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第3章 艦砲射撃の下で

 強襲戦艦と僚艦は射撃体勢に入った。エーリフが最終チェックをした。

「サージ・ウォール回転速度合わせ、方位角ヨシ!粒子砲出力ヨシ!旗艦アドリアン、主砲、ェ!」

 エメラルドグリーンの船体から三条の光が鋭い軌跡を描いて西方上空へと伸びた。轟音とともに薄暮にピンクの光の帯が吸い込まれ、遥か上空でぱらりと四散した。続けて母艦から、巡洋艦から、残りの強襲戦艦から、激しく光の帯が放たれた。

 陸上からは花火のように賑やかな光景だったが、甲板上のヴィザーツの卵には砲撃による衝撃が降り注いだ。全員が突っ伏してヘルメットと耳を押さえ、襲ってくる空振をやり過ごした。


 カレナードはその中でマリラの姿を追った。

 女王と侍女団は近くで一塊りになっていた。女官長とチャンダル女官が両脇から挟むようにして女王を守っていた。マリラの横顔は希望とも絶望とも分からない不思議な色を帯びていた。

 少年が見たのは、艦砲射撃の衝撃に今にも散りそうな儚げさがあった。が、強い意志で我が身を支える女だった。

 女王の視線は遥か遠くにあった。カレナードはマリラの視線の先を追った。サージ・ウォールを突き抜け、アナザーアメリカの外へと向かう視線だ。誰も追いつけない世界に唯一人でいるのが分かった。ひっ詰めた髪が数筋、乱れて風になぶられていた。


 カレナードは急に彼女の側に駆ける衝動に襲われた。砲撃と砲撃のわずかな隙に立ちあがった。キリアンとアレクが急いで彼の頭を押さえた。

「あほ。目と耳をやられるって」

「マリラさまに気を取られてちゃ駄目だろ。次は古参の『それでも貴様軍人かッ!』が来るぞ」

カレナードはつぶやいた。

「僕はそんなに危なっかしいか」

ヤルヴィが大声で叫んだ。

「世話が焼けるったらありゃしない!」

 そうして次の砲撃に備えて全員が真顔に戻った。ミンシャはミシコを肘で突いた。

「さすがV班のチームワーク。彼を守ってるんだ」

「僕としては君を守りたいんだけど」

小麦色のミンシャの頬に、ナノ粒子砲の色が映えた。

「ン、もう!照れるじゃないの!」

 最後の砲撃に甲板は揺れ、ミシコはミンシャの肩を抱いた。誰もそれに口出しする余裕はなかった。


 3日後、ガーランドは元の姿に戻った。ポワントゥの浜辺にミセンキッタの人々が集い、洋上に静々と巨大な調停船が甦える様を見物した。

 調査ナノマシンはデータを満載して回収された。その解析研修で忙殺されることを、新参はまだ知らない。


 何割かの新参訓練生の胸には、女王が今更のように口にした「ヴィザーツの真の役割」が引っ掛かっていた。その何割かの中にカレナードもいた。調停と武力の間で何を目指すのか、彼の問いは始まったばかりだ。

 こうして生き脱ぎの季節は終わった。


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