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Chapter 10: The End


光太は駿と里桜の到着を待っていた。

「さあ、三田みた 駿しゅん。最後の儀式の時間だ。今度の君は、何を望むのかな。」


東京上空にホワイトスターが現れると、フリースターが東京に向けて飛んでいった。

ホワイトスターが赤い柱を走らせて、東京を赤く染めた。

白く浄化された世界が赤く染まり、白い動物が赤褐色色に姿を変えていった。

「完全な浄化を始めるとしよう。」

ホワイトスターが魔法で白い球体を創造し、赤く染まっていく東京に投げつけた。

シン東京連合の基地が丸裸にされていき、人類浄化計画の爆心地が姿を現した。

赤褐色となった化け物が、ホワイトスターに近づいていく。

「さあ、夢の続きを始めよう。」と、勇児が言った。

赤く染まったフリースターが、ホワイトスターを浸食していく。

ホワイトスターが、フリースターのように赤く染まっていった。

勇児の体が、フリースターの魔力によって若返っていく。

「私の物語に化してくれるか。」

勇児の体が、23歳にまで若返る。そして、駿と同じ体へと若返った。

「俺が終局へと、導いてみせる。」

ホワイトスターに魔力が注ぎ込まれていく。


光太がホワイトスターのコクピット内に現れた。

「時が来たね。お別れです。」と、光太が勇児に別れを告げる。

「結局、君のことは幸せにできそうにない。悪かったな。」と、勇児が言った。

「貴方は勘違いしているかもしれません。」

勇児は不思議な顔をした。

光太は勇児に、首を横に振って見せた。

「まさか・・・」

勇児は驚いた顔をしたが、すでに光太は居なくなっていた。

勇児の体が熱くなり、魔力が溢れだしている。

博多にあった魔法炉の内部のように化すコクピット。

勇児が苦しそうな声を漏らしながら、もがいている。

ホワイトスターの装甲が剥がされ、大きな白いの勇児の姿が現れた。

勇児の手が、動物たちをすり抜けると、赤い液体に浄化する。

莉久が、勇児の到着を待っていた。

「ようやく戻れそうだな。」と、勇児が言う。

巨大な勇児の手が、莉久の前に現れた。

莉久の周りに、白い聖なる光が囲み、23歳の姿へ化かす。

「冷。」と、勇二がその姿を見て、声をかけた。

莉久が手を前に出して、勇二を止めた。

「貴方の記憶する冷は、私じゃないわ。」

勇児の描く冷との思い出が、莉久の中に入ってきた。

「どうして。」と、勇二が問う。

「私は、貴方が知っているほど、献身的な冷じゃないわ。」

「最後の日。冷が俺を助けてくれただろ。」

莉久が首を横に振った。

「私は、最後の時を、一緒に過ごすことができなかったの。もっと、いろいろと受け入れられていたら、貴方の結末にたどり着けたかもしれない。」

莉久は悲しそうな顔をして、勇児を見た。

「結局、私は、また貴方を受け入れられない運命なのね。」

莉久のまわりに結界が現れ、勇児が後退していく。

「どうして。」


「貴方の知っている冷は、私じゃないもの。」


冴島のブラックナゴヤが、巨大化した勇児の前に現れる。

「女に気を取られすぎだな。」

フリースターが注ぐ魔力を、マジックシールドで遮る。

「何をする。」と、勇児が苦しそうに動いている。

「召喚獣は、魔力を断たれれば、消滅してしまう。マジックシールドで、魔力を断てば、当然、勇児の心は維持できなくなる。」

勇児が、冴島を見て笑った。

「それも、まあいいか。」

冴島は驚いて「どういうことだ?」と、聞いた。

「結局、私の望みは叶いそうにない。それなら、君に願いを叶えてもらうこともいいだろう。」

冴島が「俺を受け入れるということか。」と、問う。

「ああ。以前の物語は、後悔だらけだ。冷の一方的な側面だけを見て、好きなのに遠ざけてしまった後悔が、今の私だ。おまえの狂った部分を、私も持ち合わせている。おまえのことは嫌いだが、私は向き合わなければいけないんだと思う。」

