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記憶改竄的現世界物語  作者: さも
第5章:アドバイスを、君に。
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第45話:【力不足】の【力不足】

仲間がいたから、勝つことが出来た。逃げることが出来た。

それは紛れもない事実だ。


でも、それでも尚僕はどうしてもトラウマを払拭できない。

勝利条件は満たしたと言うのに、命を散らさずに済んだのに。


その理由は簡単さ。

僕の【力不足】。



____先生のその言葉を聞いて、ハッとなる。

自分の感じていた【力不足】は俊介先生に比べて幾らちっぽけなものなのだろうかと。

【力不足】の【力不足】。そのレベル差は大きするものだった。


俊介先生の勝利条件とは、死ぬことなくシュンから逃げ切り彼を封印することだった。

思念体、つまるところ【概念】となったシュンを封じるには方法は一つしかない。


【概念】を把握できる人物の厳選。

シュン程の力を持つ生命体を押さえ込めるだけの能力を持つ生命体のみが認知できる状態。


つまり【神】だ。


でも俺はその事実、概念を知った。

だからこうなった。


シュンによるカオスは確実に俺を、世界を蝕んでいく。

喰われた世界は一体どうなるのか、それは先生ですら予想が付かない。


それを【力不足】だと言われてしまえば、俺はもう【力不足】を感じることが出来ない。


無いものは不足しないのだ。0に何を掛けても0なのと同じように。


「遺品の再現ってそこまで危険には思えないんだけどなぁ....」


ふとグリシアが言葉を漏らす。

俊介先生は深い溜息を一つ付き、その重そうな口を開く。


「シュンの評価が過小になるのは間違いなく僕の所為だ」


「どうして?」


「元人間の僕が実質的に倒したからだよ。でも彼は倒せない、誰にも」


「彼の意志を復活させることは彼を完璧に仕上げてしまうことになる。誰も、どの生命体も到達できなかった【完璧な究極生物】を、作ってしまう」


俊介先生の余裕は、そこには存在しなかった。

彼のいびつに歪んだ記憶を見て尚、その自信の無さの理由を探す。


シュンを過小評価しているのは、単純に先生やミレイ・ノルヴァが行った【厳選】の成果と言えるのだろうか?

しかし厳選して尚、カオスは起こった。

俊介先生が自信を無くしているのはそれが大きいのかもしれない。


(なぁ....季子、俺はどうしたらいいと思う?)


(そうね....諦0o0O○O0o0O○O0o0O)


さっきから思考世界にジャミングが入る。

俊介先生が苦渋の決断を下す代わりに俺に授けた【悟り】の能力。


死者を記憶を頼りに完璧にシュミレーションするこの能力。

それを行っているのは脳なので、当然自身の精神状態に大きく左右される。


混乱と困惑と、憎悪と恐怖....無数とも呼べる感情が混雑を引き起こしているこの状態では、まともにこの能力は使えないだろう。


怠惰を受け入れたことで、実質的に俺の記憶改竄能力は効力を失った。

もはや改竄しようとしても妙な方向にぶれてしまう。


あんなに鍛えた技なのに、人知の域を超えたのに。

たった一人の生物に崩されたこの事実。


徐々にジャミング音が大きくなる悟りを感じながら、どうしようもない虚しさに当てられている。


「バルトが最後の遺品を見つけたさね!」


【覗】の文字を覗いていたヴィクセンが突然叫んだ。


「場所はエルフの集落の廃墟。最後の遺品は【血塗られたコート】だったさね」


「早く横取りに行かないと間に合わなくなるさね」


ヴィクセンが先生の方を向くと、そこにもう彼は居なかった。

【ウッドソード】の詠唱を聞く間もなく行ってしまった。


キムナエ先生の魔法陣を使い、例の廃墟までワープした。

マヨイ・ヴァレンがどこか嬉しそうだったが、その理由は深くは聞かなかった。


「またお前らか、来るとは分かっていてもこうして目の当たりにするとどうも不快だな」


バルトが鬼のような剣幕でこちらを睨む。

その装飾は明らかに現世のものではなく、素人でも分かるほどに禍々しいオーラを発していた。


そこに立っていたバルトはもはや以前のバルトの面影すらない。

とてもシュンの【操り人形】とは思えない程の貫禄。


もはや一国ぐらいなら軽く征服できそうな程、エネルギーを迸らせていた。


「警告しよう、勝治。君が見たシュンは遺品のネットワークをバグらせた」


「アクセス制限は君の所為で破壊された、私はそれを許さない」


突然足元に浮かぶ時計の文字盤。

気付くと体が固定されていた。


「認識の帽子、君の中の【動く】と言う意識が時計のイメージと共に停止させられた」


「君は今動きを認識出来ない」


ゆっくりと体を襲う鋭い痛み。

どうやら俺は攻撃されているようだ。


しかし、敵の攻撃が一切見えない。

バルトの言ったことが本当ならば、恐らく彼の攻撃がすべて認識できていない。


【ウッド...ド】


辛うじて聞き取れた先生のその詠唱と共に認識阻害は確かに破壊され、気付くと地面に転がっていた。


腹には深々とナイフが刺さり、激痛と猛烈な熱が体を覆った。


「ウッドソード....本当に不愉快な所持者よ」


一瞬、バルトの目の前に大きな笑い口と遊園地のような幻覚が見える。

それは煙のように消えていったが、次の瞬間には辺りを地獄絵図へと変えた。


「先生!」



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