夕食
店に入りダイヤモンドたちを探していると後ろから声をかけられた。
「ゲンマ様、こっちです」
振り返るとそこにはウェイトレス姿のルビーがいた。
「おうルビー、今日もバイト?」
「はい今日もバイトです。って言っても友達の代わりに夕飯時の忙しい時間だけの臨時ですけどね」
「友達の代わりか。明日クエストがあるからあまり遅くならないようにな」
「それは大丈夫です。お客さんの数が減ってきたのでそろそろ上がれると思います」
「じゃあバイト終わったら一緒に食べようぜ。飯はまだ食べてないんだろ」
「では終わったらご一緒させていただきます。席は2階の窓際です。ダイヤモンド様がゲンマ様とリコちゃんの分も料理は注文しているので飲み物だけ選んでもらえますか?」
「俺はお茶でいいかな。リコはどうする?」
「あまいの」
「ではリンゴジュースでいいですか?」
「うん」
「わかりました。少々お待ちください」
ルビーが仕事に戻って行ったのでリコを連れて2階に向かう。階段を上り、窓際の席を見るとフラーレンがサーヤとアリスに挟まれて幸せそうにしていたので苦笑いしながら席に着いた。席についてすぐリコの両隣にサーヤとアリスがやってきて質問攻めをしていた。
リコは2人からの質問に一つも答えずにテーブルの上にあるパンをもしゃもしゃ食べていた。
リコがパンを食べ終わるころには2人とも質問疲れしてサーヤは諦めて席に戻っていった。サーヤが戻るのを見てアリスも諦めたのか最後の質問に移った。
「この前言っていた一緒に住んでいるかっこいい人って誰の事なの?」
んっ?一緒に住んでるかっこいい人?一緒に住んでいるのは俺とダイヤモンドとフラーレンだけだからかっこいい人って言ったら...まぁダイヤモンドか。そんなことを考えているとアリスが悲鳴みたいな声を上げた。すぐにアリスのほうを見るとアリスはリコに頭を掴まれていた。一見幼女達が戯れているだけに見えるがリコの力を考えるとあれは相当痛いだろう。
「おいリコほどほどにしとけよ。あんまやりすぎるとアリスの頭が潰れるぞ」
リコにやりすぎないように注意すると不機嫌そうにアリスの頭から手を放した。ちょうどそのタイミングで料理が運ばれてきたので泣いているアリスを座らせてから食事を始めた。
机の上の料理の量が折り返しに差し掛かったところでルビーが仕事を終えて、自分の料理を片手にやってきた。
「仕事お疲れさま」
「ありがとうございます。隣、失礼しますね」
ルビーはそう言って俺の隣に座ってきた。仕事終わりなので服はそのままだった。この店の店員が来ている服は店長がこだわっていると噂で聞いて何度か来たがルビーが断トツで似合っている。元の可愛らしさにに服がマッチしていて満場一致の100点が出そうなレベルである。少し見惚れているとルビーと俺を挟んで反対側にいるリコが俺の足を踏んできた。しかも周りには気づかれないに素早く踏んできたせいでその分威力が増していた。声をあげそうになったがなんとか堪えてリコを睨むとリコは知らんぷりをして料理を食べ続けていた。相手にしても疲れるだけなのでみんなに明日の予定を話すことにした。
「明日の予定なんだがちょっと変更がある。まずダイヤモンドは変わりない。サファイアの昇級試験について行ってくれ。問題は俺たちの方だ。ルビーにはまだ紹介していなかったな。フラーレンの右にいるのがサーヤで左にいるのがアリスだ」
「サーヤちゃんとアリスちゃんですね。よろしくお願いします」
「それでこの2人を明日教会に連れて行こうと思うんだ。ルビーは教会のこと詳しいから手続きとか頼みたいんだけど大丈夫かな?」
「そうですね...私は大丈夫なんですが教会のほうがきついかもしれません」
「でも3人旅立って行ったんだろ?なら2人くらい受け入れられないのか?」
「それが今日の朝、新たに4人受け入れたところでしてむしろ前より人数が増えて生活が厳しくなるらしいです」
「今日の朝か...タイミングが悪かったな。しばらくうちで面倒見ないといけないか」
(これ以上はダイヤモンドの負担が大きすぎるんだよな...)
チラッとダイヤモンドのほうを見ると問題ないとばかりに頷いたのでとりあえずしばらくうちで面倒を見ることにした。しかしダラダラと居つかれても困るので条件を付けた。
「サーヤとアリスは1か月うちで面倒を見る。それを超えたら何があっても追い出す。だからそれまでに自分が生きていく手段を見つけてくれ」
「生きていく手段?」
サーヤが首を傾げたので少し丁寧に説明する。
「つまり自分でお金を稼ぐ方法を見つけるということだ。飲食店で店員をやるもよし、冒険者になるもよし自分の納得する生き方を見つけてくれ」
「わかったー!ちなみにゲンマのおすすめは?」
「俺のおすすめか?うーん俺は冒険者しかやったことないからな。でもサーヤならどの仕事でもうまくいくと思うぞ。だから自分が楽しく働ける仕事を選んでくれ」
「ちょっとゲンマなに勝手に決めてんのよ。しかも1か月で自立なんてできるわけないでしょ!せめて半年くらい用意しときなさいよ」
こいつは俺とサーヤの癒しの時間を邪魔したから罰が必要だ。
「なにっ!?アリスは半月でいいのか。そうか頑張ってくれ。お前に与えられた猶予は半月だ!それを過ぎたら蹴ってでも追い出すからな。覚悟しとけ!!」
「あんたバカなの?なんで減ってんのよ。増やしなさいよ。は・ん・と・し!!」
「半月?だからわかってるって。よーしもうこの話はおしまいだ」
「全然わかってないじゃない!しかもなんで私だけ減ったの?おかしいじゃない。平等にしなさいよ!」
「むっ確かにアリスだけ期間が変動するのは不公平だな。そしたらサーヤの期限を1か月半にしよう。これで元通り、2人で2か月だ!」
「ずるいずるいずるいずるいずるいずるい!!」
アリスが涙目で俺に対して抗議をしてくる。そんな3歳児みたいなことを恥ずかしいとも思わずにやってのけるアリスにみんな苦笑いだった。ただ1人を除いて...
「..アリスうるさい」
リコがそう言って席に座ったままアリスに向かってデコピンをした。するとアリスはデコピンの風圧だけでそのまま後ろに吹っ飛んだ。えっ何その技恐ろしい。魔力は感知できなかったので今のは単純にデコピンの威力だ。机を挟んであの威力ということは直撃したらおでこが陥没するだろう。
「さすがにやりすぎだろ...おいアリス大丈夫か?」
アリスは頭を抱えて転がりまわっていた。たぶん吹っ飛ばされて床にたたきつけられたときに頭をぶつけたのだろう。そして少ししてから立ち上がった。
「あーびっくりした。ゲンマ!ちょっと私の頭見て。割れてない?大丈夫?」
自分の後頭部を俺に見せてきた。若干切り傷があったが言われないと気付かないくらいの傷だったので気づかれないように回復魔法を使って直しておいた。
「あぁ特にケガはしてないみたいだぞ」
「はぁよかった。私の天才的な頭脳が台無しになるところだったわ」
アリスの勘違い発言が飛び出したところでデザートが運ばれてきた。そこにいた全員がアリスの発言を無視してデザートの方を見ていた。さすがに全員に無視されたことで傷ついたのかアリスは無言で自分の席に戻っていった。




