襲来
久方ぶりの投稿ですが。全体だと2千文字くらいです。これからは週一でこの文章を継続していきたい。良かったらおすすめとか評価とか感想をしてくれると励みにもなりますし続きを書こうと思う活力になります。
今後とも末長くよろしくお願いします。
「うわぁ、また早瀬さん。めっちゃ月綺麗よ。あっ、今のはマジな方の月で君たちのこと言ってるわけじゃないよ」
目的地が近いのか、空中を移動していた風間さんが移動手段を歩きに変更してそんな他愛無い話をしてきた。残念ながら今の私にはそんな他愛無い話でも返せる余裕がなく、己の心を鼓舞し続けながらついて行くことしかできなかった。
やがて目的地に到着した。当たり一帯の建物はほとんど壊滅している中、この建物は他よりもマシで屋根や壁が少しずつ破損しているだけだった。
「そこまで緊張されるとなんかこっちが申し訳なくなるね。演出とはいえここまで悪役にならなきゃいけないんだから」
「いま....なんて...」
演出とはいえ、つまり今回の出来事は故意に起こしたことではあるが自分が望んで起こしたわけでは無いと言っているのだろうか?
「そんな屁理屈が通るとでも?」
「ははは、まぁ言い訳にしかならないから前言撤回させてもらえると嬉しいな。僕はただ君と2人で話したかったから。もっとも、君が僕の要求を断れない状況でね」
確かに今何かを要求した時、彼には人質として芽衣がいる状況だ。私が首を横に張れば彼女を殺す。彼ならやりかねないことだ。
「要求は....なんですか?」
恐怖、不安、焦り、様々な負の要素で押しつぶされそうな気持ちを押し殺し声を出す。
「要求っていうよりかはお願いだね。早瀬さん、僕の仲間になってよ?」
「仲間?」
話が見えない。仲間とは?彼以外にもメンバーがいるのか?目的は?
「ああ、そんなに考え込まなくていいから。仲間は俺の他に数人、目的はこの島の実権を握ることだね。他に何か質問は?」
「なんで私の考えてること...ってそれよりも...実権を握る?」
考えが読まれたのは一旦置いておく。私も切羽詰まっているし顔に出ていたかもしれない。だがこの島の実権を握るなんてことをして一体何をするつもりなんだろうか。少なくとも私は記憶を無くしていた5年間は何一つ不満はないし楽しい生活を送っていた。
「なんでそんなことを...?」
理解できない考えに賛同するそぶりすら見せなかった私だが彼の表情や態度にも一切の変化がなかった。
「簡単に言ったら気に入らないから。こっちもこの場所でずっと大人しくしてるつもりは....ってマジか」
何を感じ取ったのか彼は私と気絶した芽衣から視界を外し外を見つめた。
ここだ_____________________
私はすぐさま異能を発動。芽衣と風間さんの間に入り彼の腕から芽衣を奪取。取り返そうと動かす彼の手が私たちに届く頃には10メートルほど異能で距離を取ることに成功した。
「うわぁ驚いた。まさかあの一瞬で奪い解されるなんて。さすがはSクラスって言っとくよ」
風間さんは一瞬驚いたように見えたがすぐに余裕のある笑みに戻る。まるでこの状況が想定内だと思わせるほどに.....
「これであなたの話を聞く道理は無くなりました。このまま自首してください。少しでも反抗の態度を見せたらその時は2人ともこの場から逃亡します。いくらあなたでも私の瞬間移動には着いてこれないはず」
簡単だ。ここで私がマーキングしている地点のどれかを唱えれば、すぐさまそこへと瞬間移動する。かかる時間はおよそ1秒ほどだ。その間にこの10メートルの距離を詰めて私から芽衣を奪うことはほぼ不可能だ。この状況なら最悪でも人質を助けて敵の情報を渡すことができる。戦闘面では勝てるわけがなさそうなので腹を決めた。
もし彼が1メートルでもこちらに近づいた時はすぐさまSクラスの教室へと移動する。
現在の時刻は夜の9時半。この時間ならまだ白川先生が教室にいるだろう。そこで大事なのは初動。彼が少しでも動いた時にはすぐにマーク地点を唱えられるように集中する。
そんな中私の視線の先にいる彼は髪をくしゃくしゃと掻きながら少しばかりため息をついた。
「今のは完全に俺のミスだね。風の揺らぎによる察知に少しばかり動揺してる間に奪うことが可能だったとはね....。参った参った」
参った。いわゆる降参の意図を指す言葉。彼自体も諦めがついたのだろうか。
「....けど.....」
ガンッッッッッ_____________________
そんな甘い考えは何かによって吹き飛ばされ、壁に衝突した反動で飛んでいってしまった。
「こっちも絶対に引けない理由があるんだ」
再び視線の先にいる風間さんの顔は真面目な顔、覚悟を決めた顔、そして私が初めて見るような顔だった。
分かりやすくピンチっぽくないですか?
ちゃんとピンチだと伝わってますように....




