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転生~旅立ちの章  上限到達と神の試練

リィナが新たに加わってから、秘密特訓のメニューにも変化が現れた。彼女も洗礼の際に2つのスキルに目覚めており、【フラッシュレイ】と【ポーション変換】を得ていた。



フラッシュレイは光属性の攻撃魔法であり、単体から複数まで攻撃対象を選ぶ事が可能な為、セラが撃ち漏らした残敵の掃討にとても有効だった。


しかし特筆すべきはポーション変換の方で、何と自分のHPとMPをポーションに変換する事が出来る。しかしHPの変換量を誤ると即死しかねないので、注意が必要だ。その為普段はMPは毎日空になるまで精製し、HPの方は50ずつ小刻みに増やして、様子を見ながら精製する特訓を行うのだった。


「さてと、そろそろお風呂の時間だから今日の特訓はこれまで!」


「お疲れ様、セラ。それとリィナも」


「ハァハァ・・・!お疲れ様でした」


リィナは息も絶え絶えとなっている。最初に限界までMPをポーションに変換した後で、それを飲みながらフラッシュレイでゴブリンを倒すメニューをこなしているからだ。


少しでも早くセラとリリアに追い付く為に、こんな無茶なメニューをしている。HPの方はリリアが万能回復でHPを回復してくれるので、こちらも体力と共に日を追うごとに上昇し3人の中で1番のHP量を誇る様になった。


「特訓の汗を洗い流す、この瞬間が1番幸せ♪」


「何を言ってるのセラ、この後また汗まみれになるくせに」


「そういうリリアだって、本当は期待しているんでしょ?」


「うふふ、当たり♪」


1度特訓の汗を洗い流してから、キャッキャウフフな時間を楽しむのが3人の日課となって半年が過ぎようとしている。その間にリリアは母のニナリスの魔力を抜いてしまい、総本部から呼び出しを受ける事態となってしまった。・・・しかし


「私はセラとずっと一緒に居たいから、全神教を棄教します」


っと総本部からの使者に即答し、トマスとニナリスの2人は泡を吹きながら気絶してしまった。




さらに全世界に影響を与えたのが、ミスリルの価格暴落である。大量に生産されるミスリルの布や塊を流石に村に置ききれなくなったので、セラはリリアの棄教のお詫びに村のミスリルの取引を総本部に一任する事にした。


当初は国家予算に匹敵する利権を得たと喜んだ総本部だったが、次々と送られてくるミスリル製品の保管場所に苦慮する様になり半値以下で捌き始める。するとそれに連動する様に、ミスリル製の武器や防具を所持していた大商人達が暴落の気配を感じて売り急いだ為、ミスリルの価格は連日ストップ安状態。現在では、ミスリル製のクワやカマまで出回る始末だ。


逆に喜んでいたのは、冒険者の面々である。装備するのが夢とまで言われたミスリル装備が、安価で買える様になったのだ。オマケに大量に塊が出回る事で修理代も安くなり、それが冒険者くずれとなる者を減少させる要因にもなった。


こんな風に色々な場所に影響を与え始めているセラとリリアだったが、セラの魔力がある日とうとう上限に到達してしまった。


「ついにこの日が来てしまったか・・・」


「おめでとう、セラ!これはお祝いのチュウ♪」


チュッ♪


「あ~!リリア様ずるい、私からもセラ様にお祝いです」


チュ~ッ♪


「リィナの方がずるいよ、私よりも長くセラとキスした!」


キスの時間で言い争う2人、その横でセラは天にも昇る心地だった。


(あ~2人の女の子からキスしてもらえるなんて、もう夢の様♪)


今にも背中に羽が生えてきそうな楽しい時間は、急に終わりを告げた。




訓練場内が薄暗くなると大勢の見た事もない男の人達が現れたのだ!その中から、初老の男性が歩み出てきた。


『セラ・ミズキよ・・・・・まさか、こんな短期間で魔力の上限に到達するとは思ってもいなかったぞ』


「おじさん、誰?」


『我が名はリアジュウ、この世界の神々のリーダーの1人である。本来であれば彼女神ハニー達も連れてきてやりたかったが、大賢神も一緒となれば何が起きるか分かったものではない。だから、男性神ばかりとなってしまった許せ』


(逆にその彼女神ハニー達だけで来れば良かったのに・・・)


