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記憶改竄的現世界物語  作者: さも
第1章:万物を司る神
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第4話:ハイドの使い手、季子。

「私?私は季子。異能力【ハイド】の使い手」


「ハイド...?」


「さっき貴方が見た能力よ」


「私は異能力者の仲間を探してるの」


ブウゥン――――


彼女が指を鳴らすと、さっきまで通っていなかった車が突然現れた。

それも一台二台なんかではなく、ラッシュがそのまま現れた。


「私の能力は、ものを【隠す】能力。範囲は自由....」


色々気になったが、さっきこいつ俺の事を異能力持ちって言ったよな....。

異能力....まぁ考えなくても記憶改竄の事だろう。


この季子とかいう女から先生の様な圧力は感じない。

という事は種族的には俺と同じなのだろうか?


だとしたら余計に分からない。

こいつはどうやって僕の能力を見抜いたんだ?

まだ友人にすら悟られてないんだぞ?


「何で私が貴方の能力を知ってるのか分からないって顔してるわね」


「出てるの!?」


「バレバレよ」


「異能力者ってのは、その特殊な能力故に世の中に上手く馴染めない。浮くのよ。だから人を【殺し】やすいの」


「私は仲間を集める上でそこに着目した。自殺者のリストを集めたのよ。死の前後に不自然な挙動をしている人が居たら、その関係者が異能力持ちって訳」


「それが俺だったって訳か」


「そゆこと~。人殺すときは慎重に殺しなさいね♥」


ドヤ顔でそう語る季子を本気で殴り飛ばしたいと思った。

しかしこの女。この行動力と、この頭のキレ。

下手な行動や発言はこっちの命取りになり兼ねないぞ....。


「美和子が自殺した前後の不自然な挙動ってのは急にいじめられた事か?」


「えぇ」


「そんなの他にいくらでもいただろ?」


「そうねぇ....。学校のマドンナであり、純白そのものだった彼女が嫌われていじめられる....そのトリガーは何なのでしょうね?」


「アンタそこまで調べてたのか....」


この女に対しての下手な発言は本当に命取りになる....。


慎重に話さねば。


「それで?俺が異能力者ってワードに反応しちまったからこれでもう言い逃れは出来なくなった訳だけど、だからといって俺がアンタの仲間になるとでも?」


「えぇ、なるわ。貴方のその能力は私の【目的】に大きく貢献してくれる」


「俺の【記憶改竄能力】がか?どうやって?」


季子がニヤリと笑う。


「へぇ、貴方の能力は【記憶改竄能力】なのね。面白い」


しまった。クソ。

やっちまった。


慎重に喋るってのは何処に行ったんだ。

そりゃそうだ。彼女が俺の能力まで知っているはずがない。

これまた見事に口を滑らせてしまった。


落ち着け....落ち着け。


「フゥ.....」


「俺の能力は記憶改竄能力だ。今までの会話だってアンタの記憶から抹消できる」


「やってみればいいじゃない」


そこまで言うなら....。


!!?


コイツもか?


何故だ....。記憶が改竄できない。


季子が再びニヤける。


「言ったでしょう?私の能力は【隠す】能力。私の記憶自体を貴方から【隠した】のよ」


「貴方が問答無用でその攻撃を仕掛けて来る暴れ牛じゃなくて本当に良かったわ」


ニヤケ面で嘲弄してくる季子。

彼女のそんな煽りに対して、ストレスを通り越してもはや尊敬すら感じている。


「なぁ....アンタがそこまでする理由って何なんだ?どうしてそこまでして仲間を集めたがってるんだよ」


「さっきからアンタアンタって....。季子でいいわ。こっちだって勝治って呼ぶから」


「....そうか。じゃぁ季子。お前がそこまでして仲間を集める理由ってなんなんだ?」


一瞬、空気が凍った――――


季子がカアァ....と赤面している。

無言のまま若干俯く。


「どうした?」


「よくよく考えれば私他の異性に下の名前で呼ばれたことなかったわ」


「そんな事で?」


「そんな事って何よ!悪い?」


あぁ、何と言うか。この女の人物像もなんとなくハッキリしてきた。

彼女の異常なまでの行動力も、この頭のキレも全て孤独から来ているのだろう。


孤独だからこそ生まれる【自由】が、彼女をそうさせているのだろう。



俺と彼女はどこか【似ている】。



「おっと話を逸らされるところだった。季子、お前の目的って何なんだ?」


「....復讐よ」


どこか泣きっ面に近い表情になってる季子を尻目に、無慈悲にも会話は進んでいく。


「復讐?」


「私の【両親殺し】。犯人を【殺すの】」


「待て待て。自分が何言ってるのか分かってるのか?」


「人殺しを手伝えって言ってるんだぞ?」


季子の表情から赤みが消え、ため息を一つ付く。

落ち着き、真剣な表情でこちらを見る季子。


「私は小さい頃両親を殺された。まだ6か7だったと思うわ。その時の事はハッキリ覚えてる」


「私は犯人の事を必死になって調べたわ。でも証拠は何一つ残らなかった」


「それどころか、私の両親が殺された【事実】すら、消されたの」


「それってつまり....」


「えぇ。私の両親殺しは【異能力者】。それもかなり厄介なね」


「目には目を。異能力者には異能力者を、って事でこうして仲間を集めて回ってる訳」


季子は冷たい笑いを見せた。

自身のトラウマを思い出して失笑してるようだ。


あぁ、俺もあれぐらい吹っ切れられたらなと羨ましく思うのと同時に、彼女も自身の【トラウマ】と戦っているんだなぁ....と思った。


俺と彼女はどこか【似ている】。


これも縁ってやつか....。


「分かった。殺すのは反対だが、犯人を【探す】所までは協力してもいい」


「本当!?」


季子の表情に光が入る。

希望の眼差しがこちらを貫く。


俊介先生に出された【課題】より、こっちの方がかなり現実的で明瞭なテーマだ。


殺神試練....季子の両親殺し探し....。


空っぽな俺の生きる目的が次から次へと満たされていく。

季子には悟れないだろうが、俺はそんな今が無性に幸せだったりする。


「ありがとう!」


季子は子供のような笑顔で何処かに走っていった。

連絡先も居所もなにも教えてないがどうするつもりなのだろうか?


沈みかけていた夕日が完全に沈み、夜が訪れた。



なんの変哲もない退屈な下校路。


でも今の俺には、そんな下校路が【異常に】見えていた。


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