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第1章 グウィネス・ロゥの陥穽

「我、玄街首領グウィネス・ロゥを知らぬとは。幸運に育った証拠だ。

 カレワランの子、お前はアナザーアメリカの禁忌の真実を知らずに生きるのか?ガーランドに欺かれたままで良いのか?ここより豊かで刺激に満ちた場所があるというに、惜しいことよ」

「断ります。僕は玄街にならない!」

「お前は我々をどれほど知っているのだ。よく知りもせず、我々を忌み嫌うのか。調停敵対者、秩序の破壊者と罵られる我々も道理を持つと考えないのか。 

 創生から千年はこの世は力ある者が古領を治め、懸命に進歩を重ねた。が、マリラは進歩を止め、人類の可能性を限りなく貶めた。私が生きた1500百年、科学も哲学もさほど変らぬ死んだ世界、人はガーランドに飼われる奴隷だ。それで良いのか。カレワランの息子」

「あなたの言葉など信じられない、母の名を使うな!」

「カレワランは私の友だった。その息子はヴィザーツの素質を持つ」

「嘘だ!」

ヴィザーツ屋敷の大門が開き始めた。彼は黒衣を突き飛ばし、そこに飛び込んだ。大門の中に飛行艇が並び、シェナンディの工場よりはるかに大きい青銅屋根のガレージが遠方まで並んでいた。紫とグレーの簡素な服の女が騒ぎに気付き、鋭い警笛を吹いた。

 カレナードは飛行艇の前で抵抗を続けた。

「ここはガーランド・ヴィザーツの領域だ!」

「我々もヴィザーツというに、拒絶一辺倒か!裏切りの血筋め!」

「玄街は去れ!」

 彼女の眼に殺気が燃えた。少年は咄嗟さに生誕呪を口にしていた。

「Ni.darqiff.yvfana.vincirhuo.ニ・ダーキフ・イファナ・ヴィンチーフォ」

 飛行艇がエンジン始動の疾風を上げ、カレナードとマヤルカは転倒した。マヤルカのスカートをグウィネスのブーツが踏んだ。

「潰れて死ぬるがいいか?それとも死ぬより辛い身で生きるか?」

「お嬢さんに手を出すな!」

カレナードはグウィネスを殴ろうとして、逆に殴られマヤルカの上に倒れた。

「小僧!お前も死か、あるいは己を失って生きるか、玄街のコードに選ばれるがよかろう!カレワラン、お前の血筋は決して許さぬ!」

 玄街ヴィザーツは一斉に奇妙な音声を発した。波のようなざわめき……。

「Ж嵬≡暝⊥孳蠱Ж嵬≡暝⊥孳蠱Ж嵬≡暝⊥孳蠱Ж嵬≡暝⊥孳蠱……」

それは音の刃となり、少年と少女を刺した。カレナードは気を失う寸前、幻覚を見た。ガーランドが腹部に刺さり、やがて体を引き裂いていくのだ。

 玄街の影は忽然と消えた。

 先ほど警笛を鳴らした女が二人に駆け寄った。

「ベスティアン、この子たち、玄街コードが全身に効いている」

中年の男が銃を腰のホルダーに戻した。

「アナ、中に運んで調べよう。ガーランドへ入隊式にはミシコだけ出席すると伝えてくれ。誰か、遮音室の長椅子に毛布とシーツを頼む」

 カレナードは激痛で目覚めた。しっかりした顔立ちの男がいた。

「私はオルシニバレ屋敷代表、ベスティアン・カレントだ。私は玄街の仕業を確かめねばならん。君の罪を問うのはそのあとだ」

 彼は玄街が少年に残した痕を探し、名と性別と所属を訊いた。

「シェナンディの社員か。痛む場所を触ってみなさい」

 痛みを超える驚愕が待っていた。

「体が、僕の体が!こんなことがなぜ、なぜ!」


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