Chapter 1: Encounter and
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本作品について、下記の順番で読むことが可能です。
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学園モノ(恋愛物語)を読みたい方
第3章→第1章→第2章と、お読みください。
その他の方
第1章から順次、お読みください。
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「今度は完結させてね、駿くん。」
湖に月が輝いている。
湖面に青い髪の女性の姿が映る。
空に浮く厳つい機械。
科学と魔法の力により創造された戦艦。
人間は、何度も科学と魔法の力を使い、傷つけあう存在になっている。
「おはよう!!」
茶色の髪の元気のある少女。
「朝から元気すぎる。美佳は。」
「冷は元気がなさすぎます。」
青い髪の女性は、鷹田 冷という。
明るい少女は、日野 美佳と呼ばれている。
「おはよう。」
あくびをしながら挨拶をする三田 駿。
「新しいクルーのお出迎えの準備は終わってるのか?」
「問題ない。」と、冷が駿に返事をする。
豊橋に到着すると、武装された街が姿を現す。
名古屋から浜松は、名古屋共和国の領地となっている。
魔法使いがエネルギーを生産し、供給している。
人々の夢や希望がエネルギーとなり、街の光となっている。
街の入り口には、物騒な砲台がこちらを睨む。
美佳は、薬指にする指輪を触っていた。
「こちらは、戦艦グリーン。所属は中立。対応をお願い致します。」
「話は聞いている。入港を許可する。」
魔法の壁がなくなると、圧出した風が戦艦を襲い、左右に揺れる。
「これはまた。たいそうな魔法バリアなこと。」
美佳は眉間にしわをよせていた。
指定された場所に戦艦を格納すると、ロボットが物資の補給を始める。
「さてと。お出迎えに行きますか。」
駿は一人で街の外れに向かう。
緑色を探すのは難しく、灰色・茶色があちらこちらを埋めている。
大型ビジョンに映る美しい少女、菊川キララがほほ笑んでいた。
「お疲れの後の一杯は、名古屋ビール。」
「富裕層の娯楽か・・・」と、駿が呟いた。
「ようやく、引き取り手が決まった。」
「・・・はい。」
「もっと、明るく愛想よくしてくれよ。」
彼はスマイル・シンプルと呼ばれる。通称はスマという。
金色の髪の毛で、細身のモデルのようなスタイルだが、それとは対照的に影がありそうだった。隣の小太りの男は、片手にお酒を持ちながら、作業をしていた。
「ごめんください。」
玄関に駿が現れる。
「悪いね。生活が苦しくて、買い取ってくれると助かるんだよ。」
駿が持参していた金を差し出すと、男の眼の色が変わった。
「これでよろしいですか。」
駿の口調が鋭くなった。男は頷くと、スマを差し出した。
駿がスマの手を取ると、家から出て行った。
「大丈夫か?」
「ええ・・・貴方みたいな若い方が、どうして人身売買なんて。」
「記憶がないのか。」
駿が不思議そうな顔で、スマを見た。
スマにネックレスを付けると、駿は笑った。
「強奪した方が良かったか?」
「強奪って、そんなことしたら大変ですよ。」
機械音がすると、ヒト型をしたマシーンが現れた。
かなり大きな格闘兵器で、二人の行き先をふさいだ。
「だから、私は最初から反対だったんだよね。」
美佳が苦笑いしながら、駿を映すモニターを指さした。
「問題ありますね。」
冷と美佳は、ヒト型兵器を格納庫に進む。
「それにしても、操縦できないスカイブルーだけあってもね。」
美佳が灰色のヒト型兵器を指差した。
「発進させます。」と、冷が呟く。
「何、言ってるの?旧型で、正式なパイロットもいないのに。」
「パイロットの補充、完了しました。」
冷がスマを指差すと、美佳が声をあげた。
東京の聖なる力が集まるキラキラした協会のような場所に、赤いヒト型兵器が幽閉されている。その機体の名前は、レッドスターという。レッドスターの目が光る。
「新たな物語の始まりとなりますか・・・」
葉鳥 莉久が、レッドスターを睨みつけていた。
ファーストソードが胸部から背部まで刺され、赤い霧が剣に纏わりついて、消えていった。
スカイブルーの目が光り、スマに目掛けて飛んでいく。
スマは「何かが・・・来る。」と、スカイブルーの気配を感じていた。
「とりあえず、時間稼ぎか。」
駿が、大きな魔法の壁を創造して、スマを守る。
ヒト型兵器アキンドは、銃を構えて、スマを狙い打とうとする。
スマが「僕は、生きる価値なんてない人間。守られる価値はない。」と、投げやりになる。
駿は「生きる権利がない者など、いない。」と、スマに怒る。
スマが「このままだと、貴方の身がもたない。」と、駿を気遣う。
「それでも、守らないとならないものはあるんだ。」
「レッドスター。俺の相棒。どこに行ってしまったんだ。俺の物語には、あの機体が必要だというのに。それとも、俺の物語ではなくなってしまったのか。答えてくれ。」
俺は、レッドスターの気配を感じていた。
遥か遠くにある相棒の気配を感じると、嬉しさで笑っていた。
レッドスターの悲鳴を感じると、不思議と魔力が溢れてきた。
あの機体は、まだ自分を必要としているんだと、確信した。
「どうして、笑っているんですか?」と、スマが質問した。
「いや、まだ見たことない相棒に呼ばれているような気がしてさ。」
魔法の壁が厚さを増していく、銃弾を弾き返す。
スカイブルーが上空に姿を見せると、スマを吸い上げていく。
「ちょっと、これは。」と、スマが動揺してみせる。
駿が嬉しそうに「スカイブルー。旧型機ではあるが・・・伝説の機体でもある。」と、言った。
兵士たちがうろたえている。
「骨董品だ!!」
「しかし、本来、動くような代物ではないかと。」
ヒト型兵器アキンドが、一斉にスマを狙い撃ちするが、銃弾が消失していく。
冷がスカイブルーの状況を確認している。
「整合率20%。起動数値ギリギリというところです。」
「いや。まだ・・・」
スマがスカイブルーのコクピットに強制搭乗させられる。
スカイブルーが大きな声をあげる。
スマの服が消失し、コクピットの青い液体が体を覆う。
「僕は・・・」
「お帰りなさい」
「貴方は誰?」
スマは自然と目を閉じていた。
懐かしい匂いを感じた。
人の温もりを感じた。
けど、憎悪の念も感じた。
人間臭さを感じた。
「・・・ただいま。」
スカイブルーから青い光が天に向かって走った。
「スカイブルー。これより敵を撃退します。」
ヒト型兵器アキンドが、次から次へと撃退されていく。
名古屋共和国・第一艦隊、隊長 五十嵐 与吉が姿を見せた。
「今の時代に、骨董品が現るんか。」
副隊長 冴島 唐次郎が、出撃準備をしている。
「ブラックナゴヤ、出撃する。」
「副隊長、気合が入りすぎじゃな。」
ヒト型兵器アキンドとは、桁が違うスピードでブラックナゴヤが接近してくる。
「冴島氏の機体。警戒して下さい。」
スマが冷の指示に頷いて見せた。
冴島が「人の陣地で、好き勝手なことをやってくれるな。」と、スマに言い放つ。
「そちらには負けるけどな。ファイアーアロー!!」
ブラックナゴヤの装甲に火の矢が刺さるが、すぐに消火してしまった。
背後に備えているバズーカを構えるブラックナゴヤ。
「生身の人間が、我々に勝てるはずがないのだよ。」と、冴島が駿に攻撃をする。
「太陽より眩しいもの。光より速いもの。自然を見守る神々の力よ。我の力となりて、影たる存在を打ち消したまえ。ライトニングボム。」
駿の体から魔力が一点に集中すると、高エネルギーの丸い光が創造され、ブラックナゴヤに近づいていく。
「すべての忌まわしいものを、洗い流したまえ。ブルーウェーブ。」
スカイブルーから、大きな魔力の波が創造され、ブラックナゴヤに近づく。
「さあ、これでもくらえ。」
ブラックナゴヤが、ライトニングボムにバズーカを打つと、それらがぶつかり合い、大きな光となった。そして、ブルーウェーブがブラックナゴヤの機体を大きく、後退させた。
波が収まると、ブラックナゴヤの前には、何の姿もなくなっていた。
「引き際は鮮やかだな。」
博多から名古屋の方角を見る少年達がいた。
「花火にしては、すげぇな。」
「魔力の塊。魔力柱。」
松岡 潤は、その光に懐かしさを感じていた。
ふと、潤は涙をこぼしていた。
「泣いているのか?」
「なんでだろう。」
戦艦グリーンに、スカイブルーが格納される。
スマが、スカイブルーから降りると、駿が笑って見せた。
「ありがとう。」
「・・・いえ。」
スマを見て、冷が軽く会釈する。
「ようこそ。戦艦グリーンに。」
真々田 陵が、スマにバスタオルを投げた。
「搭乗スタイルが全裸というのは、問題だな。」
スマがバスタオルに包まる。
「照れたりしないんだ。」と、美佳が疑問に思った。
「別に、見られて減るものじゃないから。」
「まあまあ、美佳、疲れてるんだからさ。」
相澤 章が、入れ立ての珈琲を差し出した。
「・・・ありがとう。」
「各自持ち場に戻ってくれないか。すぐに戦闘になるだろ。どうせ。」
クルー達は、ため息をつきながら、散っていった。
「悪い奴らではないんだけど、騒がしくて悪いな。」
「気にならないから。」
「とりあえず、新しい部屋に招待するから、そこで休んでいてくれてかまわないから。」
「ありがとうございます。」
駿がスマを部屋に連れて行くと、スマは何も言わずに窓の外を見ていた。
「信じられない。冴島さん!!」