冴島が「何を言っているんだ。」と、動揺する。

「自分の目的のためなら、手段を選ばない。そういう所が、嫌いだ。だが、そういう部分は、誰の心にも多かれ少なかれあるということだよな。」

勇児が微笑むと、冴島のブラックナゴヤが受け入れる。

「私の自我は、ここまでだ。あとは、頼む。」

勇児の魂が白い粉となって、空に舞い上がっていく。

「どうして、自分から身を引く。」

「結局、冷を幸せにすることはできなかったな。」

巨大化した勇児が消えていき、冴島の姿へと変化する。


巨大化した冴島が量産型ナゴヤを取り込んでいく。


恵利が陽に問う。

「結局、冴島隊長の命令に従って、何がしたかったの?」

陽が恵利に微笑んだ。

「何がしたかったんだろうな。」

恵利が「ごまかさないで。」と、改めて問う。


陽を囲む妹たち。

「お兄ちゃん、また早く帰ってきてね。」

「ああ。分かってるよ。」

陽が病室に寄る。

病室には、安楽田の表札がある。

「どうして、こんなことになってしまったんだろうな。」

冴島が病室のドアをノックする。

「失礼する。」

「隊長!!」と、陽が立ち上がる。

「気にすることはない。」

「いつもご心配ありがとうございます。」

陽が頭を下げる。

「こちらこそ。いつも汚れ役をかってもらって、頭を下げなければならないな。」

冴島が頭を下げた。

「私のことを恨んでもらっていいんだ。」

「とんでもない。治療費を用意して頂いて、感謝しています。」

陽は冴島が頭を上げないので、落ち着かない様子だった。


陽は「事情があるからといって、許されることではない。」と、恵利を見た。

「私たちのこと、全部、嘘だったのかな。」

陽は「何も語る資格はないだろう。君を殺したのは、僕だ。だから、僕は君に殺されるんだ。」と、微笑んだ。

恵利が陽に銃口を向ける。

「それでいいんだ。」

銃声が鳴る。

「今度は、普通に会いたいな。」

陽は恵利に笑いかけると、白い光となって、散っていった。


誠一の前に現れる奈々。

「今度は、自分が殺される番だな。」

奈々が、誠一を睨み付ける。

「絶対に、許さないんだからね。」

誠一が奈々を見て、笑った。

「本気で叱られると思ってたさ。」

奈々が「けど、慎吾のこと、ありがとう。」と、誠一に伝える。

「そうだな。もっと早く、人から愛されることを知っていたら、こんな結末じゃなかったんだろうな。」


名古屋の基地内で、誠一がエスカレーターに乗っている。

光太が誠一の後ろに立つ。

「櫻木隊員とお会いできるとは、光栄です。」

誠一が、光太に頭を下げた。

光太は誠一の匂いを嗅ぐ。

「君は、スマと一緒だね。」

「はい?」と、誠一が驚いた顔をする。

「愛のない関係に縛られて生きている。体だけの関係に縛られて生きている。」

誠一が下を向いた。

「それでも生きる意味はあるよ。」と、光太は誠一に微笑んだ。


「もし生まれ変わるなら、ビショップ・ストーンの担い手になりたいな。」

奈々が「どうして?」と、誠一に聞く。

「そうしたら、過去を許すことができるだろう。傷ついた心が癒えれば、奈々のことを受け入れることもできるだろう。」

奈々が首を横に振った。

「心の傷は、自分とどう向き合うかによるよ。」

奈々が銃を撃つと、誠一が白い光となって消えていった。

「ありがとう。」


真理子が龍雅を強く抱きしめる。

「迎えが来たな。」

真理子が「本当に勝手な人。」と、龍雅の頬にキスをした。

「俺のことを憎んでほしい。」

真理子が「バカな男。」と、龍雅の唇を奪う。

龍雅の背中に銃を押しつける真理子。

「それでいい。」

龍雅が真理子に笑いかけると、銃声がして白い光となって消えていった。


戦艦グリーンは、巨大化した冴島を確認する。

「まったく次から次へと。」と、隆がブリッジで状況を見守る。

「出撃準備は整いました。」と、冷が報告する。

「これが最後の戦いになるな。」と、陵が冷を見る。

連が冷のトゥーリングを目で確認する。

蒼太が「僕たちの未来は、僕たちが守る。」と、隆に言った。

「ああ。」と、隆が答えた。

雷が「示度博士の後始末を始めよう。」と、席に着いた。


食堂にいる潤と章。

「出撃するみたいです。」と、潤が章に言った。

章が「美佳はこれでよかったのか?」と、問う。


美佳が戦艦グリーンに戻ってきた時。

章が美佳の手を握る。

「美佳。どうしましたか?」

