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魔王に転生したシリーズ

転生して魔王になったけど勇者が来なくて退屈なので冒険者ギルドに登録しました

作者: 狩野生得

 私、安里真優(あさとまゆ)。女子高生だったけど、転生して魔王になったの。


 転生できた理由?

 私、考える前に動いちゃうタイプだったの。

 そんな私が下校途中で通り魔が人を襲う場面にたまたま居合わせたわけ。

 あっ、助けなきゃって飛び込んだら、代わりに刺されて死んじゃったの。

 それが神様の目に留まったのね。

 気が付いたら、黒髪の女神様の前に立ってたの。

 それで、転生の話を聞かされて、

「あなたには魔族がお勧めですね。退屈しませんよ」

 って言われたから、素直にOKしたのよ。


 神様が勧めてくれただけのことはあったわ。

 魔界の王族に転生した私は、小さい頃からずば抜けて強かった。

 十五歳で成人したのと同時に七大魔王の末席に加わり、一年で第一席になったの。

 それに、魔王になるまでも、魔王になってからも、毎日が楽しかったわ。

 第一席の魔王、つまり最強魔王になるっていう目標があったからね。

 私が最強魔王の座を目指したのは、勇者と戦えるって聞いたからよ。

「私に従うなら世界の半分をお前にやろう」

 とか、

「今のはメ○ゾーマではない。メ○だ」

 とか、言ってみたいじゃない?

 幼いころ、小さな胸をワクワクさせてたの。

 ……今も小さいことには触れないように。それ、魔界じゃ禁句だからね!


 でも、そこで私を落胆させる現実が待ってたわ。

 今の私、ものすっごく退屈なのよ。

 荘厳できらびやかな玉座の間で、お姫様なドレスを着て、玉座に座すこと三ヶ月。

 勇者が一度も来ないんですけど…。

「あー、退屈ねー。ねえティア、勇者って、まだ来ないの?」

 ティアは私の使い魔で、鳩サイズな金毛のドラゴン(♀)。今は頭に乗ってるわ。

「ご主人様、魔王城ここは魔界の最奥です。多少できる程度の勇者パーティでは、たどり着くことすらできません」

「えっ!?」

「もしたどり着いても、門番に苦戦するレベルなら、他の魔王殿に瞬殺されるだけです」

「うそっ!? …ねえ、それ本当なの?」

「はい。お一方ひとかたならともかく、魔王殿を全て倒すなど、人族の勇者には不可能です」

 オー(Oh)マイ(my)ガー(God)

 なんてことなの…。

 それじゃ、私、この先ずーーーーーーーっと退屈な毎日を送るわけ!?

 冗談じゃないわ! 

 私には刺激が必要なの!

 とは言っても、魔界をあちこち出歩くわけにはいかないし…。

「よし、決めた! ティア、魔界を抜け出すわよ」

「それで、どうなさるおつもりなのですか?」

「決まってるでしょ。冒険者になるのよ」

 この世界はテンプレと言っていいぐらいファンタジーな世界。当然、人間の世界には冒険者ギルドがある。

 出稼ぎ冒険者してる魔族もいるから、下調べもできる。

 魔界は実家と他の魔王に任せて、地上へ行くわよ!


 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


 ティアを頭の上に乗せ、私は街道を歩いてる。この先にグラドーって大きな町があるの。

 そこで冒険者として登録して、退屈じゃない日々を過ごすのよ。

 私の見た目は黒髪でスレンダーな少女だから、注意してれば正体はバレない。

 服装もそれっぽくしたから、どこから見てもテイマーね。

 キャラ設定は、博識な祖父と山奥で暮らしてたけど、亡くなったから町に出てきた少女よ。


 途中、ゴブリンやらオークやらが集団で襲ってきたけど、全てワンパンキル。

 落とした魔石を換金すれば、宿代には余裕で足りそうね。

 …しかし、地上の魔物って、雑魚いわね。

 魔王覇気を抑えてるだけの私を襲うなんて、危険感知能力が無さすぎじゃない?

 魔界の魔物じゃあり得ないわよ。


 しばらく歩いてると、嫌なものが感知に引っ掛かった。 

 馬車二十台の商隊がオークの群れに襲われてる。

 前世の知識ラノベじゃ大人数の商隊は魔物に襲われなかったんじゃ…?