田崎 奈々(たざき なな)が大声で騒いでいる。
「副隊長と呼びなさい。」
「そうです。仕事とプライベートは使い分けなさい。」
須那 真理子が奈々を睨み付ける。
冴島の腰に手を回す宮崎 恵利。
「もう勤務時間はおしまい。冴島さん、洋服が欲しいんだけど。」
「ちょっと、私だって、欲しい。」
冴島は奈々から離れると、恵利の手を取った。
「約束をしている。悪いな。奈々。」
ドアが閉まり、二人が消えた。
「ちょっと。約束って!!」
「あんまり、しつこいと嫌われるわよ。」
真理子がため息をついていた。
「愛人だからって!!」
章の姿を探している美佳。
「見つけた!!」
入れ立ての珈琲も差し出す美佳。
「ありがとう。もう少しで終わるから。」
「じゃあ、待ってる。」
美佳は二人の時間を楽しんでいた。
「ところでさ。このヒト型兵器不足は、何とかならないのかな。」
「隊長の魔力が凄いからって、生身で戦うのは限界あるよね。」
「そうなんだよ。名古屋に入る前に調達しておくべきだったと思うよ。」
「生活用品の調達のために、ヒト型兵器をすべて売却しちゃったから、仕方ないっていえば仕方ないけど、問題はあるよね。」
「冷は、その辺は、どう考えてたんだか。」
「さあね。」
機械音がすると、章が手を止めた。
「俺の部屋、来る?」
「今日は、いいや。」
「そっか。」
スマが二人を見つけると、会釈した。
「あれ、新入りさん。迷子にでもなった?」
「スカイブルーのことを見たくなって。」
「あの骨董品をよく動かしたよ。」
「懐かしい感じがしたんです。」
「そっか・・・」
改めて、スマが二人をじっと見る。
「お二人って、付き合ってるんですね。」
「いや、何言ってるのよ。ねえ。」
美佳が必死にごまかそうとする。
「もう、笑わないでよ。」と、美佳が怒ってみせる。
「こういうのが、普通の生活なんですね。」
章はスマの心の奥底にある傷を感じていた。
「なにが普通とかは、分からないけど。必死に生きてる。」
「そうですね。生まれた場所によって、境遇は違っていて、その中で必死に生きているんですね。」
「・・・そうかもな。」
章はスマの言葉の意味深さに、下を向いてしまった。
「この奥にあるから、どうぞ。」
章がスカイブルーを案内すると、スマはそちらに歩いて行った。
スカイブルーの前に立つスマ。
「僕は、君のことを知っているような気がする。」
スカイブルーに搭乗した時のことを思い出していた。
包まれていくような感覚が、懐かしかった。
駿が「スカイブルーが気になるのか?」と、優しく声をかけてきた。
「懐かしいんです。なぜか。」
「そっか・・・」
「どうして、僕を買おうと思ったんですか?パイロット適性があったから?」
「この戦艦には君が必要だから。」
「どういう意味ですか?」
「そのままの意味だよ。」
駿が悲しそうな顔をして、スマに笑った。
「君のことを利用する意図はなかったんだけど、結果そうなってしまう。悪いね。」
「そういうの慣れてるから。」
駿がスマの言葉にハッとしてしまう。
駿がスマを後ろから強く抱きしめた。
「・・・ごめん。」
「どうして、謝るんですか。」
「どうしてだろうな。」
翌朝、冷が会議室にクルーの全員を集める。
「新しい作戦を提案します。」
章と陵がイヤな予感をしていた。
「岡崎城跡地にある施設に攻撃を仕掛け、ヒト型兵器を回収する。」
「そうなると、芽原沢から奇襲をかけるのかな?」
地域の地図を、陵がモニターに映す。
「そうです。」
「けど、ヒト型兵器は一機しかない。そんなこと不可能だろ。」
章が何を言っているのかと、呆れている。
「確かに、無理があるな。」と、駿が言葉を付け加えた。
「スマは、それでいいの?」
「命令があれば、それに従います。」
美佳の言葉を冷たく跳ね返した。
「ただ、ヒト型兵器を回収するっていっても、パイロットの輸送はどうするんだ?」
「スカイブルーに駿も搭乗してもらいます。」
「予想はしてたけど、そういう展開なのね。」
駿が苦笑いしていた。
「あの、ヒト型兵器に乗り換える際に、服が欲しいな。」
「そういう問題か!!」と、美佳が怒鳴る。
「ヒト型兵器を1機調達するのが目的ということかな、冷。」
「はい。陵は反対しますか。」
「コスパが悪いだろ。けど、現実的ではあるな。」
陵は賛成しがたいが、ほかに策もないかもしれないとも考えていた。
「乗り換え問題は、置いておいて、スカイブルーとの整合率は大幅に減少するはずだが。」
「それは問題ないはず。」
「私たちの知らない事を、冷は知っているんだ。」
美佳は、冷には開示されている何かを感じていた。
「全滅させられたら、すべての物資を回収する。無理なら、ヒト型兵器一機だけを回収する。そんな感じかな。まあ、仕方ないか。冷が言うことなら。」
冷の鋭い目が、駿に刺さっている。
「作戦は、本日1600に行います。」
「夕方なのね。準備がよろしいこと。」
駿がスマの手を取って、スカイブルーに向かった。
スカイブルーの前で、駿が服を脱ぎ始める。
「作戦の前に、練習したいから、頼む。」
スマが服を脱ぎ、コクピットに入る。
駿がスマの上に座るが、背丈の関係で、逆の方が操縦しやすそうだった。
「悪い。俺が椅子に座って、その上に、スマは座ってもらっていい?」
「・・・はい。」
コクピットに青い液体が投入され、二人の体を覆っていく。
駿が目を閉じて、集中している。
スマは言われるがまま、スカイブルーに心を開いていく。
スマの記憶が、駿に流れ込んでいく。
駿が声を上げて泣いた。
「誰にも知られたくない過去・・・」
「そうだな。人間は汚らわしいモノでもある。」
「自分の欲求のためなら、他人を傷つける。お金で解決しようとする。」
「人間の本質がそういうモノなら、滅亡してしまえばいいよな。」
「・・・はい。」
「でも、無償の愛を与えてくれるヒトも現れるから・・・信じて欲しい。ヒトを。」
駿の呼吸が上がり、苦しそうにしている。
「コクピットから出ますか?」
「いや、大丈夫。」
スマが駿の手をギュッと握る。
「よく分からないけど、スカイブルー。今は、僕たちに力を貸して欲しい。」
スカイブルーが正常に起動し始めた。
「整合率45%か。これならいけるか。」
「・・・はい。」
食堂にいる章と陵。
「隊長とあの少年の関係はいかに?」と、陵に問う。
「さあな。ただ、スカイブルーを二人で操縦できるとすれば、遺伝子レベルが近い可能性は高いな。」
「兄弟だとすれば、隠す理由はないと思うんだけどな。」
「まあ、詮索しても仕方ないだろ。」
「そうなんだけどさ。」
美佳が二人の姿を見つけると、手を振ってきた。
「美味しそうなランチ。」
「じゃあ、お邪魔のようだから。」
陵が席を立とうとすると、美佳が陵のトレーを手で押さえる。
「お邪魔じゃないから、どうぞ。」
「はいはい。」
「陵は、今回の作戦、どう思ってるの?」
「コスパが悪いとは感じている。」
「それだけ?」
「それだけとは?」
陵と美佳に、数秒間の沈黙が襲う。
「それだけならいいけど。」
「定時となります。作戦開始。」
戦艦グリーンの指揮を、冷が執る。
「スカイブルー。発進します。」
山岳部は、ガラクタの鉄くずばかりが散乱している。
都市計画のなれの果ての姿が広がっている。
「自然を破壊したなれの果てか。」
駿が心を痛めていると、軍事施設が現れる。
ヒト型兵器アキンドが、こちらを確認して攻撃を仕掛けてくる。
格納庫を発見すると、そのまわりにいるヒト型兵器に攻撃を集中する。
スカイブルーの特技であるブルーウェーブが、ヒト型兵器を押し流していく。
格納庫周辺のヒト型兵器が一瞬、退いた。
「今だな。」と、駿が号令をかけると、スカイブルーが突進していく。
格納庫の中に入ると、ヒト型兵器きしめんが姿を現した。
駿がコクピットから降り、ヒト型兵器きしめんのコクピットに入る。
「あんまり見るなよ。」
「・・・はい?」と、スマが空返事をした。
「やはり、物資不足ということかな。」
冴島達が、モニターでスカイブルーを確認している。
「今回は、私たちに任せてください。」
真理子が、ヒト型兵器に搭乗する準備をしている。
「ダーリンのためなら、命かけちゃいます。」
奈々も、真理子に負けずと、ヒト型兵器に搭乗している。
「そういうことを言って、副隊長を困らせないでください。」
恵利も、ヒト型兵器に搭乗していた。
「出撃!!」
「ラジャ!!」と、3機のヒト型兵器が飛び立っていった。
「だいたいの敵は、一掃しました。」
魔力の底が見えるスマ。
戦艦グリーンが、施設に接近する。
「主砲・一斉発射。残りのヒト型兵器を撃破します。」
「どうか、たくさん当たって!!」
「運次第のようなことは言って欲しくないですね。美佳。」
「陵の腕は信じてるからね。」
戦艦グリーンの直線を、鋭い光が走ると、ヒト型兵器が爆発して消滅していく。
「ところで、乗り心地はどう?」
「服を着たい。早く、任務を終えたい。」
駿が美佳に恨み節だった。
「こちらは、第一艦隊所属、須那 真理子である。」
「こちらは、戦艦グリーンです。」
「これより、戦艦グリーンの迎撃を行う。無条件降伏をする場合には、命は奪わない。」
「ありがとうございます。こちらに降伏の意思はありません。」
冷が真理子に対応すると、ヒト型兵器きしめんが遠距離から戦艦に攻撃を仕掛けてきた。
「きしめんは、遠距離攻撃を得意とするから、厄介です。」
陵が、駿とスマに敵の位置を送る。
「これより、回避行動に移る。」と、章が攻撃に備えている。
「了解。3機を撃破する。」
奈々が、駿の機体を捕捉する。
