第09話 決死の攻防
【超幸運】を発動する。
この状況、発動してどうなるかは分からないが使用しないよりましだ。
命運はこのスキルにかかっている。
【魔法障壁】発動。
エンシェントバックが先程同様に目にも止まらぬ高速移動で、殴りつけてくる。
【魔法障壁】は破壊され、衝撃で、またまた後ろに吹っ飛ばされた。
その瞬間さらに敵は詰め寄り殴りつけてくる。
まずい。【魔法障壁】が壊された。
避けられない。やられる。くそぉ!
そう思った瞬間だった。
自分の感覚では絶対に当たっていた攻撃だったが、体が勝手に動き、攻撃を回避した。
なんだこれ?当たらなかった....のか?無意識に体が動いたのか?
もしかしたら超幸運の効果なのか?
およそ自分では動かし得ない動きを取ったことに驚く。
その後もエンシェントバックが打撃を与えてくるがその全てを、意識せずとも体が勝手に動き回避してくれる。
だが分かったことがある。この無我の回避中に体を動かそうとしても動かすことができなかった。
回避中は俺の体の指揮権が俺にはないということなのだろうか。
魔法ならどうだろう?
敵の攻撃を無我の回避でいなしつつ、魔法唱える。
【魔法の矢】!!
複数の魔法の矢が敵に飛んで行き、直撃する。
「グガアァァァ!!」
よし当たった!少しではあるが効いたようだ。
推測だが今の攻撃が当たらない状態は超幸運と関係していると思う。
超幸運状態というのが、今のこの状況、無我の回避を行える状態だとしたら、
「このスキル想像よりもっと凄いスキルなのかもな。」
確率を操ることだけがこのスキルが持っている能力ではないのだろう。
他にももっとあるかもしれないな。
「ウゴォォォォ!!」
ダメージを受けたエンシェントバックは俺から距離をとり、口から魔力の塊をレーザーのように発射してきた。
「うわっ!?やばっ!?」
間一髪、また無我の回避に助けられた。
レーザーが放たれた方向を見ると木や草は跡形も無く、地面はえぐれ、そのレーザーの威力の強さを物語っていた。
それを見て安堵する。
当たらなくてよかった。当たったら消し炭だっただろう。
おそらくあれが最強の技だ。あれ以上があってたまるか。
すると シュウン・・
まさかっ・・・
体からスキルの効果が無くなるのを感じる。
10分たったのか!? 超幸運状態が解ける。まずい。
その通りに超幸運の効果がなくなる。
もう避けられない。
どうすれば・・・
思考している暇はない。逃げろ、逃げろ!足が引きちぎれるくらい早く逃げろ!
街の方に向かって全力で逃げる。
もしかしたら助かるかもしれない。
そんな思いも虚しく、エンシェントバックの早さには敵わない。
一瞬で距離を詰め、目の前に立ちはだかる。
「くっくそがっぁ!」
追い詰められた俺は太刀を振る。
当たらない。
【超強落雷】!!
【火炎弾爆発】!!
当たらない。
くそくそくそっ!
【土の壁】!!
【超強落雷】!!
【火炎弾爆発】!!
敵の周りに土の壁を作り閉じ込める。
壁の中めがけて、魔法を放つ。
雷が落ち、爆発が起こる。
「やったか??」
確認するがエンシェントバックはいない。
もしかしてやったのか!?
そんな期待も虚しく、背後に嫌な感じがする。確認するとエンシェントバックがいる。
瞬間移動で逃げていたのか......
魔力が切れかかっている。使いすぎたか...... 頭がぼーっとする。
魔力を使いすぎると、魔力欠乏状態になり、倦怠感や目眩、吐き気など様々な状態異常を引き起こす。
くっこんなところで......
バンッ!!!!
「ぐはっぁぁぁ」
エンシェントバックの拳が腹に刺さる。
酷い鈍痛、吐血する。
腹の中でなにかが破裂したような気がする。
後方に吹っ飛ばされ、木に激突する。
痛みで起き上がることができない。
俺......死ぬのか......?
エンシェントバックの方を見ると瞬間移動せず、ゆっくりと歩いてこちらへ向かってきていた。
意識が遠のいていく......
「....死に..た....ぅなぃ」
薄れゆく意識の中、心からの言葉を口に出す。
その時だった。
「【重力闇核】!」
魔法...? 誰かが近づいてくる。エンシェントバックがトドメを刺しに来たのか...?
「あなた大丈夫!?? いや、かなりまずそうね。とりあえず逃げないと!」
そういって誰かが俺に触れる。
「【座標転移】」
そこで俺は意識を失った。