表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/29

断罪塔の裁きの章  力の差

どこの国家にも属さず神の痕跡を見つけたと言いがかりを付けては、土地を接収してきた全神教。

その全神教の実働部隊として、周辺の国々にまで恐れられてきた武装集団。

それが魔装兵団だった。


攻撃魔法のスキル所持者を中心に構成され人員総数はおよそ5万、弓よりも長い射程と破壊力でいかなる抵抗も打ち砕いてきた。

総本部入口の教会が建つ湖畔を囲む様に布陣しており、常識的に考えて少女3人など瞬時に捕縛されてしまう。


だが蓋を開けてみると、戦闘の開始からわずか3分。

湖は大量の血で赤く染まり、魔装兵団は人員の半数近くが失われていた……。


(一体、何が起きているんだ!?)


教会の対岸に本陣を築いたヴェントルは運が良かった。

しかしその結果、目の前の惨劇を長時間見ることになる。


教会の両側に突如現れた2つの塔。

それが動き始めた瞬間から、配下達が次々と爆散し肉の塊へと変わってゆく……。

一方の少女達は遠視スキルで確認するも、傷1つ負っていない。

しかもやっている事といえば30秒毎に1度、中央の少女が小さな瓶を受け取り何かを飲んでいることだけだった。


「はい、セラ様。 MPポーションの予備は一杯有るから、心配しないでくださいね」


「うぷっ。 これだけ飲むと、トイレが近くなりそう……」


「こら、セラ。 こういう時は、お花摘みって言わないと駄目でしょ!」


魔装兵団側が地獄絵図と化しているのに、挑んできた少女達はそれを気にする様子もなく無邪気そうにすら見えた。




ようやく魔法の詠唱を終え、生き残り達による魔法の集中砲火が始まった。

捕縛して楽しむ予定だったが、そんなことを言っている余裕は無い。

目の前にいる3人は、明らかに人の形をしたバケモノだからだ。


しかし彼らの必死の反撃は無駄足に終わる。

全ての攻撃が彼女達のはるか手前で、透明な壁に弾かれてしまっているからだ。


「魔法攻撃のエキスパート達って言うから期待していたのに、期待はずれだわ」


「リリア様、それは彼らに失礼ですよ。 リリア様の結界は、いまやグレートデモンの闇魔法すら防ぎますから」


読唇術で読み取った会話の内容に、ヴェントルは絶望を覚えるしかなかった。


(グ、グレートデモンだと!?)


人間を遥かに凌駕する魔力と魔法を持つ悪魔、デモン。

有史以来たびたび姿を現し、消されてしまった集落の数は100をくだらない……。


最下級のレッサーデモン1体の討伐でも、精鋭を結集させなければ倒せない。

それなのにこのリリアという少女は、天災と呼ばれる最上級のグレートデモンの攻撃まで防げると言うのだ。


(無理だ勝てる訳が無い、ここは撤退するしかあるまい)


いつの間にか残り2割まで減った兵士達に、最後の命令を与える。


「てっ、撤退、撤退だ! 全軍今すぐ撤退しろ!」


セラ達に背中を向けて、一斉に逃げ出す魔装兵団。

しかし、断罪塔の裁きが止まる事は無い。


「射程4kmと最初に言った筈よ。 わたし達に敵意を向けた以上、逃げ切れるとは思わないことね」


1度敵意を示した相手を完全に排除するまで、決して止まらない断罪の塔。

いかなる謝罪や命乞いすら聞き入れる事無く、魔装兵団の全てを肉片に変えた……。


ファランクスが役目を終え停止するのを見たリリアとリィナは、セラをねぎらう。


「セラ、お疲れ様」


「セラ様、素晴らしいご活躍でした!」


いつもだと惚気ているセラなのだが、今回は返事もせずに小刻みに震えていた。


「どうかしたの、セラ?」


リリアがセラの肩に触れた瞬間、セラは脱兎のごとく駆け出した!


「もっ、漏れる~!!」


物凄い勢いで茂みの中に隠れるセラを見て、2人は呆れながら笑うのだった。




お花摘みを終えて戻ってきたセラが改めて見ると、湖畔周辺の状況は地獄そのものだった。

原型が分からないほど木っ端微塵となった、人の死体の山。

魔族が虐殺を行ったと言い訳しても、じゅうぶん通用しそうだ。


「このままにしておくと、衛生面から見てもまずいよね?」


「こうなったのは彼らの自業自得ですが、この状態を作り出した元凶に自分の死体を衛生面で切り捨てられたら浮かばれませんね」


アイリから指摘されたものの、なんとかしないと疫病が発生する恐れもある。

そこでセラは、久々に新たなモンスターを創造することにした。


「我が願いに応え出でよ、コープススイーパーフルーツトレント!」


セラの呼びかけに応え現れたのは、高さ4mはある人の形をした樹木の怪物トレントだった。


「コープススイーパーフルーツトレントって、一体どんなモンスターなのセラ?」


興味あり気にリリアが聞いてくるので、セラは説明を始める。


「ええと、漢字で書くと死体清掃人型果樹になるのかな? 足の根で死体を栄養分として吸収し、果物を実らせるモンスターでリンゴや桃等の実がなるわよ。 リィナ、くだもの大好きでしょ?」


しかし、リィナは嫌そうな顔をした。


「セラ様、こいつらの死体で甘く育ったくだものを食べたいですか?」


「……いらない」


何も知らない旅人に食べてもらうことにして、同じトレントを100体創ると湖畔の周辺に解き放った。

そして総大主教が待ちかまえているであろう総本部へ向け、教会の隠し通路を降りていくのだった……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