航空機の兵器化
1904年9月、日露戦争において日本軍が初の”爆撃”を行ったと観戦武官より連絡が入った。
史実における世界初の爆撃は”スイカ”といわれているが、こちらは本当に爆弾を落としたらしく、二人乗りの布張り軽飛行機による航空偵察中にダイナマイトに火をつけて投げ落としたということだ。
開戦当初、航空機や飛行船による偵察は両国とも行っていたが、偵察任務において双方攻撃は起こらず、お互いに敬礼するような牧歌的な状況だったようだ。
これは史実においても同様で、空を駆るものは紳士”淑女”たれというような風潮による。
なにせ、世界の航空機パイロットの6割は女性という、史実とは違う偏った状態だ。
そうなってしまった理由は私を含めたダンマーク王国の航空機パイロットに女性が多いせいである。
本来軍事に関しては男の世界であるはずなのだが、こと空に関してはそうではない。
性能の低いエンジンで飛ぶには機体も含めてすべて軽いほうが良いということもあり、あまり性別にこだわりが無くなったようなのだ。
それでも軍隊に属するパイロットは圧倒的に男性しかいないそうだが。
さて、そんなパイロットたちだが、現代戦の前哨戦と呼ばれるこの日露戦争において状況が変わってきている。
飛行機が武装を持たないとはいえ、武器を持ち込めないわけではない。
今は偵察機同士が互いにライフルで撃ち合うなどという状況になってきているという。
わざわざ偵察され陣営がばれてお互いに戦うぐらいなら、偵察機を寄せ付けない、又は撃破するという方向に行くのは必然というやつですわね。
「航空機に武装を積むことの重要性が増しました。研究は順調に進んでいます」
レーナからの報告を受ける。
ちなみに、この武装の件は国家機密扱いで、THIでも一部の研究者しか立ち入れない区画で実験されている。
「THI-103の改造も行うと?」
「はい、今回実施された日本軍による爆撃が敵に対して有効に働いたことは明白です」
「とはいえ、我が国においてそれを活用することがあると思う?」
私はレーナに問いかける。
そう、4発爆撃機による爆撃は”戦略爆撃”になる。
防衛をメインとする我が国において、戦略爆撃はほぼ意味をなさないと私は考えているのよ。
これは軍との共同で研究している航空戦術論によるのよね。
専守防衛、他国からの砲爆撃を防ぐという観点から言えば、必要なのは戦術爆撃か、近接支援攻撃、敵となりうる国に対して湾岸攻撃を行うことで敵船を破壊することはなくはないけれど、必要なのはそれではない。
それに、効果的な爆撃を行うほどの飛行機を用意することもダンマークとして適切じゃない。
「まず我が国に必要なのは迎撃機よ。パイロットを傷つけない防御力と上昇能力、そしてどんな敵機も落とす攻撃力」
「言うは易く行うは難しですね…現在の300馬力のエンジンでは限界がありすぎます。それにどれだけ上昇力、防御力、攻撃力があっても飛行機は意味がありませんよ?」
そうね、一番重要なことがあるわ。
「索敵、相互情報共有能力と」
「はい、そのためにも迎撃機の開発は護衛戦闘機同様に進めますが、出来るかぎり機種統一したいです。あとはレーダーの早期導入、音声無線通信の確立です」
「とはいえ、レーナも電気系は難しいのでしょう?」
「残念ながら全く太刀打ちできません。もう専門の学者に任せっきりです」
「こればっかりはどうしようもないわね…そういえば、シェランタワーの建設許可が下りたわよ」
「!ということは2年以内にラジオ放送が出来そうですね!!」
そう、レーダー用の鉄塔でもあるが、まずはラジオ放送を目指しているのよね。
うまくいけば、イギリス、ドイツ、ダンマークは世界で初めてラジオ放送を始める国になるわ。
情報を制する者が世界を制する…その最先端に私たちは向かおうとしているのよ。
後の軍需利用も含めての先手というわけです。




