風神と炎神
その瞬間、私の体内時計がなくなった。なくなったというよりも考える力を失ったと言った方がいいだろう。それほどに今の攻撃が強力だったのだから。
だがそんな雲の上にあるような私の意識は、今の攻撃によって溢れ出た血が増えれば増えるほどに鮮明に戻って行った。
痛い痛い痛い痛い痛い____________________
なにこれなにこれ、私血だらけなんですけど!
その時の私の体感は痛みを除けばシャワー上がり状態ほどの濡れ具合だった。もちろん体にこびりついている水分はお湯ではなく真っ赤な血なわけだが.....。もちろん死ぬほど痛くてたまらない。
直近のびっくりしたのはその状態でもかなり落ち着いて思考ができていることだ。やっぱりお母さんのおかげなのだろうか、それとも死ぬ前は意外と冷静になれるっていう新たな発見かもとも思ったが今は考えないようにしておく。
「その傷で意識保ってるのすごいね。普通に意識無くしてもおかしくないのに」
すぐそばから風間さんの声が聞こえる。その視線の先には彼がいることも確認できた。ゆっくりと私の方向に近づいてくる。だが目的地は私ではなく歩幅10歩先にいる芽衣だった。
「膜も破られてここにこられるのも時間の問題だし今回はここで引くよ。ただ、彼女は持っていかせてもらう。そうじゃないと次会う時に君の勧誘ができなくなるからね」
「..待って。....なんでそこまで...私を....狙うの?」
今怪我して初めて言葉を出したが傷の影響が発言が非常に難しかった。それでも疑問は続く。なんでそこまで私にこだわるのか?
「それはもちろん_____________________
その答えは赤く優しい炎によって遮られた。こんな鮮やかな炎を操れる人は全人類で1人しかいない。
「炎...城さん...」
「早瀬さん?!なんでここに?」
警備隊の若き幹部は二つの驚きに飲み込まれていた。一つは現場に早瀬がいたことしかし優秀な早瀬なら何か理由があるはず。近くで横になっている女子生徒を見るに人質を取られたという推測を立てその驚きの感情を抑える。
二つ目は炎の展開と同時に仕掛けた攻撃がいとも簡単にあしらわれた。炎城自身自分の攻撃をかわされたり耐えられることはよくある。自身がいつも使っているライターの炎は安全面を考えて炎の温度を出来るだけ低くしたり、速度を緩めることがある。そのためかかわす避けるなどをされても別に驚きはしない。だが、正面から防がれたのはこの異能を授かってから初めての出来事だった。
やはり予想通りだ。この場にいる風間凛が裏切り者の1人であり、今日この日まで異能の力量を隠していた。点と点がつながったなか、炎城は冷静にこの現場を見渡した。
近くに彼以外の敵はいない。人質含めこちらには3人いる。1人は気絶、もう1人の早瀬もすぐに気を失うだろう。傷の応急処置すると同時に、庇いながらだと思うように炎を扱えない。そしてなんと言ったって相手は俺の天敵とも言える異能だ。
状況は最悪。だが、それでも炎城は勝機を見出した。
「とりあえず風間くん...だよね?何か言い訳があるなら聞くけど?」
「今から泣きながらUFOにやられましたって言えば何とかなるの?」
お互いに警戒を緩めることなく始まる会話からは、ここから始まる死闘を予想すらできない。逃げる様子もあきらめる様子もない風間を見た炎城は腰鈍らせ下てある真紅の玉を取り出す。
ビー玉?何のために.........
もちろんおふざけではないだろうが風間にとってはあまり予想を立てることが難しい行動だった。
どうするのかと警戒すると炎城はその球を投げ捨てる。かなりの高さから落ちたその球は案の定ガラスの様な音を立てながら割れた。その先から出てきたのはガラスの破片ではなくあの大きさからは予想のつかないほどの大きさを誇る炎の塊だった。
「まじかよっ!!!!」
広がりながら襲ってくる炎に流石に予想がつかなかった風間は後退りながら炎を避ける。流石にある程度まで膨張した炎は勢いを失いそのまま炎城の手の元へと集まっていく。
「びっくりしたわ。まさかビー玉を炎に変える手品を持っているとは」
本性であるおしゃべりを出しながら油断は一切していない風間は情報を盗むために話を始める。炎城は隠すことなく全てをオープンにした。ここでつまらない嘘をついてもどうせいつか辿り着かれる。
「さっきのはビー玉じゃないよ。炎を限界まで圧縮して創造した結晶だ。この技術は全世界、いや全生物で俺だけだね」
そう言いながら両手に残る火炎を今一度放出し始める。先ほどの攻撃は全方位に広がる範囲攻撃のようなものだったが今回は炎を長い槍のような形に変形して操っていた。この形状なら拘束も、逃走時に足などを貫いて止めることもできる。
「君との相性の悪さは自分でもわかってるつもりさ。だからこそ少し本気でやらせてもらうね」
今までになく冷たく冷静な声と同時に炎城は攻撃を始める。大量の炎の槍を避け続ける風間だがその努力も虚しく数本の槍が命中。その時、炎城は微かながらの違和感に気づいた。それまで操っていた槍は確かに風間に命中した。だが当たり貫いた感覚がなさすぎる。まるで彼の体の直前で火が消えたかのように......
