心当たりない憎悪
更新遅くなり申し訳ありません。この1週間でこの話を含めて少なくとも2話、多くて4話ほど更新する予定です。書き溜めができてなく今後のキャラの設定に時間がかかるため少々お待ち下さい。
炎城は気絶した二人を倉庫から500メートルほど避難させ、すぐに携帯を取り出した。待機中だった相手は呼び出し音のワンコール目が鳴り終わる前に電話に出る。
「西川、聞こえるか?」
「聞こえますよ、その様子じゃ結果は黒だったみたいですね」
電話の相手はもちろん待機中の西川だ。警備隊から助っ人で来てくれた隊員で現在は圏外入り口で待機している。
「僕の異能で今先輩がどっちにいるかも確認済みです。カケル君が向かったほうの人間は、とりあえず本部に連絡して応援を呼び、保護してもらおうかと思います。それが終わり次第、警備隊戦闘部隊とともに現場に急行します」
きっと待機中も異能を駆使して状況を把握していたのだろう。本当に自分は人に恵まれていると思う。だが、99店の対応には少しだけ喝をなげる。
「いや、今回は戦闘部隊に声をかけるな。相手は少なくとも俺と同等か、それ以上の力を有している。申し訳ないが、うちの警備隊では手に負えないと思う」
「まじですか?ならいったい誰に声をかければ.....」
西川の困惑するのも無理はない。この5年間で警備隊の検挙率は100%、つまり一度も失敗していない集団だ。その集団のエースである炎城操真よりも上の人間など見たことがない。もちろんSクラスの人間の実力は彼と同等だろうが、それでも彼の負ける姿は想像すらできなかった。
「いいか、すぐにSクラスの連中、並びに傭異学園校長に連絡してくれ。もしもの場合の備えだが、奴の勝つ可能性を0にするには、それだけの戦力が必要かもしれない」
それだけ言って電話を切る。今の俺にも周辺の警戒をするという役目がある。万が一風間に仲間がいたとしたらここで確保し、連携を阻止するためだ。
だが、炎城には自信がなかった。
あの奇妙な笑みを見せる謎多き男を今夜中に投獄させる
その自信が、炎城にはなかった__________________
_____________________________________________
「ええと、何か壮絶な恨みを向けているようだが、オレと話すのは初めてだよな?」
カケルがそう確認したのは本当にこの5年間で会ったことも話したこともないからだ。情報を見ると風間凛は5年前の事件でこの島に来た人間、ならこれだけの恨みを任されるほどの酷いことを俺がこの5年間の間に行っていないと行けないが、本当に心当たりがなかった。
「覚えてなくて当然だよ。でも今はそんなこと話している余裕はないんじゃない?__風針___」
そう呼ばれた技は風間の手元から無数に飛び出される針状の風はまさに攻略不可能なほどの数が放出される。どの位置、どの角度に避けても当たるようなその攻撃はカケル自身も避け切れるか五分五分だった。右に側転、バク転など人間に可能な動作をタイミングよく発動する恐れがあった。避け切ったあと後ろを確認すると、そこにはダーツが刺さったかのような傷がついていた。
(やはり異能情報に何か間違いなどはないな)
風間凛。警備隊による情報だと異能は『風神』。その名の通り風の最上位異能である。能力はもちろん風を操っての移動、攻撃など応用にも長けている。
しかし、異能の相性の悪さからかそこまで成績が伸びず学年中位の成績から抜け出せずにいた。
「いつも学校では手を抜いているのか?警備隊の記録からは想像もつかないほどの能力だと思っているんだが....」
カケルは一旦彼との距離を取った。彼の風は先ほどの攻撃でも音速ほどの速さを記録していた。流石に不意打ちで先ほどの攻撃を発動されたら、異能なしで避けるのは難しいと判断したからである。
「もちろん。この5年間、この異能を授かってからはただ君を殺すために腕を磨いてきたんだ。それ以外のことなんてどうでもいいね」
一体彼にはなんの恨みがあるのだろうか?