冷が美佳の姿を見て、冷たい言葉をかけた。

「私も戦艦グリーンで戦う。」

「戦艦グリーンに戻ったら、また人を撃たなければならないのよ。」

「それでも、戦艦グリーンを見守る義務が、私にはあるから。」

美佳の決意に、冷は「分かりました。」と、承諾した。

「ありがとう。冷。」

「今は人手が多い方がいいわ。それに戦うことに迷いがないなら、美佳は戦力になる。」

陵が「おかえりなさい。」と、美佳に言った。

「ただいま。」というと、定位置に美佳が座った。


美佳は「これが最後の戦いになるような気がする。」と、答えた。

章が「だから、戦うのか?」と、改めて問う。

潤が「僕たちの戦いのケジメをつけにいきましょう。」と、美佳に笑った。


レッドスターが東京の上空に到着した。

巨大化した冴島が、レッドスターを拒む。

レッドスターに目がけて、白い量産型ナゴヤが突撃する。

「僕たちのことを、拒絶するつもりだ。」

里桜が、白い量産型ナゴヤに攻撃する。

「どうして、たくさんの自分がいるんだ。」


優子と真理と敦子と香奈が、東京連合基地の最下層に到着する。

「貴方たちが、ここにいるということは。」と、莉久が笑った。

理恵子と学図が、莉久の前に現れた。

「お疲れ様でした。」と、莉久が二人をねぎらった。

「この世界を犠牲にして、好きな人に会いたいなんて、身勝手すぎる。」

優子が、莉久に銃口を向ける。

「そうかしら。貴方だって、彼ともう一度会えるなら、他人を犠牲にしても、その願いを叶えるでしょ。」

敦子が「会いたい。会いたいけど、ここにいる仲間も大切にしたいと思う。」と、莉久に答える。そして、敦子も莉久に銃口を向けた。

「結局、操り人形だったってことですね。」と、理恵子が悲しそうな顔をした。

「莉久様の思い通りにはなりません。」と、学図が莉久を睨みつけた。

莉久が23歳に化けた自分の姿を見る。

「駿と再会する準備はできたのに、私の知る駿には会えていない。」

真理が「遠藤代表が、貴方のもとめた駿ではなかったということですか。」と、問う。

「ええ。彼が私の知る三田 駿だと信じていたのに。」と、莉久が答えた。

香奈が「貴方の知る駿は、どこにいるんですか?」と、問う。

「分からない。私の運命は、貴方たちと同じようです。」

莉久が優子に微笑んだ。

学図が莉久の前に、一歩進む。

「私はここまでのようです。さあ、撃ちなさい。」

莉久が理恵子と目が合う。莉久は何かを目で伝えようとしていた。

銃声がすると、白い手が莉久の前に現れる。

「どうして、貴方が。」

莉久の周りが白くなり、異空間に繋がった。

「貴方も、三田駿だったんですね。」

冴島が莉久に微笑んだ。

「不完全な記憶で転生した。三田駿の呪いを受けた一人だ。」

「私も同じような者です。」

冴島が懐中時計を見せた。

莉久が動揺して、言葉を失った。

「ありがとう。」と、莉久が涙を流した。

「記憶の消失がなければ、この世界で幸せになれたかもしれなかったな。」

莉久が首を横に振った。

「私でなかったのは残念だけど、私と同じように愛した人がいて良かった。」

「次こそは、君を迎えにいくよ。」

冴島と莉久の手が触れる。

莉久が地面に倒れ込むと、白い光となっていく。

「ありがとうございます。」と、莉久が学図に礼を言った。

「撃ったのは、私ではないです。」

奥から慎吾が現れ「撃ったのは、僕です。」と、言った。

「そうですか。私は先にいきます。それぞれの幸せにたどり着いてください。」

莉久が所持していた魔法石が白い光を放つと、光となって散っていた。

理恵子が「身勝手な事を。」と、言葉を漏らした。


里桜の前に、白い莉久が現れた。

「どうして、たくさんの駿がいるか。それは、幾度となく続いた兄弟の物語が、完結しなかったから。」

里桜が「何?」と、戸惑っている。

「彼らは何度も、何度も、世界のために戦いました。しかし、物語の結末にはたどり着かなかった。」

莉久が里桜の頬に手を添える。

「私は、物語の結末にたどり着けました。ありがとう。」

莉久が消えていく。

「僕もお別れの時間かな。」

里桜が自分の胸に、駿の手を寄せる。

「僕は、異世界の人間ではないんだ。」

駿が「里桜。申し訳ない。里桜には里桜の生きる道があるのに。」と、謝った。

「いや。これが運命だからいいんだよ。」

里桜が駿の体を寄せる。

「レッドスター。あとは、駿のこと、頼むね。」

里桜の手が駿の胸の中に融合していく。