 …あ、地上の魔物は見境なく襲ってくるんだった。

 などと考えてる間に、商隊側がジリ貧状態に。

 これは予想外ね。

 助けないという選択肢はない。でも、力を出しすぎると正体がバレるかもしれない。

 そして何より、私の直感が告げてる。

 厄介ごとの予感しかしない、と。

 でも、人命には代えられないわ。

 私は現場に急いだ。


 ふう、何とか間に合ったようね。

 二匹のオークが魔法使いのオジサンを襲う。

 後ずさり中のオジサンは、運悪く足を取られて転んだ。

 そんな状況よ。

「えいっ!」

 私は見た目はメ○ゾーマ、威力はメ○な炎魔法を使った。

 …私のメ○は、人間のメ○ゾーマ以上、メ○ガイアー並みなの。正体を隠すための偽装よ。

 巨大な火の玉が二匹のオークを灰にする。

 オジサンは間一髪で助かったわ。

「お、おお…。すまんな、嬢ちゃん。助かったぜ」

「話は後で。オークを片付けないと」

 私は炎魔法を連発。全てのオークを片付けた。


「ありがとうございます。さぞや名のある魔法使い様とお見受けいたします」

 商隊のリーダーが深々と頭を下げてくれた。

「いえいえ、どういたしまして。あっ、それと、私、魔法使いじゃないですよ」

「えっ!?」

「私、テイマーの卵で、冒険者になりに行くところだったんです」

「さ、左様でございましたか。ということは、グラドーまで?」

「はい、そうです」

「でしたら、ぜひご一緒願えませんか。改めてお礼を差し上げたいのです」

「そんな、お礼なんていいですよ」

 ここで、魔法使いのオジサンが割って入る。

「いいや、よくない。お嬢ちゃん、冒険者になるんだろ? だったら、今みたいな場面で報酬をもらうのは当然の権利だ。むしろ、受け取るのが義務といった方がいいぐらいだな」

「その通りでございます。ですから、ぜひ」

「わかりました。それじゃ、お言葉に甘えて、お願いします」


 馬車に揺られること一時間と少々、私たちはグラドーに到着した。

 この世界の町は、魔物に備えて高い壁や塀で囲まれてる。

 東西南北に門があり、朝七時から夜七時の間だけ開いてるの。領軍の兵士が門番よ。

 商隊は顔パス。

 私は身分証が無いから、簡単な審査を受けた。

 町に来た目的を話して、犯罪歴を調べる水晶球に手をかざして、税金として銀貨を一枚払う。

 …事前に聞いた通り、魔界と同じシステムなのね。


 冒険者ギルドの前で商隊とはお別れ。

 魔法使いのオジサンの後について、私は中に入った。

 すると、オジサンの顔を見た受付のお姉さんが、私たちに声をかける。

「あっ、サブマス。お疲れさまでした。ところで、後ろの方は?」

 なん…だと…。

 ただの冒険者だと思っていたオジサン、サブマスだったの!?

 …確かに他の護衛より強かったわね。

「おう。ご苦労。このお嬢ちゃん、冒険者になりたいっていうから連れてきたんだ。実力は俺が保証する」

「了解しました。それでは、こちらへどうぞ」

 ?

 お姉さんに案内され、私は個室へ入った。続いてサブマスも入ってくる。

 …新人の登録はカウンターで必要事項を書くだけって聞いたんだけど?