「さあ、機体の性能は互角。どちらがプレイヤーとして上か、はっきりするよね。」
遠距離砲を打つと、駿の機体を覆う魔力にぶつかる。
「魔力で機体の装甲をあげているのね。」
恵利が、駿の機体に近づこうとすると、スカイブルーが姿を現す。
「モニターに映らなかった。」
「これでおしまいです。」
スカイブルーが、魔力で創造した剣でヒト型兵器を襲う。
恵利の機体の、左腕が切り離される。
「魔法を使うなんて、厄介です。」
「恵利は退いて。」
「真理子。あとはお願い。」
スカイブルーの背後から、奈々のヒト型兵器がライフルを構えている。
「この距離なら。」
スカイブルーの機体が、左右に揺れる。
「この程度なら。」
スカイブルーが大きな波を創造し、奈々のヒト型兵器を押し返す。
「流れるプールじゃないんだから!!しかも、被弾!!」
駿のヒト型兵器が遠距離砲を放っていた。
「押し流される場所まで計算されてるなんて、エグい。」
「なかなか、腕が立ちますね。」
真理子が盾を前にして、攻撃に備えている。
「こちらは新都市大阪国の示度である。現在、桑名から名古屋を占領することを図っている。第一艦隊・隊長西成により、名古屋は我々に統治されることであろう。」
大阪から全回線に通知されている。
上空には桑名の映像が映されている。
ヒト型兵器連に登場する桧山 隆。
「我々の正義のために戦おう!!」
兵士達の歓声が沸き上がる。
「直ちに帰還せよ。」
冴島からの命令が、真理子と奈々に伝えられる。
「今から、良いところだっていうのに。」
「新都市大阪国の迎撃が優先です。」
ヒト型兵器きしめんの姿がなくなると、兵士達も退いていなくなった。
「お疲れ様でした。」
スマが駿に声をかけた。
駿はくしゃみをする。
「・・・寒い。スマの機体は、温度調整が自動にされるから、よかったよな。」
「あはは。笑わせないでください。」
「それにしても、早くヒト型兵器から降ろさせてくれ!!」
大阪軍事基地では、吹田 示度が事の成り行きを見守っていた。
「示度博士。このタイミングで、攻めに入るとは。」
「彼らには、未だ生き残ってもらわないとならんからな。」
「どのように情報を得られたのですか。」
「コントレーションの奴らに金をくれてやったよ。」
「あの謎の組織ですか。」
「ああ。奴らの計画と我々の計画は、通過点までは同じ儀式のようだからな。」
「しかしながら、我々の計画の進捗は遅れております。」
「シン東京連合が動けば、遅れは取り戻される。」
西宮 次郎は、面白くない顔をしていた。
ブラックナゴヤが新型機の応戦をする。
「こちらは冴島。新型機が3機とは。ずいぶんと本気のようだな。」
桜宮 蒼太が、ブラックナゴヤの背後に付く。
「ライフルを撃ち込めさえすれば。」
ブラックナゴヤが、遠隔操作された丸形の小型機を操り、ヒト型兵器堂島を狙い撃つ。
「厄介なモノを。」
ライフルを小型機に向け直す。
「このやろう!!」と、光化学サーベルで小型機を切り払う。
桧山 隆が、特攻をきめると、得意げな顔をした。
「隊長の機体は、機動性がいい。」
ヒト型兵器松風庵が、光化学シールドを展開し、ブラックナゴヤからの攻撃から身を守る。
黒光りがする光化学サーベルを備えると、ブラックナゴヤが突進してきた。
ヒト型兵器連が、前に出て受け止めようとした。
「さあ、正義を見せてみろ。」
「隊長機から落としてみせる。」
光化学シールドとブラックナゴヤがぶつかり合う。
ブラックナゴヤのエネルギーを一点に集中させ、シールドにヒビが入り始める。
「さあ、俺の出番だな。他の二機は退け。」
難波と蒼太は後退して、次の攻撃のチャンスを伺っている。
しかし、ヒト型兵器きしめんが近づき、応戦しなければならなくなった。
「正々堂々と勝負したいか。」
「力こそ正義なのだ!!」
光化学サーベルがぶつかり合い、白い光と黒い光が、お互いを消し合った。
「・・・子ども。隊長ではないのか。」
「子ども。子どもって、子どもで何が悪い。」
「世界を変えるのは、いつも子どもというのが、相場とでも言いたいのかな。」
冴島が鼻で笑う。
「笑うな!!」と、隆が一歩前に出る。
「幼いな。」
ブラックナゴヤの小型機から発せられた熱線が、ヒト型兵器連の足をかすめた。
「直撃とは、いかなかったか。」
「サーカス団みたいな奴だな!!」
一度、ブラックナゴヤが退き、状況を確認している。
「名古屋共和国の兵は、木曽川まで退け。」
「逃げるのか。」
「子守をしてるほど、暇ではない。」
ブラックナゴヤとヒト型兵器きしめんが、高速で名古屋方面に退く。
多数のヒト型兵器が、空を舞う。
「定刻となった。作戦を開始する。」
木曽川に沿って、大型バリアが展開される。
「あのぅ。これを打ち破るのは、難しいかと。」
田崎 慎吾が、立ちはだかる光の壁を舐めるように見る。
「卑怯な奴らだ。」と、腹を立てる隆。
「簡単にはやられてくれないですよ。」
蒼太が、パソコンを操作している。
「時間が解決してくれるかな。」と、難波 雷が余裕な顔をして見せた。
「申し訳ありませんでした。」
恵利が冴島に、頭を下げる。
「ヒト型兵器の改修には、どの程度の時間を要する?」
真理子が整備班に確認を取っている。
「恵利さん。貴方らしくない失態だな。子どもの相手も十分にできないとは。」
「言い訳はしません。」
奈々が隠れて、ガッツポーズをする。
「奈々さん。いま一つ、機体の機動性を生かし切れていないようだが。」
「副隊長。新型機が過敏に反応しすぎて、制御するのが大変なんです。」
「それもそうだな。」
「副隊長。改修には、あと10必要とのこと。」
大型バリアのエネルギーの残量を見て、不愉快な顔をする冴島。
「整備班の作業が終わり次第、今一度、出撃する。」
「ラジャー!!」
「運が良いのか、悪いのか。」
陵が、木曽川に展開された大型バリアの映像を確認する。
「この一戦が終わり次第。こっちが狙われるな。」
「それは間違いありません。」
駿に同調する冷がいた。
「レッドスター。早めに回収しないと、問題があるな。」
陵が駿に圧力をかけるように、目で訴えた。
「今は、戦線を離脱するのが先かと。」
「それはそうだな。」と、陵が口を尖らせて見せた。
「どうして、レッドスターに拘りを持つのですか?」
スマが駿に問う。
「レッドスターは、古のヒト型兵器。」
「スカイブルーも、同様ですよね?」
「ああ・・・遙か昔の記憶が封印されている。」
「レッドスターに搭乗したことがあるんですか?」
「分からない。ただ、レッドスターは大切なモノを守るために必要なモノだと感じるんだ。」
「初めて、スカイブルーに搭乗した時。言い表せない安心感を得られました。」
「安心感?」
「誰かに包まれていくような。」
「戦うための道具とは、かけ離れた感覚だな。」
「そうですね。」
スマが駿に笑って見せた。
「陵。申し訳ない。俺の力足らずで。」
「そういうことを言いたいわけではないんだ。」
章が様子を伺いながら、話しに入ってきた。
「あのバリアって、大量のエネルギーが必要だから、そうはもたないだろ?」
「それはそうだ。」
「そしたら、バリアが解除したときがチャンスだよな。」
冷がビックリして、章を見た。
「・・・はい。新都市大阪国と名古屋共和国がぶつかり合う瞬間を狙って、名古屋共和国の戦線から離脱するのが望ましいです。」
「防壁に数穴あけて、突破するしかないな。」
章が駿に、ピースをして見せた。
食堂にいるスマと美佳。
「やっぱり、凄いんだね。」と、スマに声をかけた。
「何が、ですか?」
「あんな骨董品を操縦できるなんて。」
スマが表情を変えずに、ジュースを飲み始めた。
「戦艦グリーンの主砲で、蹴散らしてやったの、ちゃんと見てた?」
「・・・」
「やっぱり、敵はちゃんと倒さないといけないよね。」
「・・・」
「次は、親玉に直撃させてやるのよ!!」
「あんまり、無理しない方が良いですよ。」
スマがジュースを飲み終わると、部屋に戻っていった。
「無理なんて、してないから。」
戦艦グリーンの男風呂で、湯船につかる駿。
「これだけは、こだわってよかった。」
富士山の絵が描かれている。
昔ながらの銭湯をイメージした、大浴場となっている。
「・・・失礼します。」
疲れを癒しに、スマが現れた。
「この趣味は、駿の趣味ですか?」
「・・・はい。」
「そうですか。」
「こんなことに力入れるなって、思ってるよな。」
「いえ・・・」
駿は、スマの過去の記憶を思い出し、考え込んでいた。
「嫌なことを忘れられるから、好きなんだ。」
「誰もいない、お風呂は好きかもしれません。」
「お邪魔だったよな。」
「いえ・・・」
狭い風呂で、年配の小汚い男とスマがいた。
「ほら、かわいい顔をしろよ。」
スマは無表情でいることに、必死になっていた。
「奇麗な顔だな。いくら、欲しい?」
スマは下を向いた。
「ほら、こっち見ろよ。」
男の手が、スマの体を撫でる。
スマは苦痛で顔が歪む。
スマが呆然と、洗い場を見る。
「また、売春を強要されるかと思っていました。」
「そっか。パイロットも不満だよな。利用するような形になって、悪い。」
「慣れてますから・・・」
無言が続く。
「困ったことがあったら、いつでも相談に乗るから、声かけてな。」
「・・・はい。」
章と美佳が、倉庫に隠れている。
「急にどうしたんだよ。」
美佳が章の唇を奪う。
「・・・どうした。」
「怖いの。」
「手、震えてたよな。」
美佳が、章の体に抱き着く。
腰に手をまわして、胸元に顔を近づけた。
「気づかれてた。」
「ああ・・・」
