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やり直し王女テューラ・ア・ダンマークの生存戦略  作者: シャチ


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息子が生まれた、技術が進んだ

 1907年6月、第二子は男の子で名をフェリックスとしました。

 産後は順調です。

 そしてお姉さんになったクリスも4歳になり最近ではクリスチャンお兄様の次男で歳も近いクヌーズ殿下と一緒に遊んでいたりします。


「無事に長男が生まれてよかったですね」

「ありがとうレーナ。わざわざ来てくれるとは思わなかったわ」

 ちなみに、私の出産については新聞だけでなく、ラジオ放送もされています。

 まだ試験放送ですが、それでもコペンハーゲンの飲食店では普通に聞くことができるようになってきました。

 まぁまだ機材が大きすぎて一般家庭に置けないというのがその理由ですが。

「いろいろ報告もありますからね」

 そういってレーナはまだベッドの上にいる私に向かって書類の束を足します。

 たまに思うのは、そろそろレーナには不敬って事柄を理解してほしいってことですわね。

 とはいえ、本来は認められるはずのない平民との結婚を無理やり国に認めさせた私が言えたことではありませんが。

 いま私は幸せですが、他国の王侯貴族からは抗議文まで送られてきたぐらいですからね。

 ちなみに全部無視です。

 イギリスやロシア、ギリシャには断りをいれて了承をもらっていますから、それ以外の血族でもない他国の王族からの文句など干渉行為だと突っぱねましたからね。

 第一、いつまでも”青い血”にしがみついていられる時代ではないと理解出来ないのでしょうね…

 ちなみにですが、一応ニールスは”男爵位”を今は持っています。

 私との結婚を機に体裁だけ整えたので厳密には”平民”ではありません。

 功績はお父様の病気の治療です。

 ただ、元平民であることには変わりないので、こういった抗議文が来たのです。

 まぁ見え透いた爵位授与でしたからね。

 他国でいう名誉男爵という位置づけですから、領地もなければ屋敷もない状態ですから。

 *****


 仕方がないとあきらめレーナからもらったレポートの束をみれば、大きく3つの事柄が書かれています。

 1.ラジオ放送が来年から正式にダンマーク・イギリス・ドイツで開始される

 2.プロペラ同軸機銃搭載の護衛戦闘機の完成

 3.半径10kmのレーダーの実用化のめどが立った

「ずいぶん各研究が進みましたのね」

「あれだけお金をつぎ込んでもらえれば、いやでも各部門プレッシャーがかかりますからね。必死でしたよ。

 でもおかげさまですべてにめどが立ちました」

「ラジオ放送に関してはずいぶん早く進んだわね」

「各国すでに都市部で試験をしており”民衆誘導に最適”であることは理解しましたからね」

「なるほど…まさに情報を制する者が世論を制すわけね」

「ペンは銃や剣よりも強いわけです」

 第二次大戦期前からドイツはラジオ放送でナチ党の正当性だとか国威発揚に使っていましたからね。

「結果的に大国に挟まれているダンマークはイギリスの放送もドイツの放送も聞けます」

「いいことだわ。偏った情報ではなく多面的な情報が重要だもの」

 私の発言にレーナもうなずく。

 中立国である我が国がどちらか一方だけの話を聞くというのは非常にまずいもの。

「次に護衛戦闘機ですが、軍の要求以上の性能に仕上がっていますよ。最高速度は300km/h、同軸機銃は7.62mmが2門、最大高度は6000m、これは保護具着用での数値ですが」

「やたらと高性能な気がするのだけれど?」

「だからその用紙に書いてないんですよ。他国にばれたくありませんから」

「なるほど、ということはこの三面図も正しくないわけ?」

「正しくないですね。その用紙をコピーしてもまともに飛びませんよ」

 そうして正しい情報を隠すのね。

 軍用機であればそうか…

「私はダンマークが他国のように多種多様な飛行機を作れるとは思っていません。

 なので、その護衛戦闘機には外付けでガンポッドや爆弾を懸架できるようにしてあります。のちの時代の言葉でいえば”近接支援”が可能な戦闘機となりますね」

「きんせつしえん?」

「上空からの歩兵の護衛です。20㎜機関砲による敵歩兵への上空からの射撃、100㎏爆弾による今後増えるであろうトーチカや塹壕に設置される機銃陣地への攻撃に使うのです」

「それをこれ1機で行うと?」

「そうです、いうなれば”マルチロール機”というやつです。そのせいで一部性能を犠牲にしていますが…」

 レーナが言うには本当に純然たる護衛戦闘機として設計していれば、最高速度も最大到達高度ももう少し稼げるという。

 ただ、それらの性能が少し落ちてでも骨太で防弾性能がしっかりしている機体に設計し、余計な武装を後付けできるようにして”万能機”として作り上げたのだそうだ。

「設計が大変でした…」

「一つの性能に絞ればもっと早く作りあげられたということ?」

「はい、ですがダンマークにそんな余裕はありませんよね?護衛戦闘機と近接支援機をそれぞれ100機そろえるぐらいなら、両方の機能を持つ戦闘機を150機そろえたほうがいいと思ったのです」

「あとは価格ね」

 そう、肝は価格。

 飛行機は高い。

「そこは何とか頑張ります」

「…友好国、ノルウェーやスウェーデンへの販売はどうかしら?」

「有効だと思います。注意すべきは同軸機銃のオミットですかね」

「そうね、そこだけは引き渡すわけにはいかないわね」

 理由は簡単で、スウェーデンはイギリスに近すぎる。

 さらにはフィンランドを経由してロシアに情報が渡れば目も当てられない。

 ダンマークが中立だからと言って、ほかの国も中立ではないのだ。

 各国の思惑、国民の考え、軍の思想は複雑に絡み合う。

 下手な兵器輸出は恐ろしい結果を生むことは、2年前に終わった日露戦争を見ればわかる。

「最後にレーダーですが、さっそく実証試験を開始します。シェランタワーにつければ、各方向から来るであろう飛行機を探知できるはずです。問題はタワーにびっしり並べる必要があることでしょうか」

「それはなぜ?」

「高度の切り替えができないのです。タワーは三角形にできていますから、それに並べることである程度の高さの範囲内の飛行物体を探知するというわけです」

「…ねぇそれラジオ放送に影響しないの?」

「しますね、なので空港近くに別のタワーを立てています。シェランタワーより小さいですが」

「いつの間に…」

「THIの敷地ですから好きにさせてもらいました」

 な、なるほど、確かに敷地内なら好きにできるわよね。

 しかし思い切ったわねそれは…

「技術進歩には必要なことでしょうけど…よく無理が通りましたわね」

「マリーナにお願いして軍を動かしましたよ。祖国防衛のかなめになると認識いただきました」

 あぁもう引けないところまで来たのね。

 で、この技術はイギリスとドイツも同様に持っていると…これのおかげで互いの戦争抑止力になればいいのだけれど、どうなるかしらね?

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