下層
下層はモンスターより気象の変化で命を落とすことが多い。1時間ごとに気象が変わり、対応できないものに容赦なく死を突きつける。だが俺たちは俺の防御魔法のおかげで影響を受けない。保存球というスキルで指定した人の周りに球状のバリアが張られる。バリアの中はスキルを使った時の周りの状態を保存し、その状態を維持する。
「しかしこの層に来るといつも思うけど、俺のスキルがなかったら各気象に対応する防具がないといけないっていう嫌がらせみたいな層だよな」
「そうですね。ここに一人で来るときは晴れる時間を待って1時間で駆け抜けなくてはならないので大変ですよ」
ちなみに下層の気象は24種類あるので1日に1時間は快晴があり、チャンスの時間となる。
「でもそれはダイヤモンドだからできるんだぞ。普通の冒険者は筋力強化なしで下層を1時間では突破できないからな」
「下層では魔物もほとんど出ませんし階層主も無視して進めるので筋力強化を使えば誰でも突破できますよ」
「でも筋力強化を使ったら深層で動けなくなるだろ?」
そう、筋力強化は確かに強力なスキルで誰でも使えるが使った後に休憩が必要である。それも1時間使いっぱなしになると2~3日は戦えない。
そんなことを話しながら走っているとやがて下層の中間地点までたどり着いた。下層の中間地点にはセーフティポイントがあり、ここは気象の影響を受けない。だがこのセーフティポイントはとても狭い。どれくらい狭いかというと大人が4人入ったら定員オーバーになるレベルである。今回は人数的に余裕もあるが特に疲れているわけでもないのでこのまま進む。
しかし中間点を過ぎてしばらくするとリコの走るペースが落ちる。疲れたのだろう。普段から体を鍛えてるわけでもないリコがいきなりこのペースで走り続けたらそれはバテる。仕方ないのでいったん止まる。
「おい、リコ。ペース落ちてるけど大丈夫か?別にスキル使ってるから休んでもいいんだぞ?」
「...やすむ」
リコはそう言ってその場に座り込んだ。
「わかった。ダイヤモンド、15分くらい休憩を取ろう」
「そうですね。水分補給もしますか?」
ダイヤモンドはそう言って、リコに水筒を渡した。リコは無言で受け取り、水分を補給してから横になって寝始めた。
「あれだけ魔法は使えるのに体力はないんだな」
「あの歳であれだけついてこれれば十分だと思いますが」
「体力は3人の中でもサーヤが断トツであるみたいだな」
おにごっこの時の逃げっぷりからしてサーヤはかなり体力のある方だと思っていたが、リコのこの様子を見るに同年代の子と比べると化け物じみた体力なのだろう。まだサーヤがバテたところを見たことがないので確信は持てないが俺がサーヤぐらいの頃よりも体力があるかもしれない。
「リコ様の周りは規格外の人が集まるようになっているんですかね?」
「どちらかというと姉貴の周りじゃないか?」
「ファルナ様の..確かにそうですね。あの方が一番規格外なので納得できる気がします」
姉貴の周りには強いやつが集まる。まるで引力があるかのように強いものが引きつけられる。これが姉貴の特性なのか、強い奴の特性なのかはわからないが、あの黒ローブが強さを求めているというのなら姉貴と関わり合いがあってもおかしくない。
15分後、、、
「おなかへった」
起きて一言目がこれである。ダイヤモンドはこのことをすでに予想していたのかリコが眠っている間に軽く食事の用意をしていた。時間的に俺も腹が減っていたので食事をとることにした。
「飯食い終わったら出発するけどリコはもう大丈夫か?」
「うん」
リコの疲労もだいぶ回復したようなので食事が終わり次第進むことにした。