「冷に、気が付かれたかな。」
「それは大丈夫じゃないか。」
「そう・・・」
美佳が章の舌を絡ませる。
美佳の息遣いが激しくなる。
「落ち着いてから、俺の部屋に来いよ。」
「今、満たされたい。」
美佳の手が、章の下着を触る。
「いつ、呼び出されるか、わからないだろ。」
章が美佳の手首を握り、体から遠ざけた。
「そうだね。」
陵が倉庫から出てくる章を捕まえる。
章を陵の部屋に連れ込む。
「あ、すいません。」
「で、大丈夫なのか?」
「何が、ですか?」
「美佳だよ。」
章が笑って、何も言わない。
「人を殺すことに、慣れないとな。」
「そう簡単じゃないだろ?」
「躊躇すれば、死ぬ。」
陵が章を睨みつけた。
「・・・何が言いたい?」
「戦艦から降ろした方が、彼女の幸せなんじゃないか?」
「降りたって、幸せなんてないだろ?」
「生きていれば、どこだって幸せになれる資格はある。」
「そんなのきれいごとだ。」
「章が好きなことは否定しない。ただ、それとこれとは別の話だ。」
「あの新入りみたいに、簡単に・・・」
駿が陵の部屋に入ってきた。
「何か、問題でも起きたか?」
「いえ・・・」と、陵が言葉を濁す。
「焦る必要はないだろ?」
「焦っているわけでは・・・」
駿が章を見る。
「恋愛禁止ではないんだけど、あんまり見せつけないように。」
「・・・はい。」と、章が下に向く。
「問題があれば、冷が言うだろ。陵。」
「冷のことは、信用しているんだな。」と、陵が切り返す。
「誰のことってわけではないよ。陵のことも信用してるけど。」
駿が陵に笑って見せた。
「余計な心配だったようだ。」
「じゃあ、章と話があるから。」
駿が章を部屋から連れ出した。
「・・・すいません。」と、章が暗い顔をした。
冷が「気になることが・・・」と、駿に声をかけている。
「ちょうど、いいところに。」
冷が不思議そうな顔をした。
冷が部屋に招くと、珈琲を入れた。
「ありがとう。」と、駿が冷に笑った。
「そういえば、陵の部屋で、何をしてたんですか?」
冷が章に呆れた顔をして見せた。
「まあ、いいじゃないか。」
「ブリッジで倉庫の映像も確認できることは、忘れないように。」
章が顔を赤く染めた。
「・・・はい。」
「冷。美佳のこと、問題ないよな?」
「今のところ、問題はないかと。」
「・・・だそうだ。」
章がほっとした顔をした。
「美佳のフォロー、頼むな。」
「はい。」と、元気な声で応えた。
「ところで・・・」と、駿が言葉を発すると「遠慮しましょうか。」と、章が気を番うが、冷は首を横に振った。
「桧山 隆。13歳。」
新都市大阪国のデータベースから盗みとった映像を、冷が二人に見せる。
「ヒト型兵器連に搭乗しているのか・・・」
「戦艦西成に搭載された新型の一つです。」
ヒト型兵器連の装備を確認すると、章が驚いた顔をした。
「最新兵器搭載型って、感じだな。」
「期待されているのか。こちらの動きをけん制してのことなのか。」
冷が駿の言葉を否定するように、首を横に振った。
「古の記憶は、未だ、解放されていません。警戒する必要はありません。」
「そうだな。」と、駿は考えすぎなのかと、上を向いた。
隊長不在の戦艦西成では、作戦会議を行っていた。
吹田 示度が、彼らの激励のため、連絡を入れた。
「隊長不在の中で、諸君には大変、苦労をかけておる。」
連が「ありがたきお言葉」と、直ちに謝意を表す。
「大型バリアのエネルギーが尽きるまで、数刻であります。その瞬間を狙い、攻撃を仕掛ける予定であります。」
示度が大笑いして、骨董品の大型ライフルの画像を表示した。
「すでに手配した、超電磁大型ライフルに、大阪の利用可能な全エネルギーを充填し、発射する。大型バリアの崩壊とともに、敵を撃破する。」
隆は、どこから引っ張り出したのかと、目を見開いていた。
「お言葉ですが、あえて大阪のエネルギーをこちらに充とも。」
「対抗できる力があることを示すことが必要なのだよ。問題がある・・・」
「問題はありません。」
「君たちには期待しているのじゃ。今回の作戦には、桧山氏に大型ライフルを預けることにしたい。」
連が自分でないことに驚き、言葉を失している。
何を言っているのか分からず、数秒の間があり「はい。」と、隆が応えた。
「大阪のすべてのエネルギーを、君に託そう。」
「ありがとうございます。」と、隆は敬礼をして見せた。
蒼太が「連戦、ご苦労様」と、隆に声をかけた。
難波は「どうして、俺じゃないんだ。」と、悔しそうな顔をしていた。
慎吾は「自分じゃなくて、ラッキーラッキー。」と、喜んでいた。
「副隊長は、今回の作戦は、どう考えているんですか?」
蒼太が、心ここにあらずの連に言葉をかけた。
「特に問題はない。」
蒼太が「そういう問題ではない。と、言われてしまいますよ。」と、優しい声で問うた。
「難波。難波の活躍する場面。」
「艦長が不在というわけにもいかないだろう。」
「隊長不在ですからねぇ。副隊長は、安定の副隊長であります。」
蒼が慎吾の言葉に、褒めているのか嫌味なのかと、思っていた。
「それにしてもですよ。どうせ消えるバリアに、あえて大阪のエネルギーをぶつけるって、非効率的だと思いませんか?」
「私も、その点には納得がいっておりません。」と、蒼太が連を見た。
連も納得がいっていないようだったが、隊員をまとめる役割もあり、何も言わなかった。
学生寮の食堂に、潤と学生たちが夕食を食べていた。
モニターには、木曾川周辺の映像が映し出されている。
大きな爆音と共に、一つの光線が大型バリアに走った。
「大阪のすべてのエネルギーを、隆に託す。」
連が隆に言葉をかけると「了解した。」と、隆が返事をした。
「発射までカウント始める。」
隆がカウントを始めると、ライフルと接続されたケーブルが熱せられて、蒸気が上がる。
いくつかの充電装備が、悲鳴を上げ始める。
隆は、ライフルが持つのかと、心配になった。
「3,2,1,発射!!」
大型バリアに直線的な光が走り、光が光を受け止めた。
大型バリアにひびが入っていくが、光線も小さくなり、消滅していく。
大きな爆音と爆風があたりを襲い、砂埃が舞い上がり、状況が確認できなくなった。
五十嵐が「何事だ!!」と、物凄い剣幕で怒る。
「大型バリアに仕掛けてくるとは。面白い奴らだ。」
冴島が何も言わずに、ブラックナゴヤに搭乗し、ヒト型兵器連に向かった。
「冴島さん!!」と、真理子が冴島の姿を探すが、既に飛び立った後だった。
「映像、出ます。」と、美佳が木曾川周辺の映像を映し出す。
冷が血相を変えて、戦艦を加速させ、目的地に向かう。
「あえて、仕掛けてくるのか。このタイミングで。」
駿が頭を抱えて、困っていた。
「乱暴な作戦ですね。」と、スマが映像を確認する。
砂埃の中から、姿を現したヒト型兵器連を見て、スマは胸騒ぎがした。
「あの機体、なにか感じる。」
「趣味が悪いよな。よりにもよって、あの機体かよ。」
第一艦隊の作戦の趣味の悪さに、章は苦笑いして見せた。
「大型バリア。以前、展開。大阪の分が悪い。」
「その判断は早急かもしれない。」
冷の言葉を、陵が遮った。
「次の発射まで、30は必要。ライフルが耐えられるかは、不明。」
兵士からの報告を聞いて、隆がいら立つ。
「早く、準備を進めてくれ。敵が来る。」
蒼太と雷と慎吾が、ヒト型兵器を発進する。
「隆の楯となり、次の攻撃を成功させる。」
蒼太の言葉に、雷が「面白くない展開だ。」と、いら立っていた。
「誰も来ないと、ラッキーラッキー。」
慎吾が、誰も来ないことを願っていたが、その願いはすぐに敗れた。
「退いてもらおう。」と、冴島のヒト型兵器ブラックナゴヤが姿を現した。
ヒト型兵器堂島と松風庵が、ブラックナゴヤを迎え撃つ。
堂島と松風庵がライフルで狙い打つが、ブラックナゴヤは華麗に攻撃を交わした。
「一対三ではあるが。経験値の差で、勝てるかな。」
ブラックナゴヤが、攻撃を交わしながら、空を舞う。
「こちらを狙う気がないのか。」と、蒼太が戸惑っていた。
雷が「ナニワ・フォーメーション・アタックを仕掛けるぞ」と、号令をかける。
「みんなの気持ちが一体になれるのかな。なれたら、ハッピーだね。」
蒼太が止めに入ろうとするが、既に二人が攻撃態勢をとっており、手遅れだった。
「仕方ない。こちらも、攻撃態勢に入る。」
ヒト型兵器のエネルギーが放出されると、ブラックナゴヤに特攻を仕掛ける。
三機が一体となり、何処から攻撃が展開されるのか、予測が難しい。
「ナニワ・フォーメーション・アタック!!」
三名の掛け声とともに、光化学サーベルを構える堂島が前に出て、松風庵がバズーカ砲を打つ。息の合った攻撃に、ブラックナゴヤは回避行動すら、していない。
「青いな・・・」
突進してきた堂島に、黒魔法のトラップが発動し、爆音が鳴り響く。
「装甲が持つのか。」
雷と慎吾にも、同様のトラップが遅い、後退しなければならない。
「俺たちの、俺たちの、必殺技が!!」
「アンラッキーな日もありますから。蒼太は、大丈夫?」
「相当な損傷はあるが、作戦は継続可能。」
ブラックナゴヤが、彼らをあざ笑うように、目の前に現れた。
「年の差は、伊達じゃなかったな。経験を積んで、出直したまえ。」
「いちいち、ムカつく奴だな。」と、雷が感情的になっていた。
戦艦グリーンが戦域に到着すると、ヒト型兵器きしめんが発進する。
「先行して、道を開く。」
スマは、スカイブルーに搭乗待機している。
「僕は出なくて、大丈夫ですか?」
「危なくなったら、頼む。切り札だからな。」
駿の言葉に、スマは頼りにされる『嬉しさ』を覚えた。
