム? あれほぼ透明だろ」

「キノル周辺では冬になると全身が灰色の特殊なスライムが出没するんだ。夏の間は粘土層で休眠し、冬になると活動を始める。普通のスライムはこのあたりの冬の気候に耐えきれずに凍ってしまうが、灰色スライムは粘土を取り込んでいて凍り付かない」


 キノル周辺の環境に適応した灰色スライムは雪の中に潜んで通りがかった獲物に襲い掛かるという。

 その灰色スライムの体が白い個体を見つけて討伐した密売人は、スライムから飛び散った液体を浴びた肌が白くなっていることに気が付いた。

 麻薬のクレバスハニーが冒険者ギルドに目を着けられたことに気付いていた密売人は商売転換を思いつく。


「灰色スライムが休眠する粘土質の土地周辺を探し回って、白化スライムを捕獲、その体液に粘性を加えるためのハチミツを混ぜ込んで販売していたらしい。ゆくゆくは王国全土に売り出すつもりだったと壮大な悪夢を語ってくれたよ」


 実際によその町への輸出も確認され、現在は回収するように通達が出回っているという。

 ただ、問題なのはセラの検査では水とハチミツの混合物と判定されたこと。回収するとしても見分けがつかない。


 加えて、実際に白化する効果が確認された以上、検査に引っかからない未知の物質が入っていることになる。この物質を特定する必要も出てきた。

 なぜなら、ヤニク、キノル、龍伐の湖と相次いで白化する魔物が現れているのだから。


「いまは魔物にしか影響が出ていないが、今回の美白美容液で人間にも影響が出ると分かった。早急な対処が求められる」


 マルドクは盛大な溜息をついて、セラを見た。


「密売人と話をして物質の正体を突き止めてほしい」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
密売人は製造者じゃなくて、白化魔物の体液流してただけなのか……
少なくとも、感染性が疑われる。 成分分析も、熱や冷凍による加工もしてないだろうし。 白癬菌クラスだと大惨事。
実際に白くなるから嘘は言ってないし有害な成分は検出されないなら罪には問えないな? セーフゥ!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