−プロローグ−
――夢を見ていた。
見渡す限りに、続く地面。真青な空。
その幻想的な空間は、永遠に終わりが見えない草原でできており、小さな花々が足元を小さく彩る。
いくら進んでも、建物どころか人の姿も無い。
それでも、なぜか恐怖心はわかなかった。その時だけは無邪気な、世界の汚れを知らない子供に戻っていたような気分だった。
だって、なにをしようと怒られないから。制限された道を、進む必要が無くなるから。
夢は現実にならない。それでも、その瞬間だけは現実のようなひとときを過ごしたかったのだ。
朝がまたやってくる。
愚かなオレに目覚めという、悪夢が近づく。
夢は終わる。
そして、現実に引き戻される。
その永遠の負のループは、オレの中で習慣化していた。
さあ、またループにそった一日を始めよう。
瞳が小さくうずく。身体が少し震えている。
足元がふらついて、オレは思わず尻もちをついた。
目を開けると、世界は一瞬にしてモノクロに変わってしまうことなんて分かりきっていることだ。
現実は儚い。そんな時空にオレ達は存在していた。
さあ、無理にでも笑おう。
――現実のオレは、常に仮面をつけておかなければならないのだから。