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左遷の錬金術師の解決薬  作者: 氷純
第一章 港町ヤニク

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第二十六話 王立騎士団

 王立騎士団、ヤニクに到着。その一報に冒険者ギルドは騒然となった。

 元々国と仲が悪い冒険者ギルドだけあって、自分たちの縄張りに王立騎士団が突然入り込んできたように感じたのだ。

 加えて、せっかく密漁者の摘発に乗り出そうというこの時に王立騎士団がやってきたことで密漁組織は逃げ出してしまう恐れもあった。


 ギルド長コフィは迅速に冒険者をまとめ上げて摘発隊を組織しようとしたが、それが王立騎士団を刺激した。

 反乱疑惑アリと見て内偵までしていた冒険者ギルドが戦力を集中し、王立騎士団の到着と同時にギルドに集結させて組織化しようとしている。

 王立騎士団からすればもう真っ黒判定だ。


 というわけで、冒険者ギルドの前で一触即発状態の冒険者と王立騎士団を研究室の窓から見下ろして、セラはため息をついた。

 不幸中の幸いだったのは、両者のトップが比較的冷静だったことだ。


 ギルド長コフィから見れば密漁組織の摘発で戦力が出払う間のヤニクの守りを気にしていたが、王立騎士団がいるなら解決する。

 王立騎士団もギルド前に到着した時点でどうやら予想とは違う状況だと察したらしい。

 集まっている冒険者の装備が明らかに対人戦を想定しているものの、捕縛を目的とした装備が多いのが理由だ。

 密漁組織の取り締まりはあくまでもコロ海藻不足の原因を取り除くため。ならば、密漁者を捕縛して情報を得る必要があるため、基本的には生け捕りが求められている。


 ただ、もともと仲が悪い組織同士なので「勘違いでした、ごめんなさい」と頭を下げるのも難しい。沽券にかかわるというやつだ。

 政治には疎いセラにもそれくらいは察しが付く。

 睨みあう両者だったが、ひとまず中立的な立場の人間が間に入らないと話し合いどころではないと気付いたのだろう。

 コフィが二階にあるセラの研究室を見上げて声をかけてきた。


「セラさん、来てくれるか? どうにも行き違いがあるようなんだ」


 やっぱり声を掛けられるのかと想像通りの展開にセラは窓辺からコフィを見下ろして頷いた。

 冒険者を背後に従えたコフィの前で、王立騎士団がわずかにざわめく。

 この状況で仲裁に入れる人物の想像が付かなかったのだろう。

 セラは窓を閉めて室内を振り返った。


「そういうことなので、アウリオさん、護衛をお願いできますか?」

「もちろん。というか、冒険者と騎士団のごたごたに巻き込んでおいて、一冒険者としては申し訳ない限りだ。護衛くらいさせてくれ」

「お願いします。私、王立騎士団からの評判が悪いので」

「……待って、左遷の理由が増えてない?」

「直接的な理由ではないと思うんですけどね。あの件で悪いのは私ではなくて、もっと上の人たちですし。私は止めましたもん」

「もん、て……」


 戸惑いがちについてくるアウリオと共に研究室を出て、セラは実体魔力のポーションを飲み干しながら廊下を歩く。

 セラがポーションを飲んでいることに気付いてアウリオが質問した。


「騎士団の前でポーションの調合をするのか?」

「いえ、念のためです」


 階下に降り、不安そうなイルルたち受付嬢に手を振ってセラはギルドを出た。

 セラに気付いた冒険者たちが左右に割れる。港で起きたパラジアとの戦いをきっかけに冒険者たちの中にセラを嫌う者はほとんどいなくなっていた。

 セラは冒険者たちの間を抜けてコフィの横を通り過ぎ、王立騎士団の前に立つ。

 騎士団を従えているらしい隊長は優しそうな顔立ちの若い男だった。赤に近い茶髪を伸ばし、騎士という肩書きのわりには親しみやすそうな気楽さがある。


「こんにちは。王立騎士団、第五部隊の副隊長オースタ・イナックです。あなたは?」


 セラという名は聞いても肩書きがわからないのだろう。冒険者ギルドには似つかわしくない白衣姿のセラにオースタは警戒した視線を向けている。

 セラは身分証を自分の頭より少し上に掲げる。身長差のせいでオースタに見せるとなるとこの体勢にならざるを得ない。


 子供が背伸びをするような緊張感のないセラの姿勢に冒険者たちがわずかに身構える。セラが侮られれば、仲裁役がいなくなって一触即発に逆戻り。一番前に出ているセラの身も危ないため、守れるように立ち位置をずらす者までいた。

 しかし、冒険者たちの警戒は完全な杞憂に終わる。

 オースタの顔が一瞬で青ざめた。


「国家錬金術師、セラ・ラスコット……」


 オースタが身分証を読み上げた直後、騎士団がぎょっとした顔でセラに視線を集中させる。視線を外された冒険者の方が困惑するほど、騎士団は隙だらけになっていた。

 オースタは恐る恐るセラに問う。


「なぜ、あなたがここに?」

「左遷されてきました」

「なるほど」


 瞬時に納得した騎士団が次々に頷く。

 細かい事情を話していないのに納得されるのは癪だが、本題はセラの事情ではない。

 セラは気持ちを抑えて淡々と続けた。


「双方の事情のすり合わせと、可能であれば密漁組織の取り締まりにご協力をお願いします」


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― 新着の感想 ―
なにやったねーん
何やったの。
守ろうとしてくれるってだいぶ冒険者からの評判上がったね -10から+1くらいには
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