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娘もかなり暴力的です。

コンコン!

コンコン!

ドアがノックされる。

こんな時間になんだよーまだ3時間しか寝てねーよ

めんどくさがりながらも止むことのないノックの音を止めようとドアに向かう。

ドアを開け少しイライラしながら叫ぶ

「うるせーよ何時だと思ってんだ!!」

しかしドアを開けても目の前には暗闇が広がる。

なんだ聞き間違いかと思いドアを閉めようとすると足元でなにかがモゾモゾ動いている気配がする。

不思議に思い足元を見るとそこには小汚い少女がいた。少女は真っ直ぐに俺の方を見て一枚の手紙を渡してきた。そしてその場で丸まって寝始めた。


とりあえずこんなところで寝させて風邪を引かせるのも気が引けたので起こして家の中に入れ椅子に座らせた。そして少女の渡してきた手紙を読んだ。


「ゲンマ久しぶりだな!お前の大好きなお姉様からの手紙だぞ嬉しいだろ?さて、ダラダラと長ったらしく書く時間もないので単刀直入に言う。お前に手紙を渡した女の子いるだろう?あいつは私の娘だ。今ちょっとこっちはまずいことになっててな、しばらく預かれ!以上だ。じゃよろしく!」


……相変わらずだな。昔から人の都合なんて全く考えない。しかもたちの悪いことに断ると本気で殴られる。

これでも俺はだいぶ強いはずなんだがな。いや姉が規格外すぎる。なんせ通常パーティで挑むSSランクのクエストを1人で無傷でこなしてくるからもはや化け物だ。

さてとりあえず姉さんの娘か少し気になるな。


「おいチビ起きろ!」


そう言って軽くデコピンをする。

パチン!

いい音がする。そう思っていると指を掴まれた


「いたい」


少女は無表情ながら若干ムスッとした表情をして俺の指を掴んできた。


ボキッ


あ?…いてぇーーーーー!!!


容赦なく折ってきた。


姉の子だと確信した出来事だった。俺が8歳の頃、姉を起こした時と同じ対処の仕方をされた。


「お前ふざけんな!」


そう言いながら指に回復魔法をかける。骨折などすぐ治せるが痛いものは痛い。


「わたしもおでこいたかった。だからおあいこ…zzz」


何事もなかったように寝始めた。こいつに姉と同じ血が流れているなら朝まで手出ししないのが得策だ。ベッドに戻って朝まで寝よう。そして明日考えよう。そう思いながら俺は深い眠りについた。


朝起きるとお腹のあたりに重さを感じた。しかもなんかベトベトする。布団を剥ぐと俺のお腹の上によだれまみれの姉の娘がいた。


あーやっぱ夢じゃなかったかー。しかもなんかめっちゃよだれ垂らすし、汚いなー

チビをベッドから落とし汚れた布団を見ながら呟いた。


とりあえず布団洗わないとだなー面倒だしやつを呼ぶか。


そう思い名前を呼んだ。


「おーいダイヤモンドいるか?」


「はい、どうしました?」


相変わらず反応が早い。やっぱ有能だな。


彼女の名前はダイヤモンド。まぁ簡単に言うと俺のパーティメンバーだ。顔がとても整っていて、髪は銀髪。そしてスタイルも抜群だ。その上冒険者ギルドのランクはSSランクと実力も申し分ない。俺の部下にはもったいないくらいだ。なんで彼女が俺の部下をやっているかというと、まぁよくある話で彼女の命を救ったのが俺だったからだ。






彼女は元々ソロで活動していた。当時彼女は親友に裏切られ、両親を殺されていた。両親の敵討ちを終え、復讐を完遂させた彼女に残されたのは空っぽの心と力の渇望だった。以来彼女はAランク任務をソロでこなし続けたらしい。そしてある日、受けたAランクの魔獣討伐任務で運の悪いことに魔獣の突然変異が起きた。本来これはSランク任務に格上げされるため一度ギルドに報告したのち、緊急クエスト扱いで新たにパーティを派遣する決まりとなっている。しかし彼女は1人で討伐することを選んだ。

1時間ほど戦い続けたのち彼女は自分がこの魔獣に勝てないことを悟ったらしい。そして諦めて武器を捨てた。魔獣も諦めたことを悟ったらしくとどめの一撃を繰り出そうとしている。


