適正職業
デザートも食べ終わり、みんな満足したところでゲンマはルビーに話しかけた。
「明日の予定を決めようか。2人でクエストを受けてもいいんだがこのちびっ子達の面倒も見ないといけないから明日はサーヤとアリスの仕事探しに付き合うでいいか?」
「私は大丈夫ですよ」
ルビーが了承してくれたので明日の予定は決まった。今度は当の本人たちが何をやりたいのかを聞くことにした。
「2人とも何がやりたいか決まっているか?」
「サーヤはまだ決まってないけど体を動かせる仕事がいい!」
「楽でお金がたくさんもらえる仕事がいいわ」
まぁアリスの答えは論外だとしてサーヤの希望している条件は悪くない。体を動かす仕事というのは常に人手不足のため採用されやすいのだ。
「体を動かす仕事だと俺らみたいに冒険者をやったり、荷物運びの仕事だったりいろいろあるけどせっかくならサーヤの特技を生かせるのがいいな。サーヤは何か得意なことはあるか?」
「収納魔法なら得意だよ!リーちゃんの3倍くらいは容量があるの!」
「...リコの3倍?それは本当か?」
「うん。ただ使っているときは他のことを同時にできないの。だからいつもアリスに守ってもらうんだー」
サーヤは得意げに話してくれた。しっかりアリスのフォローもしているあたりやはりとても優しい子である。それにしても収納容量がリコの3倍ってかなり規格外である。リコは巨大なドラゴンを収納できるくらいの容量があるからそれの3倍だと俺が知っている中では姉貴ぐらいしかいない。姉貴は収納魔法を使わないで持ち歩くけど..
「なるほど、それはいい能力だ。だとしたらサーヤは運び屋をやるのがいいかもな」
「運び屋って何?」
「運び屋は依頼主が運送依頼を出した物を届け先まで運ぶ仕事だ。運び屋の仕事をやる条件として収納魔法が使えることと移動速度がBランク冒険者と同等でなくてはいけないんだが鬼ごっこの時の機動力があれば移動速度は問題ないし、収納魔法に関していえば現職の奴らよりも優秀だからすぐにでも働けると思うぞ。もしやってみたいなら運び屋で知り合いがいるから紹介してやるよ」
「じゃ運び屋やってみる!」
サーヤの明日の予定は決まった。後はこの問題児の仕事だ。
「アリスは何か得意なことはあるのか?ないならないでいいぞ。見栄を張ると後で痛い目見るから正直に答えろ」
「なんかサーヤの時と温度差がすごくない!?まぁいいわ。得意なことは戦闘よ!」
「銭湯?じゃ風呂屋に連れて行くから掃除がんばれ」
「わかったわ!ピッカピカに磨き上げてあげる...って違うわよ!戦闘!!戦う方よ。しかもなんか適当だし、サーヤの時みたいに一生懸命考えなさいよ」
「わかったわかった。じゃお前は冒険者でいいだろ?明日ギルドに登録しに連れて行ってやるよ」
「まだ投げやりなところがある気がするけどまぁいいわ。ちゃんと私が優秀ってことをギルドに伝えなさいね!」
鬼ごっこで瞬殺された奴が何言ってんのかと思ったがこれ以上アリスの相手をするのは疲れるので口を挟まず今日はお開きにすることにした。
「それじゃ俺はルビーを送っていくからみんなは先に帰ってくれ」
ダイヤモンドとフラーレンに3人を任せてルビーを家まで送って行く。
「なんか悪いな、明日はクエストに行く予定だったのに急に予定変えちゃって」
「いえ、サーヤちゃんとアリスちゃんの仕事探しも大切ですからね。クエストはいつでも行けますし」
「そう言ってくれると助かるよ。それにうちのパーティはルビー以外は冒険者しかしたことないから仕事探しの際にいてくれると心強いしな」
「そうですね。私は冒険者以外の仕事も副業としていろいろ体験させてもらっているので少しは2人の役に立てると思います。それより明日はサファイアのランクアップのほうが心配ですけどね」
「あぁあいつ普通にクエストこなしている分には問題ないがランクアップがかかると緊張して動きが硬くなるからな。前のランクアップの時もギリギリだったし」
「本番に弱い...とはまた違うんですよね。むしろここぞという時の集中力はダイヤモンド様と比べても遜色ないレベルですし」
「まぁあの集中力は確かにあいつの才能の一つだよな。あいつと初めて会ったときは驚いたよ。まだCランクの冒険者がAランクの魔物から逃げ続けている姿を見て将来が楽しみになってな。それが今ではあんな生意気に育ちやがって」
「私も今はランク的にサファイアより上ですがいつ実力が逆転するかわからないですね。最近伸び悩んでいますし...」
「ルビーのランク的に伸び悩むのは仕方ないことだけどな。ダイヤモンドでさえルビーと同じランクの時は苦労してたしな」
「ダイヤモンド様はどうやって乗り越えたんですか?」
「確か1ヶ月間ダンジョンに潜りっぱなしだったな。しかも武器なしで」
「えっ!?武器なしで1ヶ月...」
ルビーが何か良くないことを考え出したので俺は別の案を提案した。
「まぁでもルビーが同じことをやっても効果は少ないかな。どちらかというとルビーは限界まで魔力の放出を続ける修行のほうが効果がありそうだな」
「魔力の放出を続ける?」
「あぁ、例えば魔法耐性がむちゃくちゃ高い魔物を魔法だけで倒すとかかな」
「それって...」
「かなりきついぞ。戦いのセオリーを無視しているからな。ただこの修業は俺もやったがかなりの効果があった」
「ゲンマ様もやったんですか!?」
「5年くらい前にやらされたと言った方が正しいかな。姉貴が物理攻撃完全耐性の首輪を魔法耐性の高いトライデントウルフにつけて俺と戦わせたんだ」
「ファルナ様は相変わらずですね...ちなみに魔法効きましたか?」
「全然効かなかった!トライデントウルフは俺の雷魔法が電気マッサージ程度にしか思ってないらしく自分で攻撃を食らいにくる始末だったよ」
「それでどうやって倒したんですか?」
「氷魔法と炎魔法を交互に連射して気絶する直前まで続けた。最後の方は無意識に魔法出してたからトライデントウルフが生きているかもわからず、。気がついたらトライデントウルフは毛の一本もなく消滅してた」
「ゲンマ様が気絶する直前まで魔力を消費するって...私にできるでしょうか...」
「ルビーは俺より魔力調節がうまいから俺より早く倒せると思うぞ。それに5年前の俺の魔法技術だったら今のルビーのほうがレベルが高い。複合魔術とか使えば何とかなると思うぞ。ルビーがやってみたいなら今度用意するが?」
「...そうですね少し不安ですが時間があるときにお願いしたいです」
「わかった。準備はしておくからやりたくなったら言ってくれ」
ルビーが強くなるということはパーティの総戦力が高くなるということなのでとても助かる。今までできなかったことができるようになるのだ。あとはサファイアがしっかり育ってくれれば理想のパーティが出来上がる。そんなことを考えている間にルビーの家に着いた。
「じゃ明日はよろしくな」
「はい、送ってくれてありがとうございます。ではおやすみなさい」
「おやすみ」
ルビー送り終わり、1人になった俺はサファイアのことが少し不安になったがこればっかりは俺がどうこうできる問題ではないので、サファイアが無事ランクアップできることを祈りながら帰宅した。
約半年で30話まで書き続けられました。これからも書き続けていくつもりなので応援よろしくお願いします!
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