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やり直し王女テューラ・ア・ダンマークの生存戦略  作者: シャチ


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世界恐慌

ちょっと時代が飛びます

 1927年、ジュネーブで行われた国際会議において、加熱しすぎた株式市場に対する懸念から株価暴落時の対策が話し合われました。

 ただ、話し合われただけで何も決まらなかったというのが事実のようです。

 マリーナがぼやいていました。

 誰一人危機感がない、株が下がるなんてことはありえないと馬鹿みたいに信じているとワイン瓶を片手にやってきたので瓶を取り上げたほどです。


 それだけ、世界的には景気が良いと言うのは事実でしょう。

 ダンマークが世界に向けて販売したTH-5は確実に世界各国の物流事情を変えました。

 更には、マークスを筆頭とする海上輸送業についても、コンテナによる規格化された大量輸送によって、物流の改善が進み、イギリス、アメリカ、ドイツにてダンマーク規格のコンテナが積める船が登場しています。

 小型の工業製品の輸出入に関してこれだけシステマチックな方法はないでしょうから、ようやく各国の港でもコンテナ積み下ろし用の大型クレーンが何個も並ぶようになったという現状です。

 一番大きいのはユラン半島北にあるオーフス港でしょう。

 ダンマークのハブ港としてバイクや近隣へ輸出するチーズなどの日持ちする酪農品はコンテナで素早く輸出され、各国の軽工業品を輸入するような状態です。

 更にはスウェーデン、ノルウェーで作られる工業製品の輸出もこの港にコンテナで運ばれアメリカまで届けられます。

 北欧家具はアメリカでも人気なのです。


 ただ、私達は知っています。

 株価は下がる。

 実態を伴わない投資は破滅する。

 ダンマークの財務省はそのあたりかなり注視をしていたようです。

 1929年10月末、アメリカから届けられたニュースはアメリカ国内株式市場の大暴落でした。

 この報道に即座に反応したのがダンマークだったのです。

 今まで資金流入によるインフレを抑制するために上げ続けていた金利を一気に引き下げたわけです。

 そして、大量のダンマーククローネの準備を始めます。

 これはマリーナが最初から画策していたことですね…

 予想以上に景気が良くダンマーククローネは強くなっていたのもありますが、他の銀行などはアメリカ株への投資などを行っていたことにより、損失を出したり債権が焦げ付くということが起こるだろうことは私ですらわかっていましたので。

 逆に言えば、戦後各国が金本位制に戻すなか、ダンマークは変動相場を維持しました。

 お陰で、お金を無限に刷れるということのようです。


 *****

 1930年、世界的な不況に苛まれるなか、クリスたちが遊びに来ました。

 孫を連れての久々の来訪は心が癒やされます。

「ティラはずいぶん大きくなったわねぇ」

「はい、おあばあたま」

「でも、あんまりかまってやれなくて」

「それは仕方がないわよクリス、あなたまだパイロットを続けているのでしょう?」

「流石に近隣へのフライトだけよ。それに今は新人の育成がメインの仕事」

「そうなのね」

 クリスが席についたので、メイドにお茶を用意させる。

「でも、ダンマークはだいぶまともな状態だと思うわ。イギリスやベルリンなんて失業者で未だに溢れかえっているもの」

「マリーナが国として国内投資を加速させているおかげで、失業者は他の国に比べてとても少ない状態だものね」

「それに、ご飯が普通に食べられるし、政治も安定しているわ」

「全体主義…でしたか。ダンマークはその点安定しているわね」

「より平等で、公平な社会を目指すという言葉自体は良い響きだけれど、一歩間違えば独裁でしかないわよね」

「その通りよ。それでうまく行けばいいけれど、うまく行かなくなったとき国民が一番困ることになるわ。

 それは共産主義も同じ…ソ連を見てご覧なさい」

「その点、ダンマークは大国に囲まれているというのが良い方向に働いていると思うのよお母様」

「そうね、亡命者なども来るおかげで情報が豊富だわ。良い面も悪い面も聞こえてくる」

「お母様もそれに一役買っているのでしょう?」

「新聞に投稿しているだけよ」

「意外と人気みたいよお母様の記事」

「あら嬉しい」

 ダンマークは今情報統制などは一切していない。

 調べようと思えば何でも調べられるオープンな環境を作っている。

 とはいえ、全くの無制御というわけではない。

 ラジオ放送などでは正確な情報と国の考えと方針をニュースとして伝え、国民に議論する機会を与えている。

 ダンマークにはその下地がある。

 町内会単位でのそういった討議する習慣があるからです。

 そして、それは助け合いにもなっており、世界的な不況の状況をはねのけている。

 何より輸出が激減したけれど、ならば1960年代と同様に国内経済だと、アイスランドやグリーンランド、フェロー諸島にも投資を推進し、港の設備更新や新たな道路、鉄道網の整備、発電所の建設といった公共事業を乱発して国内の資金の流れを作り続けている状態です。

「グリーンランドのサーモンは本当に美味しいのよ。お母様も今度食べてほしいわ」

「輸入されてくる塩漬けのものしか食べたことがないわねぇ」

「その場でマリネにしてもらえるから新鮮で美味しいの。なんでも生でも食べられるそうよ」

「それはすごいわね」


 こんな日常会話が楽しめるのも、国民が皆で考えて政治に参画してより良くしてくれているからだと思います。

 本当はこんな日がずっと続けばいいのですが…

 多分そうは言っていられないでしょうね。

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― 新着の感想 ―
[良い点] こうなると「ダンマークに学べ」が一部で合言葉になってケインズや高橋是清あたりが研究のために訪問してきそう [気になる点] 「なぜその政策を取ったのか?」と質問攻めにあうと思うのですが、それ…
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