駿と里桜の体が重なっていく。

駿の中に、里桜の記憶が入ってくる。

「文化祭。俺もやってみたかったな。」

里桜が駿に微笑む。

「意外と大変だよ。みんな、やる気がないから。」

「そういうのも青春だろ?」

「そうだね。」と、里桜が笑った。

駿の体に里桜が完全に溶け込むと、里桜の姿はいなくなった。

レッドスターの機体が赤く光る。


「戦艦グリーンよりは、先に到着できたか。」

駿が東京連合基地の最下層に急いだ。

「社長出勤ですか。」と、学図が駿に声をかけた。

「この状況で嫌味をいうのか。光太は、ここにいないのか?」

「ここにはいません。」と、優子が答える。

駿が困った顔をした。

レッドスターが魔法陣を描く。

「しばらく、君たちはそこにいるといい。」と、駿が告げる。

白い霧のようなものが現れ始める。

「あまり時間はないようです。」と、理恵子が言った。

「ああ。分かった。」

レッドスターが浮上して、基地を捜索し始める。

レッドスターの内部に、光太の鼻歌が聞こえる。

「光太の歌。近いのか。」

駿が目を閉じると、光太に誘われるようにレッドスターが動き始める。

「レッドスターが導いてくれるのか。」

レッドスターは、あたり一面を水槽のような物がある部屋にたどり着く。

「ここは。」と、駿が足を止める。

「待っていたよ。」と、光太が駿に微笑みかける。

駿がレッドスターから飛び降りると、光太の前に立った。

「その様子だと。すでに里桜との融合はすませているんだね。」

駿が光太に頷いてみせる。そして、駿が光太の頬に触れる。

光太の記憶が駿の中に入り込んでいく。

スマとの記憶が絶え間なく流れる。

「スマのこと。ありがとう。」

「いや。僕がやり残したことだから。」

光太が駿を抱き寄せる。

「君はすべてのヒトを幸せに導いてほしい。」


レッドスターが、巨大化した冴島の前に立った。

「遠藤代表と冴島は、原形をとどめていないか。」

レッドスターに、ファーストシールドが向かってくる。

「召喚魔法を利用して、神に近しい姿へと変貌を遂げたか。」

フリースターが、レッドスターに共鳴を始める。

巨大化した冴島が、魔力が不足して苦しみ始める。

レッドスターから、ピンク色の魔力が放たれ、冴島を包み込む。

巨大化した冴島が、ピンク色の粒となっていく。


「ここまでだな。」と、冴島の声がする。

「もしかして、君も。」

「あとは、君に任せる。」

駿が冴島の胸を強く敲いた。

冴島の記憶が、駿の中に入り込んでいく。

「自分を傷つける道ばかり、どうして選んだ。」

冴島が駿の手を取った。

「ヒトを傷つけることしか、私にはできなかった。自分の願望をかなえることが、唯一の幸せだった。」

「結局、異世界に来ても、同じだったな。」と、勇児が笑っている。

「どういう意味だ?」と、駿が聞く。

「結局、冷を幸せにはできなかった。」と、勇児が明後日の方向を見る。

「結末が分かっていたから、都合の良い女を抱いていたのかもな。」と、冴島が笑う。

勇児が自ら剣を創造して「後悔はない。」と言うと、胸に突き刺した。

「自分を維持するのも限界だ。さようなら。」

冴島も自ら剣を創造して、胸に突き刺した。

巨大化した冴島が、ピンク色の光となって、雪のように散っていった。

フリースターから注がれる魔力に耐えられなくなり、レッドスターが巨大化していく。

ワイズストーンが緑色に光ると、世界にある武器が浮上し、魔力により白く浄化されていく。

「レッドスターの制御が効かない。これが目的だったのか。」


クイーンが保持している魔法石が、緑色の光を放つ。

「私の魔法石を、どうしようというの。」

キングが「レッドスターに呼ばれているのか。」と、言った。

クイーンが魔法石をギュッと握りしめる。

魔法席に触れる手が、緑色に光り始める。

「私の大切な宝石はわたさない。」

「クイーン。止める方が良い。」

キングがクイーンから魔法石を奪おうとする。

キングの手がクイーンの手に触れると、緑色の光と化した。

「どうなっているの?」

クイーンの体が緑色の光に化けていく。

「私たちの運命もここまでということだ。」

キングがクイーンを抱き寄せる。

「キング。やめて。貴方まで巻き込んでしまう。」

「いつものことだろう。」

キングの体が緑色の光に化けていく。

「戦わずして散るのも悪くない。」と、キングが高笑いし始める。