しばらく、ブラックナゴヤと蒼太らのヒト型兵器が交戦していると、冴島の息が上がる。
「さすがに、オヤジさん、年には勝てないって。」と、慎吾が急速に近づく。
光化学サーベルが、ブラックナゴヤの装甲を掠る。
「私としたことが。しかし、損傷は軽微か。」
直ぐに、堂島が突進して、追って攻撃を仕掛けてくる。
「直撃させる。」
「回避するまでもない。シールド展開。」
堂島の光化学サーベルを楯で受け止め、弾き返す。
しかし、腕部の装甲に微かにヒビが入る。
「判断が早い。」と、蒼太が汗を拭った。
「下手な鉄砲も、数うち当たるってね。」と、慎吾が攻撃態勢をとる。
しかし、ヒト型兵器きしめんが、松風庵のバランスを崩させ、弾が空に反れた。
「真理子さん・・・」
「この状況、どっちに付けば、勝算があるんだ。」
駿が長距離から攻撃を仕掛け、蒼太らを後退させる。
「気まぐれな奴だ。」
「そりゃ、どうも。」
駿がブラックナゴヤの後方に着くと、次の攻撃に備えた。
戦艦グリーンの主砲が、堂島を捉える。
「撃て!!」と、冷の声が響く。
主砲が一直線に、ヒト型兵器に向かう。
「新手ですか。」と、蒼太が表情を曇らす。
「運が悪い。けど、最後の最後まで、勝利の女神はどちらに微笑むかは、わからないよね。」
ヒト型兵器連が、白い蒸気に覆われている。
今すぐにも暴走しそうなライフルを構え、ひび割れた大型バリアに狙いを定める。
ブラックナゴヤが前に出て、攻撃を阻止しようと試みる。
「3,2,1、発射。大阪のすべての希望だ。」
一直線に光が走り、大型バリアと衝突し、粉々となったエネルギーが地面に落ちていく。
ブラックナゴヤが、大型バリアの背後から、魔法でシールドを展開し、受け止めようと試みる。
駿が、暴走し始めたライフルを狙い撃ち、撃破する。
「ライフルが破壊されたのか。」と、隆が一瞬の出来事に、動きが止まる。
大型バリアが消滅し、木曾川周辺からエネルギーの塊が消失し、双方のヒト型兵器が衝突を始める。光線となったエネルギーは、未だ健在でブラックナゴヤが必死に受け止めている。
「このような奇策。」
背後に備えていたライフルを光線に上手に当てる。
ブラックナゴヤが受け止めきれず退くと、光線が大爆発を起こし、エネルギーが消滅した。
爆風に巻き込まれるヒト型兵器きしめんを受け止めるスカイブルー。
「作戦は成功です。」
スカイブルーがヒト型兵器きしめんを背負い飛び立つと、すれ違うようにヒト型兵器連がブラックナゴヤに向かっていった。
「この機体!!」と、隆は嫌な感覚を覚えた。
「桧山 隆。僕は、君のことを・・・」
「機体ではないのか。こいつの存在感で、悪寒が走ったのか。」
ヒト型兵器連は攻撃せずに、ブラックナゴヤに急いだ。
戦艦グリーンに格納されるヒト型兵器きしめん。
高温で機体の表面から、白い水蒸気が立ち上がっている。
爆発の衝撃が大きく、装甲が変色したり、溶けたりしていた。
スカイブルーから飛び降りると、スマが駿をヒト型兵器から引きずり出した。
熱気で、駿は意識を失っている。
スマが魔法で冷水を駿に浴びさせる。
「情けないな。」
「人を頼らないからです。」
「死ぬかと思った。」
「簡単に死なせはしないです。」
「ありがとう。」
スマが駿を抱きかかえて、救護室に運んだ。
「見つけたぞ!」
隆がブラックナゴヤに詰め寄る。
「勢いだけでは、機体がもたんぞ。」
冴島が笑っている。
「来たか。」
3機のヒト型兵器きしめんが現れ、ブラックナゴヤを睨み付ける。
「私は、左、行きます!!」と、奈々が先行する。
「では、私は、上から。」と、真理子は機体が飛び上がらせる。
「少し出遅れました。右から行きます。」と、恵利が機体の速度をあげた。
隆は防御に徹し、攻撃が止むのを待つしかできない。
「卑怯な奴らだ。」
「これは決闘ではない。」
ブラックナゴヤが、ヒト型兵器連に特攻してきた。
隆は「死ぬのか・・・」と、死を覚悟した。
「やはり、そういうことか。」
ヒト型兵器連を守るかのように、魔力が覆う。
「絶対科学主義の大阪が、魔力を使うの?」と、奈々が驚きのあまり攻撃の手を止める。
ブラックナゴヤが、ヒト型兵器連から一気に退き、相当の間合いを取った。
魔力は収まることなく、一点に集中して増長していく。
「ここは一度、退く。」と、冴島のかけ声で、周囲の兵器は戦域を離脱していく。
休止したヒト型兵器連から、大きな爆音が発せられた。
次から次へと、装甲が剥がれ落ちていく。
「俺は死ぬのか?」
「・・・生きろ。」
隆は懐かしい声と感じながらも、誰の声か分からなかった。
「おまえは誰だ?」
「隆は一人ではない。」
「俺は、いつも一人だ。単独で任務を遂行してきた。」
「仲間がいる。」
「仲間だと。足手まといになる存在だな。」
「孤独で心を埋めても、何も良いことないぞ。」
「・・・誰だ?」
「生きろ!!」
隆は目が覚めると、ベットに寝ていた。
体を動かすと、痛みを覚えた。
「あの声・・・誰だ?」
戦艦グリーンを待ち構えていたのは、示度だった。
「面白い奴らじゃ。」
ヒト型兵器西成が、戦艦グリーンの行く手を塞ぐ。
「こちらは、戦艦グリーン。」と、冷が挨拶をした。
「こちらは、新都市大阪国・国王、吹田 示度である。そちらを迎撃する意志はない。」
陵が不思議そうな顔をした。
「そして、あの骨董品のライフルの暴走を止めたこと、礼を申す。」
章は茶番だと思い、示度の言葉に寒気を覚えた。
「こちらは、名古屋共和国に終われる身であります。大阪通過の許可を頂きたい。」
「通過の許可はできかねる。しばらく、わが国の要人として、尽力して頂きたい。」
「それは、どういう意味ですか?」
「戦力の増強が必要なのでな。そちらの力を貸してもらえんかな。」
冷は断ることができない状況に、相手の申出を受け入れるしかなかった。
「分かりました。そちらの申出を受け入れます。」
食堂に集まる学生達。
木曽川に大きな穴が現れた映像が流されている。
「外界は、騒がしいね。」
「大阪が関わっているみたいだな。」
「あいつら、博多だけでなく名古屋にまで手を出しているのかよ。」
「本当にたち悪いよな。」
ヒト型兵器連が回収されていく映像が流れる。
「胸騒ぎがする。」
潤はヒト型兵器連を見ると、気分が悪くなった。
その理由が何か、今は知ることはできなかった。
恵利が、行きつけのおしゃれなバーで、酒を楽しんでいる。
「今日は、ペースが早いと思われますが、大丈夫ですか?」
マスターが、恵利に気を使って、声をかけた。
恵利は、ほんの少し腹を立てて「ありがとうございます。」と、答えた。
ドアを開ける鈴の音がすると、マスターが軽く会釈した。
恵利の隣に、なにも言わずに座る客。
「同じのを。」と、冴島が注文をする。
「冴島さん。」と、恵利の顔が赤く染まった。
しばらく、沈黙が続いていた。
「独りになりたくないときに、いつも冴島さんは傍にいてくれて、優しさが痛いです。」
「痛い?」
「優しさが痛いです。」
「嬉しいの、間違えではないのか?」
恵利が冴島の腰に手を回す。
「嬉しいですよ。」
恵利が冴島の唇を奪うと、冴島も恵利の唇を奪った。
マスターは顔色一つ変えずに、いつものことと、冴島の酒を置く。
「もし、戦いが終わったら、冴島さんはどうするつもりですか?」
「考えたこともない。」
「私たちのこと、どうするおつもりですか?」
冴島がグラスの氷を撫でるように、まわして見せた。
「そのような世界では、私は無価値だ。」
「そんなこと、ありません。私・・・」
恵利は「私」という言葉を飲み込むと、「私たちは、冴島さんが必要です。」と、続けた。
「私に、一人の女性を愛する資格はない。恵利さん。もし・・・」
「それ以上は、言わないでください。」
「悪い。」と、冴島が言葉を止めた。
恵利は、冴島の過去を知っていた。
冴島の若彼氏ころ、彼は一人の女性を愛していた。
しかし、博多魔法国との交戦の際に、大召喚獣の攻撃に巻き込まれて、その女性は塵となって、消えていった。
冴島の愛した女性の写真は、軍服の内ポケットに忍ばせていることは、恵利達は知っていた。
過去の呪縛から解き放たれることがないであろう冴島を考えて、三人は心を痛めていた。
「冴島さんが変わらないように。私たちも変わりません。」
恵利が冴島に笑って見せると、舌を絡めて、相手を感じた。
マスターが『貸し切り』の札を、入り口にかけた。
高層階のホテルの一室から、夜景を楽しむ恵利。
「夜景を見ると、ほっとする。」
「どうして?」
「人がたくさんいることを感じられるから。」
冴島が恵利の胸元に手を添える。
「一つ一つの光の下に、それぞれの生活があると思うと、ほっとする。」
「孤独を感じているのか?」
「冴島さんがいれば、孤独はない。」
呼吸が上がる二人。
冴島の老いてもなお、美しい身体に、恵利はしがみついた。
「こうすれば、私を感じられるだろ?」
「・・・はい。」
冴島の激しい腰遣いに、恵利は失神しそうになっていた。
「偽りの愛でも構わない。この瞬間は、私だけを見ていて下さるから・・・」
「ママ!!」と、兵士達が真理子にお酒を集る。
スナック真理子には、たくさんの客が集まっていた。
「ママのヒト型兵器。痺れた!!」
酒に酔った兵士が、真理子を褒めたたえる。
名古屋の兵士たちから、ファンが多い真理子は、暇を見つけてスナックを営んでいる。
年齢には不相応な演歌が流れると、真理子が歌い始める。
団扇をもって、応援をする兵士たち。
真理子が歌いきると、菊川キララの新曲が流れる。
「青い。」と、真理子が誰にも聞こえない声で、呟いた。