 私は言われた通り席に着いた。正面にサブマスが座り、お姉さんは立ったままよ。

「それでは、こちらに必要事項を記入してください」

 私は渡された用紙に順に書き込む。

  名前:マユ・アサト

  性別:女

  年齢:十六

  職業:テイマー

  特技:魔法全般、武芸全般

  冒険者の経験:無

 名前は前世のものを使うって決めてた。今の名前を書いて、無駄な騒ぎを起こしたくないからね。

「はい、終わりました」

 お姉さんは用紙を確認し、サブマスに手渡した。

「お嬢ちゃんはマユか。いくつか聞きたいんだけど、いいか?」

「はい。何でも聞いてください」

「まず、魔法は誰に習った?」

「おじいちゃんです」

「頭に乗ってるドラゴンは、自分でテイムしたのか?」

「おじいちゃんに少し手伝ってもらいました」

「商隊が襲われてたのを、どうやって知った?」

「感知魔法です。大丈夫かな? と思ってる間に形勢が悪くなったんで、急いで駆け付けました」

 私は正直に答えた。

 …変ね? 二人の顔が険しいわ…。

 少し間をおいて、サブマスが真顔で聞いてくる。

「なあマユ。お前さん、何者なんだ?」

「何者って、冒険者に憧れてたテイマーの卵です…けど?」

「嘘つけ! オークキングやジェネラルを一撃で倒せる炎魔法を無詠唱で連発。そんな真似、宮廷魔導士のトップにもできんぞ!」

 おおっと。あいつら、ただのオークじゃなかったのね。言われてみれば、色がちょっと違ってた気もするわ。

「それに、そのドラゴン。神竜ティアマトでは? 伝説だと、魔界の七大魔王総がかりで相打ちだったという」

 お姉さん、惜しい! ティアは神竜じゃありません。その戦いの後、魔神竜に進化してます。名前は同じですけど、倍ぐらい強いです。

「そして感知魔法だ。俺も使える方だが、オークキングどもに襲われたときは近くに誰もいなかった。ところが、だ。信じられない速さで誰かが近付いてきて、炎魔法を撃った。それがマユ、お前さんだ」

「それって…、マユさんは王国一のサブマスより広い範囲を感知できてたってこと…ですか? 信じられません!」

「ああ、俺も信じられなかった。しかも、移動速度もとんでもねぇ。俺じゃ、強化魔法をどれだけ重ね掛けしても絶対無理な速さだった」

 …やばい。私、知らないうちに相当やらかしちゃってたんだ…。

 視線をそらしたまま私が黙っていると、サブマスが口を開いた。

「まあ、答えられないなら、それでもかまわん。冒険者は実力が全て。規則を守り、結果を残せばそれでいい。強い奴は大歓迎だ」

「それじゃあ」

「ああ。マユ、お前さんは今日から冒険者だ。それで、一つ相談なんだが、ランクはどうする?」

「どうする、とは?」

「ランクはS~Gの八段階。初心者はGから始めるのが規則だ。だが、実力がある者は最高でCから始められる。お前さんにはその資格があるんだが、どうする?」

「だったらGからお願いします。私、一番下から上を目指すのが好きなんです」

「…そうか、わかった。それで、これは俺からの頼みというかお願いなんだが…。頼む、一日でも早くSランクになってくれ!」

「どうしてですか?」

「魔王の脅威に対抗するためだ。まだ噂レベルだが、一年ほど前に魔王の序列が変わり、とんでもなく強い奴がトップに立ったらしい。信じたくない話だが、他の魔王が全員でかかって三分で倒されたとかなんとか」

「そ、それは…」

「この噂が流れてから、誰もSランクになろうとしないんだ。おまけに、Sランクの奴は上手く理由をつけて引退しやがる。…まあ、無理もない話だがな」

「どうしてですか?」

「Sランクになると、国から魔王討伐の指名依頼が出ることがあるんだ。もっとも、今はSランクの勇者が不在だから、出したくても出せないんだけどな」

「そ、そうなんですか」

「だが、お前さんほど強い奴がSランクになれば、話は別だ。たとえ勇者がいなくても、充分魔王に対抗できると俺は思う」

 えーーーーっと、ですね…。サブマスの話をまとめると…。

 魔界に勇者が来ないのは、今の魔王が強すぎるから。つまり、私が原因なんですかぁ!?

 さらにさらに、私がSランクになると、魔王討伐の指名依頼が出る可能性大って…。

 いやいや、魔王()魔王(他の六人)を討伐って、それはまずいでしょ…。

 ……。

 まあいいわ。指名依頼の件は先送りよ。

 せっかく冒険者になれたんだから、まずは楽しまなきゃ。

 さーて、何が起きるか、ワクワクが止まらないわ!

 気が付けば魔王に転生モノ2作目。

 いやいや、どれだけ魔王が好きなのよ、私。

 連載の方は、本編6話まで書き溜めてあります。

 が…、設定に辻褄が合わない箇所を見つけて、どうしようかと頭を抱えてるところだったりします。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白かったです。 電車の中で思わず笑ってしまい、怪しい人間になってしまいました。 めっちゃ強い魔王が現れたからSランク勇者がいなくなる。魔王がダンジョンの最奥で勇者を待ち構えているだけの世…
2019/02/06 11:41 退会済み
管理
[良い点] ルビを他の単語にすることで、その主人公の思考を伝えつつ世界観を崩さない方法は見習いたいと思いました。 [一言] 真優さんの一直線の性格が物語すべてに一貫していて思わず「こういう方法もあるの…
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