「キング。次もわがままを聞きなさいよ。」と、クイーンも高笑いした。

緑色の光が、空へと還っていった。


戦艦グリーンが東京上空に到着する。

レッドスターが魔力を放出し、兵器を浮遊させ、白く浸食していく。


連が部屋に戻っていくのを見かけ、冷が部屋に入る。

「ごめんなさい。」と、冷が連の背中に手を置く。

「いや。ありがとう。」と、連が振り返って、冷を抱き寄せる。

しばらく、無言の二人がいる。

「いや。変だな。」と、連が顔を背ける。

「・・・はい。」と、冷が返事をした。

連が冷の体を遠のける。

「さあ、頑張ろう。」

「はい。頑張ります。」


隆が格納庫に向かって歩いている。

蒼太が格納庫の手前で待っていた。

「後は頼みます。」と、蒼太が隆に声をかける。

「ああ。大丈夫だ。」と、隆がいつものように返事をした。

「親友っていえる奴ができて、よかった。」

隆が蒼太にそう言うと、格納庫に走った。


雷が美佳と廊下ですれ違う。

雷がペットボトルを、美佳に投げた。

「お疲れ様。」と、雷が声をかけた。

美佳が「ありがとう。」と、言葉を返した。

雷と美佳の目が合う。

「私、もう大丈夫だから。」と、美佳が答えた。

雷が「ああ。」と、美佳に笑った。

「正直、ここまで生き残れるなんて、奇跡かな。」

美佳が鼻で笑って見せた。


スマと潤が甲板で空を見ていた。

「兄さんのことを、迎えに行く。」と、スマが潤に告げる。

「これが最後の戦いですね。」と、潤がスマに笑って見せた。

スマと潤は、何かに気がついているようだった。

「本当に最後の戦いになるんだね。」と、スマが潤に手を差し出した。

「そうみたいです。」と、潤がスマの手を握る。

潤が「随分、長い間。一緒に居たような気がする。」と、スマの目を見た。

「そうだね。あんまり話すことなかったけどね。」

「そういうことは、言わないでください。」と、潤が苦笑いした。

「潤は隆と一緒にいることが普通だからね。双子だし。羨ましかったよ。」

「今回は、バラバラに暮らしてたけどね。」

スマと潤が大笑いした。

「同じようで、同じじゃない物語の繰り返し。けど、最後かな。」

スマが淋しそうな顔をした。

「スマと会えるのも、最後かもね。」

潤が悲しそうな顔をした。


章の部屋に、美佳が入ってきた。

「仮眠でもしてるの?」と、美佳が声をかける。

章が「いや。ちょっと、捜し物。」と、答える。

章が美佳に目を合わせる。

「あのさ。もし願いが叶うなら、普通に商売やって、子供がいて、それで。」

「平凡って、幸せだったんだなって思えたらいいね。」と、美佳が答えた。

章が「そうだよ。」と、間髪入れずに言った。


格納庫に姿を見せたのは、潤だった。

ベリーショートに手を置くと、潤は深呼吸した。

隆が潤の後ろに立つ。

「出撃するか?」と、隆が声をかける。

「突撃するしかありません。」と、潤が答える。

「そうだな。」と、隆が返事をした。

二人が服を脱ぎ始める。

潤が改めて「いろいろ、教えてくれてありがとう。」と、言った。

隆が「当たり前だろう。兄貴なんだから。」と、照れて見せた。

「別々の時を過ごすなんて、今は不思議に思う。」と、潤が隆を見る。

「そうだな。」と、隆が頷いた。

潤が隆の手を握った。

「兄さんを迎えに行こう。」と、潤が隆の手をギュッと握った。

ベリーショートに乗り込むと、魔力が溢れ出る。

「これが最後の戦いです。ベリーショート。出撃します。」

「正義のために。ベリーショート。出撃します。」


ベリーショートが、レッドスターの前で静止する。

「どこにいるんだ。兄さん。」

隆の呼びかけに答えるように、レッドスターが光を放つ。

レッドスターがベリーショートを呑み込む。


「おかえりなさい。」と、駿が隆と潤に答える。

「ただいま。」と、駿に返事をする。


ベリーショートの胸部から、マジックストーンが浮上していく。

マジックストーンが魔力を放つと、戦艦グリーンが白く腐敗していく。

理恵子たちを守る魔方陣が薄くなっていく。


理恵子が「ここまでね。」と、学図に笑って見せた。

「そのようだな。」と、学図も理恵子に笑う。

理恵子が学図の手を取る。

「ずっと、共に戦ってくれて、ありがとう。」

学図が「ありがとう」と答えると、二人は白い光となって空に散っていった。

頭上から万偉人が現れ、優子と敦子が戸惑っていた。

