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世界終わりで、西向く士  作者: 白い黒猫
宙を廻る旅
9/19

ラジオの男

 情報がすっかり停滞してしまったこの状況において、毎日違う内容で番組が発信されるという事はありえない。

 数年ぶりの珍事に俺は興奮する。


 そうなってくると、気になるのはこのウェブラジオの発信者。

 何者なのか?

 声や行動からしてそんなに年はとっていない社会人男性。

 しかしあまり会社に行っている様子はない

 恋人がいるようだ。

 名前はHIROSHI SHATOUとある。

 ネットで【サトウヒロシ】を検索するが、漢字が分からない事で該当する人物が絞り込めない。

 発信日が何故か二千二十年七月十一日(今日)より一年前にあたる二千十九年七月十一日。

 そして発信されているのは朝の七時半〜八時頃。


 ラジオを聞き続けているうちに色々と奇妙な点に気がつく。

 放送は朝に生放送で流されているようだ。

 するとサトウヒロシという人物は、朝にコレから過ごす筈の二千十九年七月十一日の出来事を話しているということになる。

 スケジュールを話しているのではなく、そこで過ごした感想なども語っている。

 そして同じ日の話なのに、毎回違う行動をしている。

 どういう事なのか? そこから導きだされる結論に俺の心臓がドキドキする。


 検索ワードを【佐藤】・【2019.07.11】にして調べてみる。

 そうすると多くのヒットがあり、それは一つの事故の記事へと結びついている。


 二千十九年七月十一日、タワーマンション群からなるMedio(メディオ) Del(デル) Mondo(モンド)のある交差点において発生した竜巻により、三人の人物が亡くなった。

 その一人が佐藤(ヒロシ)(31歳)。

 たまたま車で通っていた時に、車ごと竜巻に巻き上げられその勢いのまま地面に叩きつけられたようだ。

 写真にある車はひっくり返った状態でペッチャンコとなっていた。かなりキツい死に方に思える。

 そういえばそんな災害事故があり、世間でもかなり騒がれていたのを思い出す。

 しかし被害者の名前まで覚えていなかったのは無理もないと思う。

 俺にとって無関係で、毎日多く起こる事件の一つでしかなかったから。


 幽霊からの交信という事だろうか? 佐藤宙は自分の死に気が付かず未だに行動し続けている? 

 

 今の俺が気になるのはその日時。俺がこうなる事故のあった丁度一年前の。

 事故があった時間は11:11。

 ネットにアップされている動画を調べてみると、佐藤宙は七月()()日の()()()()()()秒に事故が起こった事が分かった。


 嫌な予感がして、俺は自分が死亡した時の時間をネットで調べてみる。

 破片が落下する様子を移した監視カメラの映像が見つかった。

 スローで動画を送り破片が地面に突き刺さる瞬間で止める。

 画面の右上に表示された数字も【11:11:11】だった。俺はその数字を見てゾッとする。

 

 二千十九年七月十一日の十一時十一分十一秒に死んだ男が、【111111世界の真ん中から】というタイトルのウェブラジオにおいて二千十九年七月十一日死ぬことなく過ごした一日を語り続けている。

 

 彼が亡くなった場所の建物Medio(メディオ) Del(デル) Mondo(モンド)の意味は【世界の中心】。 

 それを考えると彼は自分の死を知らない訳では無いだろう。


 ふとウェブラジオのアプリにレターという機能がある事に気が付く。ウェブ発信者に感想等を送れるというもの。


 俺は恐る恐るそこをクリックする。メッセージフォームが現れる。

 彼になんて話しかければ良いのか? 

 俺の手は震える。

 そもそも一年前に死んだ男に連絡した所で通じるものなのか? 反応があったらあったで恐ろしい。


 俺はその日は何も送らず、部屋から逃げるように外に出た。


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