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世界終わりで、西向く士  作者: 白い黒猫
宙を廻る旅
13/19

溢れ出てきたもの

 佐藤宙は顔は一見取っ付きにくそうな堅い人に見えるが、話をするとすぐに穏やかで優しい人だと分かった。

 伊藤明日香さんとこの人が恋人同士というのがなんか納得出来る。二人は同じ空気を纏っている。


「すると君の世界では、ルーパーは君一人なのか?」

 佐藤宙達はこのルーブし続ける世界の中で、その事を認識出来ている人の事を便宜上ルーパーと呼んでいる。

 佐藤宙の所には他にルーパーがいるなんて羨ましい。

「ええ、俺の認識出来る範囲では一人です。ニュース見ても新しい行動を起こす人もいませんし……。

 あっでもここ数年引きこもってニュースも遮断して生きていたので、新しくルーパーが生まれている可能性はありますが……」

 佐藤宙は顔を横に振る。そして何故か俺を悲しそうな目で見つめてくる。

「それはありえない。

 最初の段階で世界は確定してしまうから。

 それにしても君はよく頑張ってこれたね。

 この状況を。一人で辛かったよな」

 佐藤宙の言葉に俺の思考は一瞬止まり、その後言葉がゆっくり心に沁みていく。

 何かの思いとか言葉より先に出てきたのは涙だった。

 この異常なルーブの現象の中で、自分が思った以上に心が擦り減り傷付いていたことに今更のように気がついた。

「いや……俺は……」

 一度流し出すと涙を止める事はもう出来なかった。俺は幼い子供のように泣きじゃくるしか出来ない。

 そんな俺を佐藤宙は優しく労るような表情で見守ってくれた。

「我慢しなくてもいいよ」

「もう大丈夫だから」

 そんな優しい言葉をかけ続けてくれた。

 こんなに泣いたのは幼稚園以来の事。泣いて縋ったところで親は俺に構う事ない。泣くという行動早々に放棄ししまった行為だから。

 そんな俺だが、この時ばかりは泣くという行為をやめられなかった。

 助けや救いを諦めているようで求め続け、それが限界ギリギリだったからかもしれない。そんな状態の俺を佐藤宙が呆れず受け入れてくれているのを良いことに甘え俺は泣き続けた。

 涙を流すことはデトックス行為であると言うのは本当だったようだ。思いっきり泣いて俺はすスッキリした。

 冷静さを取り戻すと羞恥心を取り戻す。

「ごめんなさい……取り乱して」

 俺は目の腫れを感じながら佐藤宙に謝る。

「いや、気にしないで。

 悪かった。自分の事にかまけてて君に辿り着くのがこんなに遅くなってしまった事。

 もっと俺が君を探す行動を早く始めていたら……」

 気を悪くするどころか、謝られてしまう。

「いえ、こうして見つけてくれた」

 佐藤宙は俺の言葉に困ったような顔をする。

「やっと来たのが、こんな頼りない男で申し訳ないよ」

 俺は顔を横に振る。

「いえ。初めて顔を見た時になんか、ホッとして嬉しい気持ちになりました」

 佐藤宙は照れた顔をする。

「そういえば佐藤さんの所には、他にルーパーがいるんですよね。それはどういう人達なんですか? 仲間がいるって羨ましいです」

 泣いて醜態を晒したことが恥ずかしくて、話を強引に戻す事にする。

 何故か少し悩む顔をする佐藤宙。

「俺の場合、一緒に竜巻に巻き込まれた人がそうなった。

 仲間と言っても俺の所のルーパーは()()()()()()なところがあったから。

 でも、大丈夫トワの所のルーパーは残っている人は皆知的で冷静で頼りになる人ばかりだから」

 この時は、この言葉の奥に隠れている佐藤宙の複雑で深い想いなんて気付けるわけもなかった。

 自分のことでいっぱいいっぱいだったし、それよりも気になった事があったから。

「俺の場合、少なくとも他に九人巻き込まれて重軽傷負ったと思うのですが、その人達は毎回同じ行動していましたよ」

 何故俺だけ一人なのか?