優子は「遅い!!」と叫び、敦子は「どうして!!」と、言葉を漏らした。

「お迎えだ。」

万偉人が優子を強く抱きしめると、優子は白い光となって空に散った。

「最後に会えて、良かった。」

万偉人が敦子の頬を触ると、敦子は白い光となって空に散った。

真理と香奈は恐怖を感じて、互いに体を寄せる。

「二人もありがとう。」

万偉人は恐怖する二人に近づき、抱き寄せると、二人も白い光となって散った。


「人から愛される人生で、本望だよ。ありがとう。三田 駿。」

万偉人が塵となって、消えていった。


スマがベリーショートの前で静止する。

スマが「始まりと終わり」と、言った。


戦艦グリーンが白く浸食されていく。

冷が「このままでは、戦艦を維持できない。」と、苦しそうにする。

章が「スマを見送ることができただけでも、良かっただろ。」と、声を張った。

美佳は「そうだね。これが、私たちの運命。ありがとう。兄弟。」と、笑った。

冷の前に、莉久の幻が現れる。

「貴方は幸せになりなさい。」

莉久が冷の姿に変わり、莉久が冷に手を伸ばす。

陵が莉久の手を取ると「最後の最後まで、こんな運命か。」と言うと、白い光となって散った。連が冷に近づく、冷が連の手を取ろうとする。

「離れ離れになっても、いつも一緒です。」

冷が「はい。」と答えると、二人は白い光となって散っていった。

章と美佳が目を見合わせると、美佳はただ笑った。

章が頷くと、二人もまた白い光となって散っていった。

雷は、目の前に現れた美佳の幻影に手を触れ、白い光となって散った。

戦艦グリーンが白い光となった。その光が、レッドスターの周りを囲む。


レッドスターに突撃するスカイブルーがいた。


隆と潤が目を覚ますと、宇宙のような空間にいる。

二人がはめたミサンガが光っていた。

互いの居場所を知らせるかのように、心地よい光を放つ。

隆と潤がかすむ視界の中で、手を取り合う。

駿が隆と潤を見て、微笑む。

「俺は、繰り返される時間から開放されることはない。」

潤が「理由は分からないけど、駿兄さんを救いたい。」と、駿に手を伸ばす。

「これも繰り返される儀式の一つでしかないんだ。」

駿が悲しそうな顔をした。

隆が「俺は兄さんを許さない。身勝手だ。」と、駿に手を伸ばした。

「人は幾度と、人を拒絶して、戦いを続けてきた。人殺しの道具を、幾度となく開発し続けてきた。そして、開発の終着地は、人類の融合だった。」

隆は「他人を自分とすることで、戦いを収束させた。」と、下を向いた。

潤が「けど、他人を認識できるから、僕は隆と一緒に居たいって思えた。」と、駿に答えた。

「そうだな。ありがとう。」

駿がワイズストーンを光らせると、マジックストーンが共鳴を始める。

隆が「俺は、駿兄さんを認めない。」と、怒鳴る。

「一緒にいられた時間が少なかったかな。」と、駿が呟く。

潤が「止めてください。これ以上は、兄さんが。」と、駿に叫んだ。

「これでいいんだ。二人は幸せになってくれ。」

駿がにっこりと笑った。


教室の座席で、居眠りをする隆。

「おい、そこ。起きなさい。」

隆が先生に怒られる。

隆があくびをしながら、体を起こす。

「隆。まずいよ。」と、潤が小さい声で隆に言った。

隆が黒板に書かれた問題を見て、少し考えている。

「先生。それは・・・」と、簡単に答えて見せた。

「ああ、正解だ。」

隆が潤を見て笑った。

授業が終わると、隆が潤に近づく。

「なんか、悪い夢を見てた。」

潤が「どんな夢?」と聞くと、隆が笑った。

「ロボットアニメみたい夢。」

竹内たけうち 太郎たろうが、潤に近づく。

「居眠り、朝練が激しすぎるからじゃないの?」

新田にった つむぎが、潤の後ろに立つ。

「大会が近いのは分かるけど、無理したらダメだよ。」

隆が「いや。昨日の夜に、変な夢を見て、寝不足なだけ。」と、体を伸ばした。

杏が「そういえば、私も変な夢を見た。魔法使いになる夢。」と、不思議な顔をした。

湊が「アニメの見過ぎなんじゃないの?」と、みんなを笑った。

一華が「今度、新しいアニメのネタにしたいから、教えてください。その悪夢。」と、目をキラキラさせて仲間に入ってきた。

律は「杏。奇遇だね。自分も魔法使いになる夢を見たよ。」と、杏に微笑んだ。

隣のクラスの桜宮さくらみや 蒼太そうたが、にぎやかな教室に入ってきた。

「面白そうだね。ロボットアニメの話しなら、聞かせて欲しいです。」

