★ ★この物語世界についての解説★ ★
こちらの作品、サトウヒロシという名前の人物がおかしな現象に巻き込まれたり巻き込んでしまったりする物語を集めた短編集【サトウヒロシシリーズ】に入れられています。
さらに正確に言うとサトウヒロシシリーズの中にある【11:11:11 世界の中心で……】という作品と同じ世界なものがちなのでいわば【11:11:11】シリーズの作品となっています。
この【11:11:11】シリーズは主人公が七月十一日十一時十一分十一秒に何だかの事故に巻き込まれたのち、七月十一日を繰り返すことになるという内容。
前作の主人公佐藤宙の一年後に、今回の主人公である土岐野廻は佐藤宙が携わったアイテムによりループ現象に巻き込まれるということで物語は前作の一年後という時間軸からスタートします。
続編と言っても、世界の謎が解き明かされて広がるという展開というより、同じ現象に巻き込まれたものの異なるシチュエーションにより違った雰囲気となる世界を楽しむという感じの内容。
同じ設定で異なるパターンの物語を表現して描いてみたいと言うことで書いています。
今回の主人公も全く同じ現象に巻き込まれています。
七月十一日の十一時十一分十一秒に十一に関わる場所で事故で死亡し、七月十一日から抜け出せなくなる現象。
それは前作の主人公佐藤宙、さらに前の年の核となった日廻永遠と同じ。
そして宙は二人、永遠は八人、ループに巻き込まれた仲間がいます。
今回は仲間ゼロの状態。
三人に共通するルールは以下のもの。
この世界は脱出不可能。
七月十一日が終わると同時に世界は綺麗にリセットされるために、そこで死亡した人や破壊されたモノは元通りになります。
ルーパー以外は毎回同じ行動をする。ルーパーが関わる事でのみ、その行動に変化を与えられます。
ルーパー以外はループ現象を認識することは出来ず、ルーパーとは異なる行動によりルーパーと関わった記憶もリセットされる。
起床時間は変更することは出来ない為に、最初にスタートさせた時間より早く行動はする事は不可能。
核となった人物が過去の核に纏わるモノを媒体としてループ現象が引き起こされる。
ループ現象が引き起こされた瞬間に同時に死亡した人もループ現象に巻き込まれる。
核となった人物は前後一年の核と繋がる能力と、そのループの記憶をリセットする能力をもつ。核の絶望が限界を超えた時、もしくは廃人状態といった精神崩壊したらリセットされる。
リセットしても記憶が表面的に初期化されるだけで、時間を戻す訳では無い。
リセットはリセット前に抱いた感情等が心の中にゴミとして残り狂気を早める。
ループは、繰り返す事で人の心を疲弊させ、その心を狂わせる。
心の奥底で欲していたものを求めていく様になるような形で狂う。
ルーパーの狂気を末期まで進行させると廃人になる。
核以外のルーパーが一年後の核に対して直接連絡をすると一年後の時間の核ではなく、同じ時間軸にいる核に繋がりそこで分岐した未来を作れる。その分岐した世界の存在期間は一年で事故の日に核が死なないと消滅し、そこで予定通り事故にあう道を選択させると同様にループ現象した平行世界を作り出す。
分岐した世界の記憶は、核の記憶の奥底に蓄積される。佐藤宙は白昼夢という形で並行世界の記憶に苦しめられます。
(仲間ルーパーが多いほど、このパラレルワールドは作れる為、佐藤宙同様複数の日廻永遠のパラレルワールドが存在する可能性もある)
核やルーパーが働きかけ影響を与えるのは一年後の世界の核のみ。日廻永久の世界の人間は土岐野廻に継続的に連絡はつけられないし分岐世界も生み出せない。
と言う感じでかなり厄介で嫌な現象となっています。
前作の佐藤宙の物語は、事故から始まりループ現象を主人公と共に体験していく形で進みますが、土岐野廻の物語は逆に散々ループを繰り返し世界に辟易している状況から物語は始まっています。
