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第01話 パーティーを抜けてくれ


モンスターの討伐依頼をこなし、ギルド内の酒場で円卓を囲む。

酒を注文し、みんなへ酒が行き渡り乾杯の音頭の後今日の討伐についての話をしている。

そんな時だった。


「ジル 話があるんだ」


そう切り出してきたのはパーティーリーダーで剣士のシャインだ。

金髪長身でイケメン。いつも笑顔を絶やさない爽やかなリーダーだ。

いつも笑顔のシャインがえらく真剣な顔をし、低い声音で言ってきた。


「なんだ?いつもの飲み比べ対決か?」

「いや、そんなことじゃないんだ。 .....パーティーを抜けてもらいたいんだ。」


突然だった。


「意味わかんねーこと言ってんじゃねーよ。 まだ一杯目だろ?もうそんな酔ったのかよ?」


酔いのせいでシャインはこんな変なことを言っている。そう自分自身に思い込ませるように言った。


「酔ってなんかない!!!真剣な話なんだ!!!」


シャインは机をバンッ!と叩き怒号を上げる。


「.....もう一度言う。パーティーを抜けてくれジル。」

「っな ....なんでだよ! なんでそんな事言うんだ! さっきまで力を合わせてモンスターを討伐してたじゃねーかよ。 なあ嘘だろっ? なあルーシィ?」


仲間の紅一点、白魔術師のルーシィの方を見る。

長く綺麗な茶髪、そして美しい顔立ちをしており、彼女には何度も回復魔法でお世話になっている。

そんな彼女なら、嘘だと。パーティー脱退についてシャインになにか言ってくれるという淡い期待を抱いて聞いた。


「....ごめんなさい」


ルーシィは目を伏せそう言った。


「これは全員が思ってんだ。抜けてくれ頼むわ」


そう横から入ってきたのは武闘家のタタラだ。

背は2mはいかないくらいだろうか。その身長に合わせてムッキムキの体。

長い髪を後ろで束ねており、いつも眉間にシワを寄せている。


「突然意味がわからない。理由はなんなんだ?」


頭を抱えながら三人に問う。


「お前が弱いからだ。 ったく魔法剣士なんてレアな職業だから入れたはいいが全然使えねーからよー。

たいしたスキルも持ってないしな。レベルもお前一人だけ随分低いしよー。くそ役立たずが」


問うた理由をタタラが言う。

続けてシャインが


「これからは今まで受けていた依頼より、難しい依頼をこなしていこうと思ってる。でもそんな依頼を受けたらジル。君は死んでしまう可能性が高い。それは君が一番よくわかっているはずだ。今日の依頼だって何回も死にそうな場面を僕たちがカバーした。君を死なせたくない。ここから先は...言いたいことは分かってくれるよね」


俺がいると依頼が受けれない。邪魔ということか。

.....そうだ。俺は弱い。魔法が使えて剣もそこそこ使えたので冒険者登録の際、魔法剣士の適正があったのでその職についただけ。魔法剣士という職業の物珍しさでシャインのパーティーに入れてもらったが、特別魔法が優れているわけでも剣技が優れているものでもなく、スキルも平凡なものばかり。魔法剣士は器用貧乏になりがちで剣と魔法二つの勉強をしないといけない分他の職より頑張らなくてはならない。そのため習熟が低い者が多く、剣士と魔法使いの二人をパーティーにおいた方がいいと言われることも多い。

分かっていた。俺が一番弱く、皆んなの足を引っ張っていると。


「分かったよ。 お前たちの枷にはなりたくない。 抜けるよ」


残っていた酒を一気に飲み干し、代金をテーブルに置く。


「今までありがとう.. これからも頑張ってくれ」


そう言い残し俺はギルドを後にする。

ギルドの門を出たところで


「待ってジルっ!!」


ルーシィが俺を追ってギルドから出てきた。

ルーシィの顔は赤くなり目から涙が溢れていた。


「本当にごめんなさい。っ……でっ...もあなたには死んでほしくなくてっ。」


本当に不甲斐ない。俺が強ければこんなにも悲しませることはなかっただろうに。


「いや俺が悪いんだ。謝るのは俺のほうだ。こんなにも悲しませてしまって。俺のほうこそごめんな」

「っ……ふ……っ……」


泣き続けるルーシィ。そんな彼女にかける言葉が見つからない。

正直俺も泣きたいが、ぐっと涙を堪える。


「....じゃあ俺は帰るよ。 これからも頑張ってな」

「うん。ごめん....泣いちゃって困らせちゃったよね。また...ね?」

「うん。また」


そう言って帰路についた。






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