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第6章 内陣の攻防

今回はちょっとエロいです。15歳未満の方は片目を閉じてお読みください。

 カレナードはマリラが納得するならと、ひざまずいて女王の手に軽く唇を当てた。マリラはすかさず彼の腕を取り、クッションの上に諸共に転がった。

「マ、マリラッ!」

マリラの体がのしかかった。踊り比べの時にはなかった激しい重さがあった。彼女の体温と香りが布一枚を突き抜け、物凄い速さで彼を痺れさせた。マリラの両腕が彼の体を抱きしめていた。


 マリラの胸の熱さが伝わってきた。彼の胸も熱くなっていた。

 それは戦いだった。カレナードはマリラと戦い、自分自身とも戦った。彼の一部は間違いなくマリラを求めていた。それが心の一部なのか、体の一部なのか、はっきりしないまま彼は欲求をねじ伏せるのに必死だった。

 マリラの愛人になってしまえば、楽な道に思えた。彼女の庇護を受け、彼女の理不尽に悩まずに済むかもしれない。しかし、それを由としないカレナードがいた。何より、彼は今以上にマリラに深く従属し支配されるのを恐れた。それだけは我慢できなかった。


 彼は実力行使に出た。

「マリラさま、ご無礼!」

マリラの両腕を振りほどき、突き飛ばした。彼女は後ろのクッションの中に尻餅をついたが、身軽に起き上った。

「これくらいで私が諦めると思うのか、夏至祭だぞ、カレナード!」

「僕が尊敬し敬愛する女王は、こんななさりようをする方ではありません!」

「ふふふ、それはかつてお前を助けた私か。そなたは思い出の中の私を後生大事に置いておくつもりか。それで私の紋章人が務まると思うのか。

 ポルトバスクで私の影を堂々と演じのは、私のもう一つの顔に気付いたからだ。女王の力は悪とトペンプーラが示唆したはずだ。今、そなたの前にいる私も、間違いなく私である。カレナード、そなたは私に女を求めないのか」


 マリラはボレロを脱ぎ捨て、部屋着の紐を引っ張った。胸元が広く輝いた。

 カレナードは負けられなかった。

「マリラさま、あなたと同じ女の胸がここにある。その感覚を覚えたくないのです。この体に女の記憶を残したくないのです」

「ほう、元に戻った時にそれは忌まわしいのか、カレナード。」

「忌まわしいとまで言いません。しかし、僕は男です。受け入れ難いのです。今夜のことは忘れます、どうかこれ以上のことはお止め下さい」

 マリラはカレナードの傍まで来た。カレナードは思わず防御の構えを取った。女王は構わず彼の腕を取り、そのまま胸にあてがおうとした。彼はそれをも振り払い、じりじりと距離を取った。

「無かったことにしたいと申すか。ここまで来て、そう言うか。一度知ってしまえば、女が良く分かるやもしれぬのに。惜しいぞ、カレナード」

「僕は納得できません」


 マリラは肩を落とし、溜息を吐いた。

「頑固にもほどがある」

カレナードはマリラが諦めたと思った。しかし、間違いだった。

「馬鹿者め!踊り比べで私とあれほどに息を合わせたくせに、そなたは何も!何も感じなかったというのか!」

マリラの叫びは怒りを孕んでいた。

「それでも男か!逃げるのか、この腰抜けめ!」

腰ぬけと呼ばれ、カレナードに怒りが飛び火した。

「逃げませんよっ!うおおっ!」

「おのれッ!」

マリラが掴もうとして出した両腕を、カレナードが捕まえた。2人は勢いのあまり内陣の中央まで転がった。


 ジーナとアライアは突入の機会を逸していた。マリラの面子を潰さずにその場を収めるつもりが、それどころでなくなった。アライアが「カレナードを狼藉者として逮捕させましょう」と提案した。

 だが、マリラの乱れた姿を警備隊に晒せない。ベルがもう少し様子を見ても遅くないと言った。ジーナが「なぜ」と訊いた。

「女官長さま、カレナードはバカではありません。底力があります。第一、彼にマリラさまを傷つけることなど出来ません」


 カレナードはマリラを組み敷いていた。まるで力比べの様相を呈していたが、マリラが力を抜いた。

「私の負けだ。カレナード、そなたはやはり男だ」

重なった体の下で、マリラの脚がそっと動いた。彼女の胸が喘いで、大きく上下した。

 カレナードの顔のすぐ下にマリラの顔があり、再び眼と唇が彼を誘った。肩で息をしていたカレナードは、目が離せないでいた。マリラの瞳は「おいで。恐れるな」と語りかけた。唇は魔力のように彼を惹きつけた。体温が目眩のように彼を包んだ。


 カレナードは抗い続けた。マリラが急に辛そうな声を上げた。

「痛い、離しておくれ」

 カレナードは女王の手首を離した。代わりにマリラの両手が彼の頬と耳に伸び、その途端、彼の自制は途切れた。

 抗うのをやめた唇はマリラに堕ちていった。舞台上の硬い接吻と違い、熱い奔流が流れた。カレナードはマリラを抱きしめ、思うままに肌の柔らかさに触れた。温かい肌を慈しみたかった。

 彼は長い間、触れあいに飢えていたと知った。玄街コードに侵された体ゆえに、自ら諦めた行為だった。飢えた本能が彼を動かした。

 マリラの顎から頸へと唇を移し、それが乳房に達しようとしたとき、彼は鳩尾に痛みを感じた。

「駄目だ、これ以上は。マリラさまも僕も駄目になる!」

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