同じ現象に巻き込まれたのですが、土岐野廻が前作の主人公佐藤宙との違いは、ルーパーはただ一人であること。
もう一つは事故の時、ルーパー以外に怪我人等の犠牲者がいること。
佐藤宙はルーパーである人が現場に行かなければ他の人はごくごく軽傷で被害にあわないので事故そのものからは逃げやすい。
しかし土岐野廻は自分が動けば被害者はゼロにする事は出来るが、そうでなければ死者や怪我人が出てしまう。
その為に事故を無視する事が少し心苦しい状況である事。
助けても助けなくてもリセットされて無かったことになる世界に疲れて辟易してしまうのも無理はないと思います。
前作の続きの時間から始まっている事から分かるように、土岐野廻はこの現象に巻き込まれて結構な月日が経っています。
土岐野廻は数年この現象に苦しめられているような表記となっていますが、佐藤宙の存在にきが付くところから始まっている事からわかるように、彼が認識している以上の期間ループしています。
まず佐藤宙が日廻永遠にたどり着くのに三年、そしてそこで五年程交流し佐藤宙が精神的に崩壊しリセットして百二十一日後に交流復活し一年程経過。までが佐藤宙の物語の時間。
土岐野廻が佐藤宙と会った時には、高橋とジョニーが毀れてしまっていることからさらに月日が経っていることになります。
軽く計算しても十年前後の月日、土岐野廻はこの世界に一人で閉じ込められています。
その為既に狂っている状況から物語はスタートしていました。ついでに言うと知らずのうちにリセットを行ってしまってます。
彼だけでなくルーパーは皆、一見まともそうに見える人も、実は皆少しずつ狂っていっています。
前作の登場人物で言うと、日廻永遠、ウォーレンは前作終了時で既に不穏になっていました。ジョニーは佐藤宙に依存を高める形で甘えるようになっておりその事が永遠の逆鱗に触れコチラの世界では既に毀されています。
佐藤宙はラストにおいて厄介事から逃げて楽になっていました。しかしその逃げる行動により不都合な事を察していても目を背け、なかったようにする傾向が強くなっています。既に死んでいてこの世界からの脱出は無理であろうという事を考える事を拒絶しています。
フランツも同様。言語能力と情報収集能力が高いだけに自分達が本当の意味で生き返ることはない事を察していながら気づかないふりをしています。ネットで様々な情報を入手し検証することの方を楽しんでいます。
そんなフランツと交流と佐藤宙の指導もあり土岐野廻はより快楽主義者の傾向を深めています。
そういう意味ではこの三人は穏やかで平和な狂い方をしているとも言えます。
土岐野廻も佐藤宙も基本心優しく善良な性格な為に、その特徴が生きた形での狂気に陥っています。
土岐野廻の狂気はただ無邪気に愛情を向けていたジョニーより、さらに積極的に佐藤宙に働きかける形の傾倒と依存。
どちらかというと前作の高橋今日子に近いものはあります。
頼りがいある包容力のある優しい恋人としての佐藤宙を求め独占しようとした今日子とは違い、慕い甘え愛する兄としての執着。
そんな男女の差もあり佐藤宙の恋人である明日香への感情は、今の段階では穏やかなものとなっています。大好きな兄の恋人だから姉のようなもの。だから大切にしています。
また利己的な愛情を向ける今日子とは異なり、佐藤宙から愛され可愛がられる事を重視する土岐野廻の狂気。佐藤宙が穏やかに過ごせることを第一に動いています。
前作と今作、主人公は最後一見似た行動をしているようにみえるかもしれませんが、その行動を行う意図は真逆です。
佐藤宙はこの世界のことを好んではおらず、できたら抜け出すつもりで、それまで快適に過ごすための折り合いをつけている形。
土岐野廻は、この世界をかなり気に入っておりここでさらに楽しく過ごすための行動しています。
作者としての私はこのようにこの物語を書かせていただきました。
読んでくださった方は、この世界をどのように読まれたのでしょうか?