「重軽傷レベルではルーパーにならない」

 佐藤宙はそう言って顔を悲しそうに顰める。死亡までいった人しかルーパーにならないという事だろう。

「ところで。君の世界で俺はどうなっている?」

 佐藤宙の質問に俺は言葉を詰まらせてしまう。その様子に佐藤宙は苦笑する。

「やはり死亡者とされているんだな」

「俺も同じですよ! でもこうして生き返る事出来ました!」

 俺は元気に明るい言葉でそう主張した。

「生き返ったのは良いけど、時間に閉じ込められて出れないのが困った所なんだよな」

 佐藤宙はそう受けて、肩をすくめる。

「そこが問題なんですよね」

 逆にいえばそこだけが問題なのだが、その問題がデカ過ぎるすぎる。


「取り敢えず、俺達が今の段階で分かった事を君に教えることにするよ」

 そう前置きをして佐藤宙は語り出した。


 佐藤宙が説明してくれたこの現象の特徴は次の四点。


 この現象は一年毎に起こっており、今現在把握出来ているのは三件。

 二千十七年、二千十八年、二千十九年の七月十一日十一時十一分十一秒に発生。

(俺の事故が起こったのも二千二十年七月十一日十一秒正式に四件目と認定されるだろう)


 その現象の核となった人物の誕生日は十一月十一日。 

(俺の誕生日も確かに十一月十一日)


 現象は前の核となった人物が作り出した空間もしくは纏わるモノのある所で発生。

(これに関して俺と佐藤宙との関連は不明。また俺も佐藤宙同様普通のサラリーマン何も作り出してない)


 現象には異様な程【11】の数字を持つ要素が多い。

(俺の場合も、ニシムクサムライ、ジャックスマイル、十一周年イベント、社長の名前と、偶然と片付けるには多すぎる気がする)

 

「確かに俺の誕生日は十一月十一日です。

 ところで核となるルーパーと他のルーパーの違いって何なのですか?」

 佐藤宙は他に二人、そしてその前のヒマワリトワの場合は八人、さらにその前は数十人いたようだ。その中で核と認定される条件が気になった。

 ぶっちゃけ俺の場合一人なのでそれは決定的なのだが。

「誕生日が十一月十一日であることは条件というより調べた結果そうだったというもので核と言われる事は、さっきも言ったけど次の現象を引き起こした場との関連性。

 他の時間の核と繋がれるの能力を持つこと。

 あと……いや何でもない」


 俺の場合俺一人しかいないから俺が核なのだろうが、あの場所に佐藤宙は何の関係性があったというのどろうか? 俺は考える。

「そもそも、なんで俺なんですか?

 それだったらウチの社長は十一と書いて【トカズ】ですから、そっちの方が相応しくないですか? ってコレかなり失礼な言葉ですよね」

 言ってから社長に心の中で謝る。佐藤宙も俺の発言にフッと笑っている

「俺もズットそれは思いつづけていたよ。

 なんで自分なのか? 俺はそういう意味では一番平凡な一般人だから。

 俺の前二人の核のルーバーは、ウェキペディアで記事が作られる程有名な人なのに」

 前のルーパーはそんなにスゴい人達だったような。

 それに比べると、俺達二人はかなり平凡といえるだろう。


 二人で同時に溜息をつき、腕を組み考え込む。余りにも揃った動きをした為に二人で笑ってしまった。

 なんかこういう感じ良いなと思ってしまう。人と話す時、こういう他愛無いことが嬉しい。


 こうして繋がれたのが、超有名人やセレブな人ではなく、こうして親しみやすそうな人で良かったと内心思う。しかし口には出さなかった。

 突然外国語で話しかけられていたら、俺はひいていたかもしれない。そうだったら俺はどうしていたのだろうか。 悩ましい。

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