ドアが開く音がしたので「すいません。今日は、貸し切りです。」と、真理子が入り口に足を運んだ。
「今日は繁盛しているんだな。」
「冴島さん。」
兵士たちの顔色が変わり「どうぞ。どうぞ。」と、冴島に席を譲っていく。
「気を使わせてしまったな。ここは私が支払う。」
「あ、ありがとうございます。し、失礼します。」
菊川キララの曲の途中で、兵士たちが店を出て行った。
「隊長自ら、いらっしゃって頂いて、光栄です。」
「例の件。きちんと話をせず、申しわけない。」
真理子が、冴島に酒を差し出す。
「どの件でしょうか?」
「あはは。私が知る以上に、いろいろと知っている。」
「いろいろは知りません。」
「無人ヒト型兵器の試作機の件。私にもどうすることもできない案件でな。」
真理子が、冴島の顔をじっと見る。
「戦うのに、ヒトは不要なのでしょうか。」
「犠牲を最小限にということなのであろう。」
「兵士は必要ないというのであれば、私たち兵士はどこで生きればよいのでしょうか。」
「真理子さんには、ここがある。」
「常連客は同士ばかり。職が亡くなれば、ここには来られない。」
冴島が、しばらく黙っている。
「私が来る。」
真理子が、冴島の唇を奪うと、涙を流した。
冴島の行きつけの旅館に、冴島と真理子がたどり着いた。
貸し切り温泉に、二人が足を運ぶ。
間接照明の雰囲気がある檜風呂に、体を寄せ合って、入浴する。
「冴島さん。肩が凝ってる。」と、肩甲骨周りを摩る真理子。
冴島が体ごと振り返ると、胸部で手を添えた。
「冴島さん。」
「真理子さんの方が、疲れてるだろ?」
「そうですかね?」
真理子が顔を赤く染めると、冴島の手がゆっくりと動く。
「みんなに、優しくしてますよね?」
「みんなとは?」
「いじわるですよね?」
「そういう性分でね。」
「だけど、甘えん坊さん。」
冴島が顔を赤く染めると、真理子の胸に顔を埋めた。
奈々はキララのコンサートに来ていた。
「この瞬間。第一艦隊に所属してよかったって思っちゃんだよね。」
キララのコンサートのチケットを見つめる奈々。
大きなスタジアムに、多くの人が動員されている。
「こちらへどうぞ。」と、警備員に誘導される。
関係者席に招待されると、奈々は興奮のあまり、声なき声をあげる。
奈々はバックに入れておいたキララグッズを繰り広げ、戦闘モードに入った。
キララのコンサートが始まり、キララの美声がスタジアムを包み込む。
失神しそうな奈々は、不思議な言動を繰り返していた。
「今日は、お会いできて嬉しいです。こんな時代だけど、楽しんでいってください。」
奈々は歓声をあげて、キララに手を振っている。
それぞれの休日を堪能し、無人ヒト型兵器の起動実験の日となった。
戦艦グリーンが、輸送機に張り付いて、攻撃のタイミングを計っている。
「また、趣味の悪い作戦ですね。」と、奈々は映像を眺めていた。
「大阪の領域で、軌道実験するなんて無茶苦茶だわ。」
真理子が、冴島を睨みつけていた。
「いやはや。あんな危ない代物。名古屋で軌道実験はできんよ。」
五十嵐は失敗することを前提に、事を進めているようにも思えた。
博多魔法国のクイーンから「成功をお祈り申し上げます。」とだけ告げると、回線が切れた。
冴島が無人ヒト型兵器を投下するカウントダウンを始める。
「疑似無限魔法炉。納得がいかない。」
恵利が無人ヒト型兵器の映像を睨みつけた。
ヒト型兵器ベリーショートに乗り込む隆と駿。
「ダブルエントリーシステム。再起動するのか?」
「足手纏いになるなよ。」と、隆が駿に声をかけた。
「はいはい。」
隆らしい言葉に、駿は笑って見せた。
懐かしさを感じた。
いつも心配ばかりかけた相方。
俺の暴走を引き留めたりもした。
おまえは、誰だ?
「ベリーショート。起動しません。」
大きな爆音。
街が吹き飛んでいく。
禁じ手であるゴットファイアーを唱える者。
たくさんの犠牲に、俺は心を痛め、正義を探した。
これは、はるか昔の俺が経験したことなのか。
「隆。しっかりしろ。」
隆は意識レベルが低くなっていく。
「ベリーショートからの干渉か。」
駿は目を瞑り、隆の精神の在処を探す。
「正義という問いに、答えはない。」
「おまえは。」
「今は、ただ戦うしかない。」
「戦うことが正義ではないのか。」
「それの答えを見つけることができるのは、隆、次第だ。」
「俺次第・・・」
「戦いを望むのも、拒むのも。」
隆が笑いながら「面白ことをいう。」と、駿を見た。
「貴様、何者なんだ?」
「さあ、通りすがりのジャンク屋かな?」
冷が「いつからジャンク屋にくら替えをしたの?」と、苦笑いしていた。
「整合率10から30に上昇します。」と、オペレーターの声がした。
ベリーショートが起動し、目が青く光る。
「やはり、本来の乗り手ではない俺では、十分に力が発揮されないか。」
冴島が無人ヒト型兵器の起動を確認する。
「起動するのか・・・」
一歩、一歩、前進する無人ヒト型兵器。
その足取りは重く、ドッシリとしたものだった。
徐々に無人ヒト型兵器の周囲を黒い霧が覆い始める。
「失敗か・・・」と、冴島が暴走をする無人ヒト型兵器を凝視する。
「制御不能。制御不能・・・」
「まったく、厄介な代物を。スマ、援護を頼む。」
「了解しました。」
ベリーショートが、相当の距離を置いて、無人ヒト型兵器を待ち構える。
「生命反応がない。あの黒い霧はなんだ?」
隆は気味の悪いオーラに、恐怖を抱いた。
科学力か魔力なのか、分からない不思議な力が漂っている。
「雷の力よ。サンダー!!」
駿が無人ヒト型兵器に雷を放つが、黒い霧が魔力を吸収してしまう。
「魔力を吸収するというのか。」
隆が光化学ライフルで、無人ヒト型兵器を撃つ。
エネルギー体が衝突して、無人ヒト型兵器がわずかに後退するが、ダメージはほぼない。
「ずいぶんとタフな奴だな。」
隆は強気に笑って見せた。
無人ヒト型兵器の様子が変わり、素早く接近し、ベリーショートにのしかかろうとしている。
スカイブルーが、ブルーウェーブで無人ヒト型兵器を押し返す。
「隆。力を貸してくれ。」
「なにを!?」と、隆が戸惑っている。
ベリーショートの装甲に魔法のバリアを展開し、駿は機体を守ろうとする。
隆は駿の手を取り、自らの無事を祈った。
無人ヒト型兵器が、ベリーショートの頭上を覆うように抱き込むと、黒い光と赤い光が入り交じり、天に光を突き通しながら爆発し、消滅した。
潤と少年が会話する姿。
学生生活を楽しむ少年。
文化祭で出店をする少年。
少年が、焼きそばを作り、学生に売っている。
普通の学生生活の映像が流れる。
そして、最後に、学生が魔法炉に入り、大召喚獣となりこの世を去って行く。
「これは何だ?」
「無人ヒト型兵器の正体か。」
「こんなことをするのが、博多の奴らなのか。」
「彼らの責任ではない。」
「じゃあ、何なんだ。この有様は。」
「人が生きていくために、人を犠牲にしているだけだ。」
「豊かさ故の犠牲だというのか。」
「犠牲はどこの世界にも存在する。見て見ぬ振りをしているだけだ。」
「正義は必ずある。俺が実現する。」
爆風の中から、ベリーショートが姿を現す。
ベリーショートの機体が、魔法で輝いている。
「俺は、俺の正義を貫く。」
その魔力は、隆から流れ出たものだった。
「ベリーショートの本来の担い手。」
冴島が、ベリーショートを見て、恐怖を覚えていた。
「私たち、あんなモノを利用しようとしていたの。」
真理子は、名古屋共和国に恐怖と嫌悪を感じていた。
「人の手に負えないモノなんて、作らなければいいのに。」
奈々が小さな声で、冴島に言った。
「革命とは、失敗のうえに成り立つモノ。犠牲は必要だ。」
冴島は、言葉とは裏腹に納得はしていないようだった。
「それにしても、あの骨董品の防御力、計り知れません。」
恵利が、ベリーショートにも恐怖を感じていた。
「魔法を使うなんて、卑劣な奴らだな。」
雷が戦闘の映像を見て、鼻で笑っていた。
「示度様が戦艦グリーンを迎え入れて、彼らに処理させたかったのは、これだったってことなんですか。」
今回の新都市大阪国の動きに、蒼太は疑問を感じていた。
「力には力ってことなんだろう。」と、慎吾は行き場のない感情を抑えていた。
連が休憩室に入ってくると、蒼太と難波と慎吾は口を閉じた。
「戦艦グリーン。やはり悪魔か。」
「連。悪魔なのは、無人ヒト型兵器と名古屋だろ?」
雷が連を否定して見せた。
「動力源にも疑問があります。」と、蒼太は冷静に無人ヒト型兵器を分析している。
「そして、あのベリーショートとスカイブルーの正体は・・・」
慎吾が、蒼太の言葉に付け加えた。
「示度博士が、戦艦グリーンを受け入れた理由は、これだけなのか・・・」
連は、腑に落ちない示度の行動に、他に何かあると感づいていた。
無人ヒト型兵器の任務前の隆と蒼太。
隆の病室に、蒼太が面談をしに来た。
「元気そうだね。」
「ああ・・・」と、隆が顔を隠して見せた。
蒼太が、さきの戦闘の映像を見せて、疑問を投げる。
「発表では、名古屋の大型バリアの撃破による爆発となっているけど。隆の仕業じゃないのかなって、思ってね。」
「どうして、そんなこと。」
「ヒト型兵器連の損傷箇所とか、総合的に判断して、どちらかといえば、ヒト型兵器連の内部から近いところが爆発を起こした。だから、隆が予想以上のダメージを負っている。そう分析したんだけど・・・どうだろう?」
「蒼太の分析力は、相変わらずだな。」
「だとすれば、隆が魔法を何らかの形で使用した、という確率も高くなる。」
「そうだな。どのようにして、そういう展開になったか、よく分からない。」