潤が「悪夢の話しが、面白い話しに変わってしまってますね。」と、苦笑いした。

隆が教室の窓から、雲を見る。

「何か、大切なモノを忘れてしまったような気がする。」

隆と潤の足にミサンガが着けられている。

記憶の奥底にある誰かの無事を、隆は願っていた。


スマが駿の前に現れる。

「今回は、全然、一緒に居られなかったな。」

駿がスマに微笑みかける。

「今回じゃなくて、いつものことだよ。」

スマが駿に微笑み返した。

「スマにはいつもイヤな思いを繰り返させてしまって、悪かった。」

スマが首を横に振る。

「けど、それを乗り越えることで、人との絆を見つけることが出来た。」

遠くから光太がスマを見つける。

「俺は兄貴失格だな。」と、駿が下を向く。

「それもいつものことだよ。」と、スマが笑った。

光太が二人に近づく。

「今度こそ、スマには普通の少年の生活を営んで欲しい。」

スマが「普通って、なんなんだろうね。」と、光太に笑った。

光太は「平凡って、ことさ。」と、答える。

「僕は平凡でなくてもよかったんだ。誰かに愛されていれば。」

光太の体の傷が消えていく。

「優しく抱きしめてくれる手が、愛おしかっただけなんだ。」

スマが光太と駿の手を握る。

駿がスマを抱き寄せる。

「いつも、自分のために、いろいろありがとう。」

「それは僕のためでもあったんだ。」

スマが駿の手を強く握る。


「はい、撮影に入ってください。」

スマがスタッフに声をかけられて、目を覚ました。

「え。なんか、変な夢見てた。」

スマは撮影の疲れで椅子に座りながら、寝ていた。

光太が「台本はきちんと読んでいるよね?」と、スマに聞く。

「えっと。あ、はい。」

光太が歯ブラシを手渡す。

「次は、キスシーンだから。」

「これ、そういうドラマだっけ?」

光太が苦笑いした。

「ネット配信のボーイズラブドラマ。」

「そうだったよね。」

スマが椅子から立ち上がると、洗面台に向かって行った。

洗面台に向かう廊下には、スマと光太のポスターが貼ってあった。

「そっか。僕、芸能人になったんだった。」

洗面台に着くと、目の前の鏡で、自分の風貌を確認する。

「さっきの夢。いやにリアルだったな。」

歯ブラシを咥えながら、長い夢を思い出していた。

光太が洗面所に入る。

「キスしたことあるんだよね?」と、光太が問う。

「どうだったかな。」と、スマがはぐらかす。

「キスしたことがなかったとしたら、申し訳ない。ファーストキスを奪うことになってしまうから。」

光太がスマを困らせて見せた。

「さあ、撮影に行きましょう!!」と、スマが洗面台から離れた。

撮影が始めると、スマと光太がキスをする。

「なんとなく、初めてじゃない気がする。」

「僕のことが好きってことかな?」と、光太が切り返す。

「どうなんだろうね。」

スマは思い出せない何かに寂しさを感じた。


駿がスマの新たな日常を微笑みながら、見守っていた。

「スマの普通は、結局は普通じゃなかったな。」

誰もいない空間で、駿は笑っていた。


新宿の昭和の匂いの漂う繁華街。

「いらっしゃい。」と、龍雅が通行人に声をかける。

陽が「居酒屋。お探しですか?」と、龍雅の後に声をかけた。

誠一が割り込むように「うちのお店はいかがですか?」と、最後に声をかける。

奈々が「うちが一番、楽しいお店ですよ。」と、負けずと声をかける。

通行人が困った顔をしていた。

恵利が「騒がしいお店が苦手なら、うちのお店がおすすめですよ。」と、通行人の前をふさいだ。陽と恵利が目を合わせた。

着物姿の真理子が「接待などでのご利用でしたら、うちがよろしいかと。」と、軽く会釈した。

「個室とかありますか?」と、通行人が聞く。

真理子が「ええ。もちろん。大丈夫ですよ。離れでしたら、ゆったりと飲めますよ。」と、笑って見せた。

通行人が頷くと、真理子と龍雅が自分の店に招き入れる。

「くそぉ。やられた。」と、奈々が悔しそうな顔をする。

恵利は「年齢層で不利でした。」と、小言を零しながら、陽と店に戻っていった。

お店が閉まり始めると、店から飛び出てくる龍雄。

「どこの女。殺してやる。」と、真理子が龍雄に包丁を持って迫りよる。

「おまえには関係ないだろ。」と、龍雄が強気に言い返す。

奈々と誠一が店から飛び出す。

奈々が「あなたもよ!!」と、誠一に大根をもって迫りよる。

「いやぁ。勘違いだと思うよ。」と、誠一は奈々から逃げる。