「いやー...、危なかったぁ。やっぱり相性で勝っていても技術次第では戦闘結果も覆されるかもね」
以外な顔をすることもなく風間は当然のように無傷でそこに立っていた。しかし息切れしているところから炎の副産物である一酸化炭素を吸い込んだのだろう。
(でもこのままだと負からなぁ)
炎城は状況を理解していた。今持っているもので最大の威力を出す赫結晶すら塞がれてしまってはもう打つ手はなかった。だがその顔には絶望ではなく安心の感情が乗っていた。
だがそれでいい。
初めから予想できたことだ。それに準備もできた。
「5.....4....」
「あんた、何数えてんの?」
一酸化炭素から抜け出し息を整えた風間が問いただす。
3.....2....
「カウントダウンだよ。君もよく知っているだろう?いい感じに言い換えるのなら君へのカウントダウンだよ..終末へのね」
1....ゼ
「だから遅いって、ソーマ先輩」
炎城のカウントが『0』を言い切る前にカケルは到着、そして風間へと蹴りを入れた。もちろん常人には観測することすら不可能な速さで。
「いやいや、この速度で来る君にニアピンで外していく俺の動体視力も半端ないと思うけどなぁ」
「まぁそれもそうだけどな」
勝ちを確定させる増援に炎城は真剣な顔が無くなりかけたが、まだその顔が完全に緩むことはなかった。その増援がまだ終わっていないと言わんばかりの目を砂埃の先に向けていたからだ。
「いやー、ビビったビビった。もう少しでちびるかもってこういう感覚なのね」
砂埃が散り散りになっていく中で出てきた風間は怪我どころか血の一滴も流さずにいた。
「まじぃ?」
「先輩、あいつの異能ってこんな事もできるのか?」
頭を抱え、大げさに反応した炎城はともかくこの状況にはカケルにも少なからずの動揺があった。
かれっは今の攻撃に一切の手加減を加えていなかった。
それはこの薄暗い倉庫に入った時、味方である炎城や標的である風間よりも先に目に入ってきたのは全身が赤く染まった幼馴染だったからだ。憤慨するには十分な理由で彼はその一瞬で出せる力の限りで風間を蹴り飛ばした。
その相手が今や五体満足で俺の前に立っている。
「先輩、倒れている二人を避難させてください。この倉庫が壊れるよりも前に」
そうなることを分かっていたかのように炎城はすぐに行動を開始した。
「良いの?俺は別に2対1でもよかったのに」
炎城を見送った後、風間に話しかけられる。
「良いや、これでいいい。君みたいな人材に二人も関わるには時間の無駄だからな」
「さっきから攻撃しておいて一滴も血を見せられないあんたたちが何でそんなによゆ…!!!」
風間の煽りともとれる言葉はここで止まった。口も切ったのか、彼のその饒舌な口から赤い液が垂れてきたからだ。
「お前の我々への評価なんかこれっぽっちも気にしてはいないがよく覚えておけ。お前なんぞ一人で十分だ。 お前ご突起、血を見せることも戦いに勝つこともオレ一人で絶対に成功する。それがオレ一人で戦う理由だ」
別に炎城先輩を信頼していないわけではない。まだ彼の仲間である影武者が潜んでいるかもしれないさ、彼の異能的にも二人の警護を任せたかった。それだけの理由だ。
「なぁに粋がっちゃってんのかな?鴇崎カケル~?俺だってこの状況は実にうれしんだよ。早瀬さんに用があったのは本当ではあるけど....」
衝撃でセットしていた髪が崩れたためか、風間が髪をかき上げる。その目がはっきりと見えたとい、オレはその目に懐かしさを覚えた。
「僕は君に一番会いたかったんドよ。早瀬さんでも、関根君でも、炎城さんでもなく、君に」
五年前に嫌でもかというほど浴びた目つきだ。
「今日ここで会えてよかった。さっさと聞きたいことを聞いて死んでもらうとしよう」
彼はオレに殺したいほどの恨みを向けている。
それも深く、とても黒い殺意を_____________________
今週あたりから期末テスト対策でしばらく更新できません。(いつものことですが)
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