そんな事を考えていると、セラの前に腐れ縁に近い見知った神が蹴り出された。言わずと知れた、大賢神ボッチである。しかし、その顔はあちこち腫れ上がっている。


『や、やあ、久しぶりだね大賢者 瀬良 瑞樹。私が君を甘やかし過ぎたと皆に怒られてしまったよ、ハハハハハ・・・』


確かに転生する際に多くのものをボッチから貰っている。その結果ミスリルの暴落を招いたり、彼女マイスイートハニーを2人手に入れられたりしてる訳だが。


『大賢神の過剰な加護が原因かもしれないが、ルールはルールだ。これより、セラ・ミズキに対する神の試練を執り行う』


リアジュウが右手を掲げると、セラ達の前に巨大な深紅の竜が出現した。


『その竜の名はクリムゾンドラゴン、マグマ噴出す活火山に生息するドラゴンの1つだ。セラよ、これからお前1人の力でこれに挑んでもらう。どんな手を使ってでも勝て、そうすれば更なる上限をお前に授けよう』


「本当にどんな手を使っても良いの?」


『もちろんだとも、だがボッチの手を借りるとかは駄目だぞ』


「借りなくても大丈夫、だけど1つだけお願いしても良いかな?」


『なんだ?』


セラは申し訳無さそうにリアジュウに願いを伝えた。


「これから起きる事を見ても、これ以上ボッチをボコボコにするのだけは見逃してあげて」




セラはガトリングバックラーを装着すると、アイテムボックスの中からこれまで開けてこなかった2つ目の卵を取り出した。


『あ、その卵は!?』


ボッチが止める間もなくセラは卵を割った、すると神々の前に異世界の防衛システムが現れた。


『・・・・・・セラよ、それは一体何だ?』


「これは A-213-ヴィンペル-A、AK-630M機関砲2基、MR-123-02火器管制レーダー、およびSP-521光学式追尾装置から成るCIWS システムだ。」


更に詳しく説明しようとするセラだったが、その前にクリムゾンドラゴンの殺気に反応してAK-630M機関砲の砲身がドラゴンに向けられた。



ブィイイイイイイイ!!



AK-630M機関砲が火を噴くと同時にクリムゾンドラゴンは木っ端微塵となった、その間わずか3秒。セラはもちろんだがリアジュウ達神々も呆然としている。


「あの・・・もう1度呼び出して貰う事って出来ます?」


恐る恐るセラが尋ねる、リアジュウは軽く咳払いすると返答した。


『その前に少しだけ時間をくれないか?』


神々の視線が一斉にボッチに向けられる。


「ボッチよ、許せ」


セラが合掌すると同時にボッチのタコ殴りが始まった。


『てめえ、なんていう物を渡すんだバカ!!』


『神の試練がとんだお笑い種だ、死ね!死んで皆に詫びを入れろ!!』


『ず、ずびばぜん!セ、セラた、助け!』


助けに入るわけにもゆかず、神々のお仕置きはそれから小1時間ほど続いた・・・。




簀巻きにされてシクシク泣いているボッチを放っておいて、リアジュウが神の試練の終了を告げた。


『セラ・ミズキよ、多分これ以上神の試練を続ければ我ら神々の威厳が地に堕ちる可能性が高い。よって試練を乗り越えたものとみなし、そなたの魔力の上限を999から9999としよう』


神々はもちろんセラ自身も納得出来る終わり方では無かったが、神の試練を無事に終えセラの魔力の上限は9999となった。


『ところでセラよ先程もう少し説明しようと見えたが、A-213-ヴィンペル-Aとやらの説明を続けてくれぬか?』


「ええと単純に説明するとAK-630M機関砲の射程が4kmで毎分5,000発撃てる、それが2基だから後は言わなくても良いよね?」


つまり再び上限に達してしまった場合、セラはわずか1分で1億近いダメージを叩き出す装備を持っている事となる。よく見るとガックリと項垂れている神の姿がチラホラ見えた。


『お前はこれを使って、神に戦いを挑むつもりなのか?』


「そんな面倒な事をするつもりは無いよ、これはもっと有意義な事に使う為にあるの」


『もっと有意義な事?』


ろくでもない事を言い出しそうな気がしたが、それでも確かめずにはいられない。


「私が彼女マイスイートハニー達とキャッキャウフフするのを邪魔させない様に、これで守りを固めるの」


『キャッキャウフフっておいおい!?』


耳を疑う様な有意義な使い方である、だがセラは大真面目である。


「私は可愛い女の子たちと堂々とイチャイチャ出来る楽園を作るの、それを邪魔する男達は絶対に楽園に近づかせたりしない」


そう言うとリリアとリィナを手招きして、お祝いのチュウのお返しを始めた。


「さっきお返し出来なかったら、今度は私から2人にお礼のチュウだ♪」


唖然とする神達の前で、セラは心の底から叫ぶのだった。


「あ~本当に女の子に生まれ変わって良かった~!!」

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