「お父さん、お母さん…ごめんなさい」


そう言い目を閉じた。

魔獣が声を上げて向かってくる。ここで彼女の身体は八つ裂きにされるはずだった。しかし八つ裂きにされたのは魔獣の方だった。魔獣の断末魔の叫びが聞こえ目を開けるとそこには魔獣のバラバラの死体があった。びっくりしている彼女に話しかけた。


「なんで今諦めた?まだやれただろ?逃げようと思えば逃げられただろうし」


彼女は俯き、少し考えたのち答えた。


「私にはもう生きている意味がないのです。

両親を殺されて、裏切った親友だったものに復讐し、ただ強さを求めて戦うだけでした。

なので負けた時は諦め死ぬと決めていました」


そう言った彼女の目には生気が感じられなかった。


俺は少し考えた。彼女はAランク任務をソロでこなせる優秀な存在だ。鍛えればSSランクにはなるだろう。なら長年探している背中を預けられるパーティメンバーにふさわしいのではないか。そしてこの先こんなチャンスはないだろう。彼女には悪いが他の人との余計な繋がりがないというのは俺にとって好都合である。

そして深呼吸をして彼女に提案をした。


「君の過去のことはよくわからないけどその強さは魅力的だ。俺のパーティに入らないか?」


「わたしの見る限りあなたはとても強い。わたしの助けが必要だと思いませんが」


「いや俺が見るに君はとても有能だ。今は多分Sランク...いやまだAランクくらいだろうが俺とパーティを組んで鍛えればSSランクには確実になれる。もっと言うとSSSランクになれる可能性も秘めている。SSSランクになればもう大切な人を傷つけないで済むだろう。」


「わ...わたしにそんな可能性が?...いやしかし今、わたしには大切な人などいない。力をつけてもそれを使う理由がなければ宝の持ち腐れだ。」


「なるほど...うん、ならこうしよう。

俺は今、君を魔獣から救った。これは間違いないな?」


「はい、確かに助けてもらいました。」


はい、肯定してしまいました。俺の勝ち。


「じゃあ君も俺のことを一回助けてくれ!それでこの借りはチャラだ。

しかし今の君の強さでは俺を守れない。なので俺とパーティを組んでもらい俺より強くなってもらう。異論反論抗議口答えは一切受け付けない。わかったな」


彼女は数秒ポカーンとしてからクスッと笑い丁寧な口調となり返事をした。


「はい、わかりました。しかし条件を1つ提示されていただきます。わたしの立場はあなたの部下とさせてください。

わたしとあなたでは実力に圧倒的な差があります。なのである程度背中を預けられるようになるまではパーティメンバーではなく部下として扱ってください。

この条件を飲んで頂けるのであれば、わたしはあなたの役に立つことを生きがいにして、これからあなたに使えていきます」


「んー部下かーまぁ今はそれでいいか。よろしく」


こうしてダイヤモンドは俺の部下になった。




「あぁおはようダイヤモンド」


「おはようございます。何か任務ですか?」


「いや任務ってほどじゃないんだけど、

昨日の夜に姉貴が自分の子供を俺に押し付けてきたんだよ。それでそいつのよだれで服と布団がデロデロになったから洗濯をお願いしたいんだけど」


「洗濯ですね?でしたら今からやるとこでしたので一緒に洗ってしまいましょう。

それにしても姉上様のお子様ですか..強そうですね」


「かなり強いぞ!昨日の夜、油断していたら指折られたからな」


「えぇ!?ゲンマ様の指をですか?治癒魔法使いますか?」


「いや治癒魔法はもう使った。だが油断していたとはいえ骨を折られるのは久しぶりだったからな。取り乱して1回で完治しているのに3回も使ってしまった。」


「ゲンマ様が取り乱すなんて珍しいですね。少し見てみたかった気もしますが」


「しかしゲンマ様が骨を折られたのは2年前に姉上様が酔っ払って殴られた時以来ですね」


「まあアレは骨が折れたというより砕けたという言い方の方が正しいだろうな

その前は3年前に姉貴と行った魔獣討伐で飯がまずいってぶん殴られた時か」


あれ?俺姉貴関連以外で骨折れたことないんじゃね?そう思ったが口に出さず心の奥底にしまい込んだ。


「ではわたしは洗濯をしてきますので何か命令があれば呼んでください」


そう言ってダイヤモンドはよだれでベトベトになった俺の服と布団を持って洗濯に向かった。



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