陽が店から飛び出してくると、店から皿などが投げられる。

恵利が「どうして女癖が治らないかな。」と、陽を睨み付ける。

陽は「いや。」と、苦笑いして見せた。

真理子と奈々と恵利が「あんたたちは!!」と、大声で三人を叱った。


レッドスターのアニメ映像が流れる。

学図が「僕が君たちを守ってみせる」と、台詞を言う。

理恵子が「戦艦グリーン。主砲一斉発射」と、画に言葉を当てる。

アテレコを終えると、二人がスタジオから出てきた。

「お疲れ様。いやぁ。今日も良かったよ。」

理恵子が「ありがとうございます。」と、頭を下げる。

「イベントの準備は順調ですか?」

学図が「はい。特に問題ありません。」と、笑顔で返す。

「やっぱりイイね。売れっ子の声優さんは。」

「チケット販売も順調だしね。やりがいがある。」

学図と理恵子が目を見合わせた。

「失礼します。」と、光太とスマがスタジオに入る。

「悪いね。わざわざスタジオまで来てもらって。」

スタッフが二人を出迎える。

「新しいキャストの方ですか?」と、学図が二人を見る。

光太とスマが軽く会釈する。


渋谷の貸家のオフィスの一角。

香奈が「すいません。領収書があがっていないのですが。」と、優子と伝える。

「領収書ですか。えっと。」と、優子が机を探す。

茂之が「私が預かっているよ。」と、優子に領収書を手渡した。

「部長。すいません。」

香奈が領収書を預かると「ありがとうございました。」と、経理部に戻っていく。

真理と敦子が「戻りました。」と、撮影から戻ってきた。

「お疲れ様。今日の撮影はどうだった?」と、優子が話しかける。

「熱さが厳しくて大変。」と、敦子が答える。

真理は「特に問題ありません。」と、淡々と答えた。

祐介が手土産を持って、オフィスに現れる。

「支店長。お疲れ様です。」と、敦子が頭を下げる。

「久しぶりの東京出張だったから、顔を出させてもらったよ。」

祐介がオフィスを見渡した。

真理が「いつもありがとうございます。」と、手土産を受け取った。


小学校の教室にいる美佳。

帰路に就く学生を見送る美佳。

グラウンドにいる章は、サッカーを小学生に指導している。

章と美佳の手には、結婚指輪が光っていた。


冷は夕ご飯の準備をしている。

連が「ただいま。」と帰宅する。

「おかえりなさい。」と、冷が返事をする。

「頼まれてたトイレットペーパー。買ってきたよ。」

「ありがとう。」

「今日は大変だったよ。」

冷がお茶を入れて、コタツに置く。

「それはご苦労様。」と、冷が微笑んだ。


「普通の日常を過ごせて良かった」


スマが「僕たちは幸せだよ。」と、駿に笑いかけた。

潤は「変わらない日々が幸せだよ。」と、駿の手を取った。

隆が「でも、駿にぃがいない世界はイヤだ。」と、駿の目を見た。

「何歳になっても、結局、自分は変われなかった。」

スマが「同じ事の繰り返しは疲れるよね。」と、優しく声をかける。

隆が「でも、何度でも乗り越えてきたじゃないか。」と、目で訴える。

潤は「たくさんの犠牲のうえに成り立つ生活が怖いですか。」と、強く手を握る。

「もう疲れた。」

スマが「それでも、未来を信じたい。」と、もう一度、微笑む。

隆が「たまに休んで、もう一度、立ち上がれ」と、声を張った。

潤が「それでも、駿にぃを必要とする人はいるよ。」と、駿の手を引っ張る。

「ありがとう。」


渋谷の雑踏。

スマが「いや。どうなるんだろうね。機動戦艦グリーン。」と言いながら、光太を見た。

光太が「なんでもいいから、出演したい。」と、答えた。

信号が青に変わる。

反対側から「来週のライブ。楽しみなんだよな。」と、隆が嬉しそうに話す。

潤が「僕も楽しみです。」と、楽しそうにしている。

隆と潤がスマとすれ違うと、肩がふれる。

何かが落ちる音がした。

「すいません。」と、スマが謝る。

隆が「こちらこそ。」と言うと、静止する。

潤とスマの目が合う。

駿が「落としましたよ。」と、スマフォを差し出す。

四人の目が合う。


「また会えたね。」



***


読み終わったら、聞いてもらいたい曲


『フリージア』Uru


***


本作品の本編は「シン・ブラザー大戦」です。


https://ncode.syosetu.com/n4978ht/


***


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