「そういうことか・・・このことは、秘密にしておきます。示度博士以外は、知らされていないんだろうから。」
「そうしてくれると助かる。」
二人の目が合い、しばしの間がある。
「友達だからね。」と、蒼太が病室を去って行った。
蒼太は戦艦グリーンの帰還を待っていた。
大阪に帰還した戦艦グリーンに、蒼太は乗り込み、ヒト型兵器の格納庫に向かった。
スカイブルーから降りるスマの姿がある。
続いて、ベリーショートから駿が降りてきた。
「よく、自爆するって分かりましたね?」と、スマが駿に声をかけた。
「なんとなくかな。」と、駿も自分の行動に驚いているように思えた。
隆が最後に機体から降りると、蒼太の疑問が確信に変わった。
「隆。やっぱり、操縦していたのか。」
「示度博士の命令だ。」
「そっか。無事でよかった。」
「ありがとう。」
駿が隆と蒼太の会話が耳に入り、なぜか嬉しくなった。
「それにしても、大阪は魔法を使わない国なはずが、俺たちを利用しようとは。」
陵が「本音と建て前というやつなのでしょうか。」と、駿に答えた。
「どうなんでしょう。」と、蒼太の中の疑問が大きくなっていった。
ヒト型兵器レッドスターの類似兵器であるホワイトスターが、名古屋に納入されている。
「パイロットの補充も完了している」
冴島は、あまりにも手配が良いホワイトスターの件に、裏があることは理解していた。
「どうして、私たちがパイロットとして選抜されないのよ。」
奈々が、自分がパイロットでないことに、怒りを表した。
「奈々さん。この機体は、直接搭乗するタイプ。女性には不向きです。」
真理子が、奈々に搭乗スタイルを説明して見せた。
「それは、確かに困る。ぜひ、新しいパイロットに搭乗してもらいましょう。」
奈々はパイロットに選ばれなかったことに、納得したようだった。
「それに骨董品。本当に動くのでしょうか。」
恵利が起動するのか、疑問を抱いていた。
「骨董品が、既に2機も起動している。問題は無い。」
冴島が、スカイブルーとベリーショートを例にあげてみせた。
「ところで、この骨董品。また、博多経由での買い取りだけど、大丈夫なの?」
奈々は、クイーンに関わることに疑いを持っていた。
彼女からしてクイーンは、貧乏神のような存在だと思っていた。
「博多が絡むと、良いことないですからね。」
恵利が、奈々に賛同して見せた。
「無人人型兵器を迎撃する前の話」
戦艦グリーンが示度に招き入れられている。
「三田 駿。懐かしい響きじゃな。」
駿の上から下までを舐めるように、示度が見ていた。
「お初にお目にかかります。戦艦グリーン・艦長の三田 駿と申します。」
「そのまっすぐで、宝石のような赤い瞳。世界の英雄のようじゃ。」
駿は示度が何を言っているのか、理解に苦しんでいた。
「私たちを要人として受け入れるメリットがありません。何を考えているんですか。」
冷が示度に率直に聞いた。
示度が笑いながら「私の計画に必要なのだよ。彼らが。」と、答えた。
『彼ら』というのは、誰を指しているのか、冷は確証が得られずにいた。
陵が「では、補給をお願いしたい。」と、示度に申し出る。
「それは当然である。」
会議体コントレーション。
アクエリアスが光り、他の星座を呼び出す。
「我らの願い。魂の保管。彼らの覚醒が必要なのじゃ。」
ピスケスの輝きから「不完全な東京。また、同じ失敗は繰り返してはならない。」と、発する。東京の街は、不完全な状況で保管されている。
「魔力の源泉・・・創造された約束の地から意外からは、生まれない。」
スコーピオから笑い声が聞こえる。
「偽りの力とやら。どの程度か、試して見るがよい。」
キャンサーから苦笑いが聞こえる。
「いずれにせよ。被害は最小限に留めてほしい。」
レオからは反対するかのような言葉が発せられた。
多くの整備班が、戦艦グリーンの作業を行っている。
「至れり尽くせりで、気持ちが悪いな。」
章は整備班を見て、裏があると思い、用心している。
「けど、正直、運が良かったと思う。名古屋を敵に回して、大阪まで敵になったら、正直、ヒト型2機じゃ、どうしようもないでしょ。」
章が、すぐに頷いた。
「それにしても、私たちだけお留守番なんて、納得いかない」
美佳は不満を漏らしながら、戦艦を下りようとする。
「待ってろって、言われただろう。」
章が呆れているが、美佳について行きたい様子だった。
その横をスマが何も言わず、通り抜けていく。
「あ、抜け駆けは許さない。」
美佳はスマを追い抜かすように、艦を降りていった。
スマは引き込まれるように、隆の病室に向かっていた。
なぜか、隆のいる場所が分かっていた。
隆が点滴をしながら、寝ている。
「君は?」と、隆に声をかけた。
「俺? 俺は桧山 隆。」
「僕は、スマイル・シンプルです。通称スマです。」
二人は目を離さずに、どちらが先に目を離すか、勝負しているように見えた。
スマが大笑いすると、隆は不満そうに笑った。
「もっと、イヤな感じの方かと思いました。」
「なんだそれ?」
「僕がスカイブルーのパイロットです。」
「いきさつは、だいたい聞いた。どうして、あの戦艦で戦う?」
「成り行きなんです。」
「成り行き?」
「僕の居場所は、もともとありませんでした。だから、どこにいても同じです。」
「俺の居場所もあって、ないようなもんだからな。」
「仲間がいるということは、羨ましいです。」
「普段は、競い合ってるような関係だがな。」
「命を預け合える人を、仲間って言うんじゃないですか?」
「そうかもしれないな。」
スマが悲しそうな目をした。
「スマにとっての仲間は、あいつらなのか?」
「・・・分かりません。ただ、今は、あそこにいるしかないということです。」
「心地良くないのか?」
スカイブルーに駿と搭乗した時の感覚を思い出していた。
心地が良いという感覚では無かった。
知られたくない過去を、駿と共有してしまったような気がしていたから。
「どうなんでしょうか。僕は、過去に囚われて生きていくしかないんです。」
「俺にも思い出したくない過去がある。ただ、その経験を生かして、今があるんだろ?」
「僕には生かせる経験にすることが、できません。」
蒼太が「大丈夫か?」と、病室に入ってきた。
「特に問題は無い。」
「初めまして。桜宮 蒼太と申します。」
「初めまして。スマイル・シンプルこと、スマと申します。」
蒼太は、軍服を着ていないスマを見て、どこの身分の者かと思っていた。
「ありがとうございました。」と、スマが部屋を出て行った。
「あの人、どこの人?」
「まだ公表されていないのか。戦艦グリーンのクルーだ。」
蒼太は驚き、どのような状況なのか、整理がつかないでいた。
雷がバイクを乗り回していると、道路を横断しようとする美佳が急に現れた。
「やっべぇ。」と、雷が必死にバイクを止めようとするが、間に合わない。
章が魔法を唱えようとしているが、バイクが左に避けていき、美佳は事なきを得た。
バイクからは煙が立ち上がっている。
雷は「いてぇな。」と、何事もなかったかのように、立ち上がった。
「大丈夫ですか?」と、美佳は雷に近づく。
「怖い思いさせてしまったな。」と、雷が自分の無事を美佳に見せる。
陵は見覚えたのある顔に、難波 雷であることを思い出し、言葉を失した。
「バイクは、軍に回収させるとして、そっちは怪我ないよな。」
「はい。」
「お連れさんも大丈夫だな?」
「ああ・・・」
「車だったりするか?」
美佳達は、車で移動していた。
美佳は自分達の車を指さすと、雷は来賓用のナンバーを確認して、見なかったことにした。
「大阪の本拠地まで、乗せてくれないか?」
「買い物の後で、よければ。」と、美佳は承諾してしまう。
章は勝手なことをと思い、少し怒っていた。
「お邪魔だったかな?」と、章を茶化してみせる雷。
「いえ、大丈夫です。」と、章ははっきりした声で答えた。
手荷物を車に乗せると、美佳はブティックを目指した。
「お金を気にせずに買い物できるって、久しぶり。」
雷が美佳の異様なオーラに退きながら「洋服なら、あっちの商店街の方が、安いぞ。」と、指さした。
「そっちに行く行く。」と、美佳は全てを忘れて買い物に集中している。
商店街には、虎のセーターなどが飾られていた。
とにかく派手で、大阪のおばちゃんというイメージの服ばかりだった。
「これ、私が着るの?」と、美佳が見ていると、章が笑いをこらえられずにいた。
「大阪といったら、虎だろ。アニマル柄もあるぜ。」
美佳に強引に勧める雷。
たしかに、似合わないとはいえないが、美佳の感性には合わないようだった。
「ほら、着てみろ。」と、強引に試着室に押し込まれる美佳。
たくさんの服を試着し、章はずっと笑いを堪えている。
「章。笑ったわね。」と、章に怒りを打つけた。
雷が章に「似合ってるだろ?」と問うと、「ああ・・・」と答えた。
商店街でアイスクリームを食べたり、喫茶店でコーヒーを飲んだりして、一日を堪能した。
「そろそろ、戻りますか。」と、美佳が雷を連れて、基地に戻ろうとする。
「そういえば、おまえらは、どこに戻るんだ?」
「同じ場所だから、気にしないで。」
「同じ場所?」
「私たちも、基地に戻らないとならないから。」
要人なのに、ホテルではないのかと、雷は疑問を抱いた。
雷は基地の前で、車から降りる。
「今日はありがとうな。」と、雷が手を振った。
まさか、戦艦グリーンのクルーとは知らずに、別れを惜しんでいた。
連が作戦司令室で、大型コンピュータを利用して情報収集している。
冷が大型コンピュータの制御席に座り、作業を手伝う。
