選ばれなかった子供達01
「お兄ちゃん」
「待ってろ 向こうに行ってみるぞ」
「うん」
「あっ」
「あったの」
「声が大きい 聞かれたらどうするんだ」
「凄い こんなに」
「これだけ あれば」
2人の子供は こそこそと 草を取り その場を離れていった
「うっ 苦いよ~」
「贅沢言うなよ 久しぶりのご馳走だぞ」
「うん そうだよね」
「水を沢山飲んで 草はゆっくり 良く噛んで食べるんだぞ」
「うん」
久しぶりに口に出来た食料 街の外壁の中に生えていた 苦い草 それを嬉しそうに食べる2人の子供
次の日も 街の外壁の中を歩く 2人の子供
しかし 草など まったく生えていない
2人の子供同様に 多くの子供達が草を探し 歩いている
・・・
「お兄ちゃん」
「向こうに行って見るか」
「うん あっ あの人 凄い」
「あっ あんなに」
草を沢山持って歩く子供が
妹が草を持つ少年に話しかける
「どうして そんなに沢山」
「ああ これは 街の外の草だよ 俺は7歳になったからな」
「街の外」
街の外には魔物がいる
見つかれば
・・・
2人の子供は街の東門へと向かった
「お兄ちゃん」
「俺も7歳だ 待ってろ聞いてみる」
門に並んでいる10歳くらいの男に話を
「はじめて見る顔だな 外の草を狙うなら 順番だ ルールを守り 無理はするなよ お前は4番目だ こいつの後に並べ」
「うん ルールって何」
「無理はしないこと 欲張らないこと 魔物に見つかって 逃げることが出来ても 魔物は街まで追ってくる そうすると 街の外にしばらく出ることが出来なくなるからな 他の皆にも迷惑がかかる」
「そうだね」
2人の子供が待っていると
手にいっぱいに草を取り戻ってくる子供が
妹は唾をごくりと飲み込む
「待ってろ 必ず 俺が取ってくるから」
「うん 無理はしないでね」
「ああ」
「いいか 少年 姿勢はなるべく 低く 魔物からなるべく見つからないようにしろ 声を出すな 音を出すな いいな」
「うん」
「よし 頑張ってこい」
7歳の男の子は 初めて街の外に出た
すぐ側に 草が生えているのを見てびっくりする
こんなに草が
男の子は 低い姿勢でゆっくりと移動して 街のすぐ側で草を取り始めた
両手いっぱいに草を取り 音をたてずに ゆっくりと街に
たった3分間だったが はじめて街の外に
「お兄ちゃん」
「ほら 見ろ こんなに」
「凄いよ お兄ちゃん」
門にいた男が「それは 苦い草だろ そこに食べられる草の本がある 見て勉強しろよ」
「えっ はい」
苦い草だが 2人の子供にとっては ご馳走だった
それも両手いっぱいの草を食べられるのだ
「ほう 今日も来たのか 2度目の方が 油断する 絶対に無理はするなよ」
「うん」
「それから 順番が来るまで 本を読んでいろ」
「えっ うん」
「ああ そうか すまない 読めないか よし 順番が来るまで 俺が読んでやる」
門にいた男が男の子に 食べられる草の本を読んでやる
男の子の順番までは 後3人
しかし
叫び声が
「助けて 門を開けて 開けて」
子供が走って逃げてきた
すぐ 後ろには スライムが3匹も
子供は街の中に逃げることが出来たが
スライムは門のすぐ側でうろうろと
「今日はダメだな 諦めるか 違う門に行ってくれ」
2人の子供はスライムの様子を見るために外壁の上に
「お兄ちゃん あれがスライムなの」
「そうみたいだな 俺もはじめて見る」
「ねぇ お兄ちゃん あれ」
「んっ どこだ」
「ほら 女の子 小さな女の子が1人で森に」
「なっ」
4歳くらいの小さな女の子が1人で恐ろしい魔物のいる森の中に
2人の子供はすぐに門に
「すみません 女の子が 小さな女の子が森の中に入っていきました」
「なんだと くっ 他の門だな お前達は無理はするなよ」
「えっ 助けに行かないんですか」
「冗談をいうなよ 俺はスライムにも勝てないんだぞ あの森に入れるのはレベル30以上の者が6人以上いないと厳しい そんな者はこの街にはいない」
「お兄ちゃん 助けてあげないと」
「無理を言うな」
「でも お兄ちゃんの足なら」
「スライムがいるんだぞ それに 森の中には足の速い魔物が沢山 大人でも無理なんだ」
「でも 私より小さな女の子だったよ」
「うっ もう 行くぞ」
「私 行ってくる」
「なっ ダメだ」
「私 足なら自信ある お兄ちゃんにも負けないもん」
女の子は門に
門にいた男は止めようとしたが
女の子は街の外に
森の方へと走っていった
男の子は すぐに外壁の上に登り 妹を確認するが
