Sクラスでの初仕事
教室に戻った私は一応このことを教師である白川先生に報告した。
「時崎がいなくなったぁ?」
「はい。体調を崩したって言ってましたけど。その後すぐいなくなっちゃって...」
状況はいまいちよく分からないが問題が発生したことには間違いなさそうなので先生に報告しておく。あの時、時崎くんは私の目の前から瞬時にいなくなってしまった。音や気配全てを掻っ攫って。
「だから言ったじゃないですか先生。僕がやるって」
と先生の机に手をつけ明るく訴える最上大気くん。
「今文句言っても仕方ないだろう?とりあえず校内の案内はまた今度にするとして....。早瀬、ここから先は大気に案内してもらえ」
頭を抱えながら指示を出す先生のことは心配だが今はこのクラスに慣れること、仕組みを知ることが最優先だ。
「最上くん、よろしくお願いします」
「全然いいよ!なら早速行こっか」
行く?もちろんgoの方の行くであることは分かった。しかし目的地が分からない。
「えーっと、今度はどこに行くのかな?」
先程まだは初めて行った場所でかなり規格外のものでもあったので少し疲れている。
負担が少なそうなところがいいな....
「なら街にいこっか。『商業エリア』辺りに!」
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ただいまの時刻は午前10時前。一般的な16〜17歳の少年少女は学校に行って勉学に励むか体調を崩して家に引き篭もるかのどちらかだろう。
私は今、男の子と街中で堂々と歩いています。
なんで?
「パトロールだよ。さっき先生がさらっと言った当番制の奴がこれ。Sクラスになったらいつもは守ってくれている都市警備隊の幹部と同等の権利を保有できる。その代わり条件として、一つは警備の助力に当たらないといけないんだ。1日に大体1時間。僕たち学生には朝と夕方をそれぞれ30分ずつ担当している」
声は出していなかったはずだけど、説明を始めてくれた最上くん。新たな疑問ができてしまったがとりあえずは説明を聞くことにする。
「僕たちSクラスが担当するのはこの『商業エリア』の一角。『住居エリア』の方は警備隊員が担当してる。夜間の警備はロボットに任せてるけどね」
「そうなんだ」
『商業エリア』はこの島の中心で栄えているエリアのことだ。食べ物はもちろん、娯楽施設に銀行業や数多の事務所が存在するためそう名付けられた。『住居エリア』はその名のとおり数々のマンションが立ち並んでいる場所だ。私もその一つの部屋を借りて生活している。
警備と聞いて思い返してみるとたまに警備隊とすれ違うことがあったし夜中にロボが稼働している姿を何回も見たことがあった。
しかしもう一つのエリアは......
「その外はどうやってるの?あの危険地帯を....」
「.....その外はやってないよ。そこにいる人間はいないはずだから」
もう一つは開発中のエリア。しかし工事音などは五年前から止まっており現在は工事せずに瓦礫や廃屋の集合体となった。この島の政権を握る二人(警備隊総長と傭異学園の学長)が侵入の禁止令を出した。『商業エリア』もしくは『住居エリア』から出た人間には例外なく監禁処分にすると。
理由はわからない。二つのエリアでなんらかの罪を犯した人間が逃げる場所で危険だとか戦場だとかでとても危険らしい........
そんなエリアを三つ目として私達は圏外と呼んでいる。
「まぁ、そんな話は置いといて早速仕事だよ?」
そういった最上君、見ると目の前にあるコンビニからレジを持った男性と手に金属バットを持つ女性がいた。私たちのいる場所とは」反対方向に逃走している。
強盗だ。すぐに通報を___________
「通報はダメだよ?これも仕事だもん。早速捕まえるよ」
そう言って最上君は飛んだ。浮いたといったほうが正しいだろうか、優雅に浮いた彼は二人の強盗の進行方向に着地する。
「なんだアイツ?学生?」
「知らないわよ。そんなことどうでもいいわ。あと少しで警備隊の手から逃れられる圏外よ。罪はもう犯したわ。今更人1人に暴行したって私達は逃げ切れるわ」
「それもそうだな」
最上君を確認して男女には彼を倒してでも逃げると考えている。現に男性は腕の部分をクロスボウにして狙撃の準備、女性はバットを水平に持ち女性自身が回転し始めた。
2人とも異能を発動し最上君を倒す気....いや、殺す気でかかっている。
私も助けに入りたいが、私には_____________________
「早瀬さんはそこで待機してて。今日は見学だからね」
走る私を最上君が声で静止させる。だが犯罪者は止まらない。
「なんの話よ!」
「そこどきやがれ!!」
男性の腕から二発の矢が、その後ろに高速回転した女性が突っ込んでくる。回転による風圧が十メートル以上離れている私にまで届くほどだ。その速度で回転する金属バットに当たれば骨折どころではない。
「いい、早瀬さん」
最上君はその二人に臆することなく私に向かって話し出す。気づけば放たれた二本の矢は彼の目の前ではじかれる。
「なっ!!!」
男性は驚きを隠せない中回転している女性が突っ込んできた。
ガキィィィィィィィンンン
その音とともに曲がったのは最上君ではなく女性のバットだった。
「!!!どうして......」
「クロスボウと回転の異能か。二人ともすごくかっこいい異能だね。でも......」
最上君が空を手でつかんだ瞬間、強盗の二人は空の巨人にでもつかまれたかのように宙に浮き、拘束された。
「なによこれ!!!」
「う、動けねえ.....」
拘束された二人の前にいたのは先ほどまでの柔らかい空気の彼ではなかった。いつもの笑顔とは何かが違う。フワフワしていた雰囲気がまるで誰にも負けないかのような自信に満ち溢れるオーラをまとっていた。
「僕の前では空気に等しいよ___________
その後強盗の二人は警備隊に引き取られた。引き取った警備隊の一人が私たちに向かって敬礼をする。
「ご協力感謝します。最上さん、早瀬さん」
「あ、いえ私は何も」
「早瀬さんは初めてだからね。これからも慣れるまでは誰かがついてきてくれるから安心してね」
去っていく隊員の誤解を解くことをできない中最上君は私をかばってくれた。
「今日みたいに犯罪者が出た場合は対処もしくは犯人の特徴を確認すればいいから。今日は少しできすぎたね」
どうやら事件が起こっても犯人を必ず捕まえなくてはならないわけでもないらしい。その言葉で少し安心した。
なぜなら私には____________
「よし、時間も過ぎたし学校に戻ろうか」
「........うん........」
Sクラスの、クラスメイトの実力の高さに驚愕して疲れた私と最上君は隊員に一言挨拶して校舎に戻ることにした。
三話でやっと異能が出てくるのでここまでは更新したほうがいいと思って更新しました。