「機密情報がある。協力は控えて頂きたい。」
「既に、示度博士の承諾は得ています。」
「そうですか。」
冷が、東京と博多の情報を集約して、不穏の動きを察知する。
「博多と名古屋の関係が怪しいと思いませんか?」
「博多から、何かを輸送する計画が確認できた。」
「名古屋の新型兵器なのか。」
「博多には、機械的なモノは存在していません。」
「それはそうですが・・・」
冷の処理能力に、連は押されていた。
「そんなに、たくさんの情報を一気に受け入れて、大丈夫なんですか?」
「戦艦グリーンでは、一人で処理することが多いので。」
「そういう問題なんですか。」
「・・・はい。」
連は冷の能力に驚き、劣等感を感じた。
「戦艦グリーンの件。明日、正式に軍人に公表されるとのことですが。」
冷は連に気遣っていた。
「そうですね。納得しない軍人もいるかと思いますが、命令ですから。」
「私たちは魔法も利用しているので、価値観が異なっています。」
「価値観が違うからこそ、示度博士は利用価値があると考えたのでしょうが。」
「今は、魔法の力を借りたいということでしょうか。」
「そういうことなのでしょう。」
二人は納得できない答えを導き出し、本当の答えは何かと考えていた。
連が戦艦グリーンのクルーを、蒼太達に紹介をする。
慎吾が「はじめまして。」と、声をかける。
雷は「あのときの!!」と、驚きの声をあげる。
「すでに知り合いなのか?」
駿は、冷と美佳を見た。
「バイク事故の青年。」
「うちのクルーが迷惑をかけたようで。」
「迷惑をかけたのは、俺だ。」
美佳が駿を睨みつけた。
示度が「彼らは特別待遇で、私が要人として招き入れたのだ。」と、不思議そうな顔をする兵に説明を入れた。
「示度博士の計らいですか。」
更に疑問を深めた蒼太がいた。
「彼らには、次の作戦を遂行してもらう。」
ベリーショートの起動実験。
隆が軍服を脱ぎ捨てると、駿も服を脱いで、搭乗の準備をする。
「俺が、どうしてこんな機体に。」
「ベリーショート。古の機体。」
「ああ、知ってる。また、どうして、おまえとなんだ。」
隆は駿に銃を打ち落とされた恨みが残っていた。
「あのときのこと、根に持ってる?」
「根に持ってない。」
二人がベリーショートの中に乗り込むと、液体が体を覆った。
息苦しくならない不思議な液体に、隆は戸惑っていた。
「少ししたら、慣れる。」
「このシステム。スカイブルーも同様なのか?」
「ああ、そうだ。」
「骨董品は、悪趣味だな。」
二人が目を瞑ると、ベリーショートを動かすことに集中した。
「整合率10%。起動しません。」
「異物を入れているかなら。」
「誰が、異物だ!!」と、隆が言う。
駿が異物は自分であるのにと思い、隆の言葉を無視した。
「隆は、そのまま集中してくれれば良い。」
駿が目を瞑ると、ベリーショートに魔力を開放していく。
駿の体が魔法で輝き、ベリーショートも同じ色に染めっていく。
「手品でも始めるのか。」
隆は、駿から発せられる心地の良い光に身を委ねた。
「俺がベリーショートに乗ることになるとは。」
「この機体の持ち主は別にいる。」
「ああ・・・わかっている。ベリーショート。」
「ワイズストーンの使い手が、何ようだというのだ。」
「レッドスターが幽閉されている今、俺はベリーショートの使い手でもある。」
「賢者の名のもとに、ベリーショートの担い手をやるというのか。」
「一時的なことだ。悪いが・・・」
「仕方がない・・・だが、本来の使い手を早く見つけ出すのだ。」
「ありがとう。」
駿から発せられた光が、ベリーショートに吸収されていく。
「整合率30まで引き上がります。」
章が「これが、駿の本当の力・・・」と、駿の力をただ見ていた。
「無人人型兵器の撃破直後」
爆風の中から、ベリーショートが姿を現す。
ベリーショートの機体が、魔法で輝いている。
「俺は、俺の正義を貫く。」
その魔力は、隆から流れ出たものだった。
「無人ヒト型兵器、完全に消失。」
隆がホッとする、意識が遠のいていく。
駿が隆に、魔力を注ぎ込む。
「整合率がさらに上がっていきます。」
「俺。あいつみたいな思い出、欲しかったのか。」
隆が笑って、学生の記憶をたどっていく。
「ベリーショート。何を見せようというんだ。」
駿が隆を、ベリーショートから引き戻そうとする。
駿の魔力が、次から次へとベリーショートに流れ込む。
隆の体にも流れ込み、隆の意識を維持している。
隆は温かい魔力に懐かしさを感じていた。
「兄さん・・・!?」
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作者からのお願い
「面白かった!!」
「続きが気になる!!」
「作品を応援したい!!」
ぜひ、ブックマークに追加をお願いします。
このキャラのこんなところが「好き」「嫌い」というのも、ぜひ感想をお願いします。
作品にポイントを入れて頂けると、出筆の励みになります。
皆様の応援で、この小説は成り立っております。
よろしくお願いします。
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読み終わった後に聞いて欲しい曲
『アイム・ア・ビリーバー』SPYAIR
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後書きについては、順次追加する予定です。
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【作者インタビュー】
――今回の作品の「シン」の意味はどういう意味ですか?
本作品は、自分が学生時代の時に書いた声劇台本が元になっているんです。正確な公表した時は忘れてしまったのですが、20年ぐらい前に書いた作品のリメイクということなんです。当時の作品は、ブラザーと第二次ブラザー大戦だったかな、そんな名前の作品名だった記憶があります。検索をかけたら、今は無くなってしまっていて、見ることはできません。
――以前の作品と今作の異同点は?
本作品の設定は、ブラッシュアップして、かなり違うものとなっています。ネタバレになってしまうので、細かいところは実際の作品を見てください。
ただ、前半は学生時代の自分を後半は社会人になる手前ぐらいの自分の考え方が反映している作品になったと思います。
一度、リメイク版を出筆したのですが、内容が重複していたりして、気に入らず、消去してしまっていたので、書き直しています。
――本作品の目標はありますか?
声劇の台本として公表した当時、1日のアクセス数が3,000を超えて、喜んだ記憶があるので、同じぐらいの読者が現れてくれたら、嬉しいなって思います。
――本作品を書く意義は何ですか?
ブラザーシリーズは、将来不安を抱えていた学生時代の作品なので、当時の自分と向き合うことで、新しい何かを得たいなって思ったりして、今一度、まとめあげることにしました。
当時はBL脚本と呼ばれることが多かった記憶があります。今ほど、BLが認知されていない時代でしたが、今は、BLが認知されるようになって、時代の移り変わりに驚いています。声劇にあたって、参加する方が男性が多かったこともあり、男性キャストが多い脚本として、BL的な脚本は利用しやすい感じもありました。
恋愛物語も多く公表したのですが、今となってはこのブラザーシリーズが一番、知名度が高く、話数も多かったので、自分としては未だに思い出深いものとなっています。
――具体的にはどんな思い出があるんですか?
声劇部屋で演技をするうちに、演技が好きになり、声優の養成所に通いました。きっかけは、夏期講習からだったのですが、たまたま声劇を共にしていた方が、九州から東京に受講しに来ていて、感動して、声優を目指した思い出です。
結果的に、今は別の職業となったのですが、当時の経験は今でも生かされています。
――声劇台本と小説では、どのような点が違いましたか?
声劇台本は参加人数を意識して書くことが多かったので、登場キャラクターの数に制限がありました。小説は、そのような制限がないので、多くのキャラクターに触れることができます。逆にいえば、プロットをうまくまとめないとならないんですが、2回目のリメイクだったので、構想はおおむね出来ていて、早く書き上げることができました。
――読者にメッセージをお願いします。
「あとがき」には、昔に公表した時、同様に「ブラザー・ラジオ」と銘打って、各キャラクターが本編の内容を解説したり、突っ込みを入れたりする声劇台本を順次、追加する予定です。展開が早くて、内容がわからなかった部分などは、そちらを見るとわかりやすいかもしれません。あとは、キャラクターが別のキャラクターに突っ込みを入れたりするので、そちらも面白いと思います。
腐女子・腐男子向けの要素もありますが、純愛な要素もあるので、いろいろな方に読破して頂けるように頑張ります。
令和4年7月末日
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◎公開予定日◎
第1章 2022年8月8日午前8時
第2章 2022年8月9日午前8時
第3章 2022年8月10日午前8時
第4章 2022年8月26日午後18時
第5章 2022年9月2日午後18時
第6章 2022年9月9日午後18時
第7章 2022年9月16日午後18時
第8章 2022年9月23日午後18時
第9章 2022年9月30日午後18時
第10章 2022年10月7日午後18時
***