帰宅
サーヤを回収し、ダイヤモンドに伝えた集合場所に向かう。
「ゲンマ様、お疲れ様です」
「あぁダイヤモンドも付き合ってくれてありがとう。おかげでサーヤを楽しませることができたよ」
「それならよかったです。アリスさんはどこですか?」
「あっ忘れてた。ちょっと連れてくるから待っててくれ」
そう言ってサーヤをダイヤモンドに預けてアリスのもとに急ぐ。
「ちょっと!遅いわよ、いつまでこんな格好でいなきゃいけないのよ早く解いてよこのバカ、アホ!」
逃げないようにひもで縛っておいたがそれが気に入らなかったらしく顔を見たとたんに文句を言ってきた。俺は紐を解かずにアリスを肩に担ぎ、サーヤのもとに戻った。
「あーゲンマがアリスをいじめてるー。ダメだよ!仲良くして!」
「サーヤ、アリスはな俺が迎えに行ったのに文句を言ってきたんだ。だからこれはいじめてるんじゃなくて躾けているんだ。悪いことをしたら叱られる、当たり前だよな?」
「うん!それはアリスが悪いね。ちゃんと躾けてあげて」
サーヤが笑顔で躾けを許容してくれた。意外と容赦ない。
「ちょっとサーヤ騙されちゃだめよ!ゲンマは嘘をついてるわ。私は文句なんて言ってないのよ」
アリスが嘘をついた。サーヤが首をかしげる。
「ゲンマーどっちがほんとのこと言ってるの?」
「もちろん俺だが?」
「じゃちょっと座って」
サーヤが何をするのかわからないがとりあえず従うことにした。俺が座るとサーヤは俺の顔を両手で支え、じぃーっと目を見つめてきた。10秒くらい見つめたのち、同じことをアリスにもやっていた。そして一呼吸して
「アリスが嘘ついてる!」
と元気よく判定を下した。ここから15分位アリスのお仕置きして、日が傾いてきたところで家に帰ることにした。
「俺たちはそろそろ帰るけど2人ともあまり遅くならないうちに帰るんだぞ?」
「「ゲンマと一緒に帰る!!」」
そう言って最初の時みたいに両足に2人がくっついてきた。
「いやでも...」
困った顔をしてダイヤモンドのほうを見るとダイヤモンドも少し考え込んでいた。しばらく考えてダイヤモンドが案を出してくれた。
「あのーゲンマ様1ついいですか?」
「何にかいい方法があるか?」
「いい方法とは言えませんが現状よりは2人共いい生活ができるかと」
「全然それでいいよ。でその方法は?」
「協会に預けるのはどうでしょう?」
教会か。確かに身寄りのない子供が最終的に行き着く場所は教会である。しかし協会の生活はなかなか過酷で命を落とすものも少なくない。それでも外で1人で暮らしていくよりは生存率がぐんと上がる。
「教会か、でも最近はどこも定員オーバーで引き取ってくれないから事情を知らないこの町の教会にいきなりは厳しくないか?」
「はい、なので私たちの町の教会に連れていきます」
「うちも定員オーバーじゃなかったか?」
「それが今日の朝、教会の最年長の子が3人仕事を見つけて旅立って行ったらしいので空きがあるかと」
「へぇーよく知ってるな。なら連れて帰るか。2人ともそれでいいか?」
「ゲンマも一緒?」
「俺は自分の家あるから一緒ではないかな」
「じゃやだ!」
サーヤがごねる。アリスも同意見のようで二人とも足を離さない。
「一緒ではないが遊ぶことはできるぞ?毎日は無理だが週に2、3回くらいなら」
そう提案すると俺の足にしがみついている2人の手が少し緩んだ。そしてしばらく考えてサーヤが俺に確認してきた。
「屋根もあるし、食事もあるしゲンマにも会えるんだよね?」
「あぁそれに面倒見てくれる人もいるぞ」
「ならそこに行く。今の状況だとずっとリーちゃんに迷惑かけちゃうから」
リーちゃんという人物が何者かはわからないままだがサーヤは納得してくれた。
「んでアリスはどうする?」
「サーヤが行くなら私も行くわ」
「そうか、じゃあ一緒に帰ろう。あっ2人の家に行って必要なものを取ってこないとだな。2人の家はどこだ?」
「家なんてないわよ。だからこのまま連れてって」
アリスがさらっとすごいことを言っていた。
「家がないって...2人ともどんだけ過酷な生活してたんだ?」
「雨と寒ささえ防げればサーヤたちはどこにでも住めるよ?」
「それに必要なものって言っても食糧調達で精一杯だったから毛布以外の持ち物はないわ。あれももう擦り切れてボロボロだからわざわざ取りに行く必要はないし」
「...2人がかなり過酷な生活をしていたのはわかった。とりあえず今日はすぐに帰ってうちに泊まって、明日の朝、協会に向かおう」
サーヤもアリスも納得してくれたので帰ることにした。2人の足だと時間がかかるので俺がアリスを、ダイヤモンドがサーヤをおんぶして帰ることにした。