第3章 男子V班と女子Y班
その頃、ミシコたちはカレナードを探し回っていた。 こっそり講堂や遮音室まで行った。
「女王区画にいるってどういうことさ。おまけに大怪我したって!」
口うるさいシャルに、キリアンは言った。
「紋章人だからな。施療棟に移されたら様子を見に行こう。マヤルカ・シェナンディに知らせまきゃ」
ミシコは諸手を上げて賛成した。堂々とミンシャに会えるからだ。
ミンシャは蘇りの知らせが待ち遠しくてたまらない。
「お昼のサンドイッチを持って施療棟群の林へ遊山に行きましょうよ。あそこは眺めも抜群。せっかくのお休みなンだから」
彼女の小麦色の肌が眩しかった。鋼のように艷やかな黒髪が跳ねている。
「いいね。ついでに施療棟に寄る用事がある」
「なンなのよ」
ミシコがカレナードの件を語る最中に女王の蘇りの鐘が鳴った。ミンシャは親指をぐっと突き出し、グッドタイミングと言った。
彼らと彼女たちはサンドイッチと保温水筒を布袋に入れ、林を歩いた。
オーレリがきわどい質問を投げている相手はアレクだ。
「それでカレナード君と一緒にシャワーや湯船を使うときはどうしてるの」
「どうもしないね。彼を男扱いするのが男子棟の礼儀だからな」
「そうなの。つい見えちゃった時はどうしてるの」
「見て見ぬふりだ。騒いでたら詰所から舎監が飛んでくる」
「そうなの。今日は姿が見えないわね、彼」
「大怪我したらしい。もうすぐドクトル・リリィの研究室に移送される。それで待ち構えてるんだ」
双子は賑やかにシャルを翻弄していた。巻き込まれているのがヤルヴィで、傍で面白がっているのがアラートだ。
キリアンはマヤルカに訊ねていた。
「カレナードはガーランドに来る前のことを喋らないんだ。君や君の家族のことは別だけど」
「彼はもうオルシニバレに戻れないから…。でもシェナンディ家のことは喋るのね。父も姉も喜ぶわ」
「彼は君の家族同様だったのか」
「私は5歳のときから彼と一緒に寝てたのよ」
キリアンは添い伏しを知らなかった。マヤルカは笑って、オルシニバレ独特の民間療法を説明した。
「面白い風習でしょ。でも効くのよ。彼のおかげで私は死なずにすんだわ。祈祷師が言うには彼と私の相性はすごく良いの」
「それは添い伏しでの相性なんだろう」
キリアンの問いはマヤルカの心に波を立たせた。
「もちろんそうだけど、添い伏しの相性は特別なのよ。特別な縁なんだから!」
キリアンはマヤルカの強い口調に頷きながら、さらに訊いた。
「彼は今でも君が調子悪ければ添い伏しするのか」
「家を出てからガーランドに来るまでは、ずっとそんな感じだったわ。私一人ではここには来れなかった。彼の力は大したものよ。まぁ、本人には自覚がないの。ところで、あなたも添い伏しが要るの」
キリアンは出生の秘密を打ち明けたことは添い伏しに値すると考えた。
「すでにしてもらったようなものだ」
マヤルカは探るように「そうなの」とだけ答えた。
「そういえばヤルヴィは時々一緒に寝てるようだけどな。あれも添い伏しなのかな」
マヤルカは慌てて、ヤルヴィを目で追った。
「添い伏しは祈祷師がそれなりに手順を踏む儀式なのよ。あの子は十分元気だわよ!」
施療棟群は10の建物があり、彼らはその真ん中の広場で待っていた。マハが研究専門棟から出てきて、カレナードの到着を教えてくれた。
リリィは艦長から小解析室という名の小さな部屋を確保して、大切なサロンを守れたことにホクホクしていた。
「面会はまだ出来ないわ。命を取り留めたのは奇跡。難しい医療コードを遣うから、明日にしてちょうだい。ドアのところから顔だけ見るのならいいわ」
皆はガラス越しに友人を見舞った。カレナードはうつ伏せで眠っていた。
マハが彼の腕に点滴の針を挿し、心配しないわと微笑むのを見るしかなかったが、ミシコは明日もミンシャを誘った。
林に先客がいた。エンゾ・ボンゾが小柄な女と一緒にいた。その女は新参に縁のないような妖艶さと刃の鋭さがあった。只者ではない女の香りだった。
少女たちはその毒気を避け、軽い会釈で通り過ぎた。女は女王のように彼女らを見下し、無言で笑った。ボンゾはさっと教官の表情を作った。
「皆さん、私に投げられ、打ち身はいかがです」




