ピンチ??
深層を探索しているといつもと雰囲気が違うことに気がつく。
「なぁ、なんかおかしくないか?」
「そうですね。ここまで魔物に遭遇しないのは初めてです」
探索を始めて30分ほど経ってまだ魔物の姿すら確認できていない。
「別の冒険者がいるか..もしくは」
そう言った途端地面が激しく揺れた。
ゲンマとダイヤモンドは素早く武器を構えた。
揺れはどんどん大きくなり立っているのが難しくなってきたと感じた瞬間、地面が割れた。
「飛べ!」
ゲンマはリコを抱えてダイヤモンドに回避するように声を掛けたが振り返った瞬間それが不必要だったことに気がつく。ダイヤモンドはすでに大きく後退して壁から壁に氷の橋を作っていた。
ゲンマはすでに地面を蹴って天井にぶら下がる寸前だったがダイヤモンドの作った足場に移動するために身体の向きを変えて天井を蹴った。
「さすが危機回避はお手の物だな」
「不穏な揺れだったので先に用意しておきました。地面が割れるまでは様子見をしていましたが流石に足場がないのはきついと思ったので移動しました」
完璧な判断だ。ダイヤモンドほどの機動力があれば事後でどうにでもなる。そして事前準備でセーフティポイント作成は終わっているため何が起こるかを観察していたのだろう。
「何かいますね..」
地面が割れて下の階に貫通したことで舞っていた砂埃が収まると黒ローブの人影が確認できた。
「あのときの奴か?」
ゲンマは少し大きな声で黒ローブに声をかける。しかし反応はない。
「怪しいですね..攻撃しますか?」
「いや様子を見に行く。ダイヤモンドはここでリコと待っていてくれ」
ゲンマはそう言って黒ローブのところに向かった。
ゲンマが黒ローブの側に着地すると大きな魔力が辺り一面を覆った。
「罠だったか..」
「罠..ではないな。ただの結界だよ」
黒ローブはゲンマの呟きに反応した。
「目的はなんだ?なぜ俺をここに呼んだ?」
「本題に入る前に後ろを見てみるべきだな」
黒ローブはそう言ってダイヤモンドがいた方を指差した。
「なっ!?」
振り向くとそこには信じられないことが起きていた。ダイヤモンドが倒れていてその横に黒ローブの仲間と思われる赤ローブがいた。
ゲンマはすぐに戦闘態勢に入った。しかしこの黒ローブでさえゲンマと同等の力の持ち主なのに後ろにあのダイヤモンドを倒すほどの赤ローブが控えている。
「手を抜いていられる状況ではないな..リミットオフ!」
普段ゲンマは力の7割までしか出せないように自分に制限をかけている。しかしこのレベルの相手にそれは通用しないと判断して全力を出すことにした。
「悪いがお前はすぐにくたばってもらう」
ゲンマは黒ロープに向かってありったけの魔力を放った。
本来2体1の状況で魔力を使い切るのは御法度だか、今は何よりも1体1に持っていかなければならない状態である。
魔力が黒ローブに当たって爆発が起きた。
「まずは1人..」
爆発の粉塵が収まり、黒ローブの消失が確認できたところで赤ローブの方に身体を向けた。
「次はお前だ!」
赤ローブは氷の端から飛び降りてきた。途中結界があるので魔法でも使うのかと思ったら当たる寸前で一回転してかかと落としで結界を叩き割った。
「魔法で形成された結界を体術て叩き割るのかよ..」
魔法で生成されたものは魔法で消すのが常識である。魔法を体術で打ち砕くのはその常識を超越しているものだけだ。
「化け物じみてやがる」
ゲンマは瞬時に相手との力量に差があることは気づいたが引くことはできない。幸い赤ローブは自分から仕掛ける気はないようなので先制攻撃で一気に決めることにした。
全筋肉に残った魔力で電気を送り込み、予めどのように動くのか命令を出しておく。ゲンマが命令したのはただの突き。しかし人間の出せるスピードをはるかに超えた突きは衝撃波と共に相手の身体を粉々にする。
「行くぞ..サンダーゲート!!」
ゲンマの身体は目で確認できないスピードで赤ローブに向かっていった。