自分でこんなことを思うのも悲しいがカケルは人を怒らせないためにいつも顔を伺う癖がある。もちろん白川先生や大気などの顔見知りなどには特に気を使うことはないが、警備隊の人間や商店街の人々などとの会話ではいつもその人の地雷や言われたくないことを探っている。カケル自身、そんな自分があまり好きではないがそんな自己分析をしてもやはり彼から向けられる恨みがなんなのかわからない。
「だからこそ警告をしておく。異能を使って戦った方がいいぞ」
その言葉に俺はとても驚いた。
この男は対人戦で俺がほとんど異能を使わずに戦っていることを知っていた。
「やっぱり使っていなかったか。俺はこの5年間、あんたを殺すためにいつでもどこでも観察をしていた。異能の力量、癖、初動の分析から弱点を。それでわかった。おまえはあの怪物ども以外にはほとんど異能を使っていないことに。そんな舐めプしてたら....本当に死ぬぞ?」
その言葉はハッタリかもしれない。現にこの5年間、犯罪を犯した逃走者と戦う時、『この攻撃で倒れぬものはいない』とか『そんな油断しててもいいのか?』みたいなどこぞの厨二のセリフを吐く人はたくさんいた。だが、どれも俺に薄皮一枚も破ることなく俺に敗れ牢獄へと送還された。だが確信に近いものがある。今回だけは違う。
現に俺の右頬が薄皮一枚ほど貫かれていたからだ。
「驚いたな。まさか大気や操真先輩以外で俺に傷をつけられる奴がいるとは」
「ザ・最強さんのセリフだけど俺としては今の風針は風を針の細さや鋭さまでに収縮させ風で押し出すが総量としては108本も放出してたったの薄皮一枚だ。全く...想定内とはいえ、あんたを殺すのは本当にめんどくさいな」
この状況が想定内なら他にも手札はいっぱい隠しているだろう。5年前以来、ここまで全力を出すのは初めてに等しいかもしれない。だがその前に.....
「さて、いざ戦闘開始の前に一つお前に聞きたいことがある」
「ん?どうかした?足挫いたか?湿布なら持ってるぞ」
そう言って本当に湿布を投げ渡してくるがそれは本題ではない。てか、どこに湿布持ってたんだ?投げられた湿布やポケットに入っていたほどクシャクシャになってもいなかったので疑問に浮かんだが、関係のないことなので話題を戻す。
「今回の調査でこの圏外に2箇所の人体反応があった。その為片方はオレが、もう片方を炎城先輩に任せることに決めた。ここからはわかる通り、オレはここじゃないもう片方の現場に向かった」
「だから遅れてきたんだな。だからって彼女、早瀬ひなのの怪我はお前のせいとはならないぜ。あいつは良くも悪くも異能が特殊だ。そのせいでの欠点はまだまだたくさんある。戦場に出しても足手纏いになるだけだ」
それは彼の言うとおりだ。彼女の空間移動能力は確かに特殊だ。オレでも今までの人生で2人しか見ていない。そしてヒナはもう一人の能力者よりも早い段階で能力を向上させていっている。だが、それでもまだ実力不足な彼女をSクラスに招くのは反対だった。
彼の言うとおりだ。
「違う。俺の聞きたいことはヒナじゃない。そのもう一つの現場のほうだ。あれはお前がやったのか?」
俺はその現場で見た異常事態が彼の仕業であることを祈る。彼であるのなら、現時点でのすべての問題が解決する。俺はうそをつかれないように彼の毛先一つまでの行動に目を配る。彼は少し考えるかのようにして体を固め、すぐに動き出す。
「それっていったい何のことだ?少なくとも心当たりはない」
そう言ってぶっきらぼうに返される。嘘を吐いた雰囲気はない。
「それよりさっさと続きを始めないのか?別によくしゃべるほどの仲良しこよしじゃないだろ、俺ら」
そういった風間は再度『風針』を装填する。しかし先ほどとは違い風の切る音が10メートルほど離れた俺の耳まで届いている。おそらく先の攻撃はあくまで奇襲用の、威力を抑え速度と隠密性を上げる特殊弾。つまり今の状態が本来の風針だろう。
「ああ、そうだな。おしゃべりはここまでだ。なんだかこの島では俺たちの目の届かない場所でなにかが起こってしまっている。そちらの問題を解決するためにも、お前はここで排除したくなった」
それにおそらく炎城先輩が応援を呼び、大気や白川先生が駆け付けるまでおよそあと3分。
それまでに終わらせ、第二の問題に全員で取り掛かるためのもオレは自身の異能のギアを上げることにした。