いない
街のすぐ側にいた3匹のスライムが森の方へと移動している
女の子を追って移動したのだろうか
男の子は しばらく呆然と立ち尽くし とぼとぼと門に移動する
「諦めろ 無理だぞ」
「でも 妹なんです」
「あの森には 狼の魔物や 更に恐ろしい 大狼の魔物がいる 見つかれば逃げることなんて出来ないんだ おそらく もう」
「えっ そんな 俺が助けに行きます」
「止めておけ 俺に止める権利はないが 命は大切にしろ」
「俺が守るって 俺が守ってやるって 約束したんだ」
男の子はそう言って 街の外に
森の方へと走っていった
男の子は ゆっくりと森に近づき
木に隠れながら 辺りを確認する
魔物は見当たらないが
・・・
男の子は 唾をごくりと飲み込み
森の中へ
森の奥へと進んでいく
木に隠れながら 様子を何度も確認しながら
ゆっくり ゆっくり 中へ 奥へと
恐ろしい魔物が沢山いると聞いていたが
魔物は見当たらない
大丈夫なのか
男の子は ゆっくり ゆっくりと進んでいく
カサッ
男の子のすぐ横で音が
男の子が 横を見ると
飛んでくる青いスライムが
「ぐはっ」
スライムの体当たりに倒れるが
男の子はすぐに立ち上がり
「くそっ」っと叫び 痛みを堪え 森の奥へと走っていく
スライムに追われながら 森の中に
音をたてないのが 静かに探すのが無理になった男の子は叫ぶ
「ニコ どこだ 大丈夫か」
妹の名前を叫びながら 森の奥へと走って進む
前の方で何かが動く気配が
「ニコ ニコなのか」
男の子が近づくと
「うわああっ」
大きな2足歩行の豚の魔物が
オークが現れた
男の子は恐ろしさに足が震え 走ることが出来ない
逃げようとするが 足が震えて走ることが出来ない
男の子は それでも逃げようとするが
足がもつれて
倒れてしまう
オークは近づいてくる
「助けてくれ~」
男の子は叫ぶ
誰も助けにくるはずがない森の奥で
迫るオーク
男の子は死を覚悟した
これでニコに 妹に会えると
「やあっ」
女の子が鉄の剣でオークに攻撃をした
オークの腕は斬りおとされ
オークは唸り声を上げ 女の子に攻撃するが 女の子はヒラリっと攻撃をかわす
「やあっ」
更に女の子が剣を振り オークを斬りつけた
オークは バタンっと 倒れ お金を出した
「えっ えっ ニコ ニコ どうして」
魔物を倒したのは 剣で魔物を倒したのは妹のニコ
「お兄ちゃん 大丈夫」
「うん でも ニコ その剣は お前 強かったのか」
「えへへ 強くなったのよ 私がいれば大丈夫だよ お兄ちゃんもおいで」
「えっ えっ」
男の子は妹に手を引かれ 森の奥に
森の中に明かりが 焚き火が
肉の焼けるいい匂いが
女性と あの時の小さな女の子が笑いながら肉を食べていた
「ニコ」
「紹介するね この子が レーズちゃん そしてレーズちゃんのママ」
「えっ」
「レーズちゃん 私のお兄ちゃん」
「ふっふっ 一緒にどうですか」とレーズの母親が男の子に話を
「えっ えっ」
戸惑う男の子
肉を一緒にどうですか とは 意味が分からない
しかし 妹のコニは肉串を手に持ち
ガブリと
「えっ えっ ニコ お金持ってないだろ」
「ふっふっ その肉はニコちゃんが倒したオークの肉ですよ 解体もニコちゃんがしたんですよ」
「えっ えっ ニコが魔物を ニコが」
「えへへ レーズちゃんに鍛えてもらったんだ」
「えっ えっ 鍛えてって そんな時間は」
「レーズちゃんは強いんだよ」
「ふっふっ 遠慮しないで食べてくださいね」
男の子はごくりと唾を飲み込む
肉が目の前に
父が魔族との戦いに行ってからは
1年前の魔族と人族の戦いの時から肉は食べていない
毎日 大量の水と 街の外壁の内側に生えている草しか食べられなかったのに
目の前に肉が
「ほら お兄ちゃん 私が倒したんだよ 美味しいから 食べてよ」
「うん」
男の子は肉を口に
美味しい 美味しいと涙を流しながら 夢中で食べる
「おかわりも沢山あるからね」
男の子は混乱しながらも 夢中で肉を食べる
食べ終わると
男の子が「俺の名前はラノフです お肉ありがとうございました 妹を助けていただきありがとうございます」
「ふっふっ 可愛い子を助けるのは当たり前ですよ ねぇ レーズ」
「うん 可愛い子は必ず守らないといけないんだよね」
「ふっふっ そうよ そのために旅をするのよ」
「えっ あなた達は その 何者なのでしょうか もしかして神様の使いですか」ラノフが聞くと
小さな女の子 レーズが にこにこと笑いながら
「私は第4の英雄だよ」っと