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転生~旅立ちの章  収穫祭当日

「今年も豊かな実りを与えて下さったお陰でこうして無事に収穫祭を行う事が出来ます、また今年は大地の恵みと共にこの地で育った子供が2人居ります。願わくば更なる加護を2人に授けて頂ける様、切に祈る次第です」


神父のトマスが神への感謝を伝える儀式を合図に村の収穫祭は始まった、今年は麦やジャガイモだけでなくリンゴなどの果物も豊作で村に立ち寄った旅人に振舞われている。若い娘達は着飾って歌と共に踊り見初めてもらえる様に意中の男性を探して歩く。収穫祭は恋を実らせる場でもあるのだ。


「今年も賑やかになりそうだね、セラ」


「そうだねリリア、でも私達の場合はもっと重要な行事が待っているからね」


「そうね、スキルがもし出なかったとしてもお互い恨みっこ無しだからね」


(リリアにもどうかスキルが現れますように)


セラは普段祈らない神に祈る、祈らない理由は祈ろうとするとどうしてもボッチの顔が浮かんでしまうからだ。


「どうしたのセラ、急にまた黙り込んじゃって」


「ううん、何でもない。スキルが出ても出なくても私達は今まで通り仲良くしましょうね」


「当然です!私とセラの友情は不滅です」


(俺のリリアへの想いも不滅だよ)


ゾクゾクゾク~!! これまでで最も強い寒気がリリアを襲った、思わずセラの手をリリアは握ってしまう。


「リリア、急に手を握ってきてどうしたの?」


「何故か急に不気味な感じがして・・・このまま手を握っていても良い?」


「心配無いよ、私に任せて。何が有っても私がリリアを守るから」


「セラ・・・」


「ありがとう、だから私セラのこと大好き♪」


そう言ってリリアはセラに抱きつく、思わぬ役得にセラも大喜びだ。


(ああ、リリアの髪今日も良い香りだ。このままずっと嗅いでいられたら良いのに)


セラはリリアが離れるまで至福の時を堪能するのだった。




「これより、洗礼の儀を執り行う。セラとリリア、前へ」


「「はい!」」


村長の呼びかけに元気良く返事をしながら2人は前に進む、周囲からは祝福の声が上がり2人の更なる幸運を願う。


「どちらから先に洗礼を受けたい?」


「私から受けさせてください」


洗礼の順番を村長が問い掛けるとリリアが即答した、本当は緊張で胸が張り裂けそうな筈なのに勇気を振り絞ったに違いない。


「ではリリア、祭壇に登り水晶玉に祈りながら手を触れるのです」


父のトマスが柔和な笑みを浮かべながらリリアを促す、ここまで娘が健やかに育ってくれた事への感謝の気持ちが手に取る様に分かる。リリアはそんな父の気持ちに答える様にゆっくりと水晶玉に手を伸ばした。


(どうか神様、父さんの助けとなれるスキルを私にお与えください)


皆の視線が水晶玉に注がれる、そしてリリアの手が触れた瞬間水晶玉が虹色に輝くとリリアの身に光の柱が降りた。スキルに無事目覚める事が出来たのだ。



リリアは【万能回復】に目覚めた。


リリアは【魔法障壁】に目覚めた。


リリアは 【浄化】 に目覚めた。



「お~!!リリアは3つものスキルに目覚めたぞ!」


「どれも素晴らしいスキルばかりだ、まるでかの【聖女】と呼ばれた大主教様の再来ではないか!」


大主教と聞いてトマスの顔に少しだけ影が見えた、だがその事に気付いた者は居ない。興奮が収まらない村人達は次のセラにも期待を寄せる。しかし、その興奮を一瞬で冷ましてしまう凶報が飛び込んできた。




「た、大変だ~!村の入り口に居たテヘロの奴が剣で斬られた。トマスさん、すぐに来てくれ!!」


テヘロは村の自警団のメンバーの1人でイタズラ小僧タシムの父親だ。夜遅くまで村の安全の為に見回る生活をしているので、その寂しさからかタシムはイタズラをして親を困らせていたのだ。


「父さん、私が代わりに行きます。そのまま儀式を続けてください」


「だがリリア!」


「お母様もきっと同じ事をされる筈です、任せてください」


トマスを呼びに来た村の若い衆と共にリリアが教会を飛び出した、しかし何もしていない自警団の者を斬りつけるなんてどんな神経をしているんだ?


「それでテヘロを斬りつけた奴は一体誰だったのかね?」


村長が近くで見ていたという者に事情を聞いてみた、すると出てきた言葉に村人は凍りつく。


「テヘロを斬りつけたのは冒険者崩れが5人・・・その中の1人は【剣撃ソードアタック】のスキル持ちだ」


人々の賞賛を集めるのが冒険者だとすれば、その反対に人々から忌み嫌われるのが冒険者崩れである。最初は冒険者を目指していたが実力が伴わず装備の修理代にも事欠くようになり、最終的に野盗やチンピラに近い恐喝や強盗を働く様になる。無論捕らえられれば罰せられるのだが、冒険者として多少の期間生活してきただけあって自警団程度では軽くあしらわれてしまう。そんな連中が村の収穫祭に目を付けてやって来たのだった。


(いけない!このままだとリリアが冒険者崩れの連中に連れ去られてしまうかもしれない)


スキルに目覚めたとはいえリリアはまだ10歳だ、しかも目覚めたスキルは攻撃に使えそうなものが無かった。


「トマス小父さん、あとでお叱りは受けるから今回だけは見逃して!」


セラは祭壇に駆け上がるとそのまま水晶玉を鷲掴みした。


(ボッチ、時間が無い。さっさとスキルを渡すんだ!)


直後、教会内に強烈な波動が広がりその衝撃で色鮮やかだったステンドグラスが粉々に砕け散った。更にその振動で教会の鐘が鳴り響く中、セラはリリアを助ける為に教会を出て行くのだった。


「一体何事だ、こんな事は今まで1度も無かったぞ」


動揺を隠せない村人達と神父のトマス、だが追い討ちとばかりに宣告の声が教会内に轟いた。



セラは【怪物創造】に目覚めた。


セラは【????】に目覚めた。


セラは【????】に目覚めた。


セラは【大賢神の唯1人の友】の称号を得た。



「称号【大賢神の唯1人の友】だって!?」


とんでもない置き土産を教会に残していた事などセラに知る由も無い、先に村の入り口へ向かったリリアの無事を祈りながらセラは以前から考えていた2種類の怪物を創造した。


「我が願いに応え出でよ、【切り裂きバード・ザ・リッパー】・【爆撃鳥ボムバード】!」

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