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記憶改竄的現世界物語  作者: さも
第5章:アドバイスを、君に。
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第43話:賑やかな仲間

ヴィクセンがマヨイの持つ時計に【命】の文字を投げつける。

すると時計は激しい光と共に宙に浮き、パキッと言う音を立てて割れた。


バァン!と激しい音が鳴り、地面にボロボロと灰となって落ちてゆく。


「....あらら、今度こそは行けると思ったんだけどなぁ」


「ライリーの証言がその通りなら、遺品には何か繋がりがある。それに【アクセス】出来たなら....」


季子の一件があった後、ライリーはずっと部屋で寝込んでいる。

というのも、俺の血だけでは全快とは行かなかったらしく、補充できるエネルギーも無いからじわじわ回復するのを待つしか無いらしい。


ここまで行けばただの被害妄想だが、ここでさえ力不足を感じる。

俺では足りなかった。力不足。


この表現にトラウマを覚えそうだ。


俺は記憶を改竄する能力の持ち主じゃなかったのか....。

どうしてシュンに主導権を握られる前に消せなかったんだ!


可能だった。しかしあの時の俺には不可能だったと断言できる。

例えバタフライ効果で何万何億と分岐が枝分かれしてたとしても、シュンに主導権を握られていない分岐は存在していないと思う。


「またダメだったのね」


コツ....コツと足音が鳴り、奥からミレイ・ノルヴァが歩いてきた。

はぁ....と一つ大きな溜息をつくマヨイ・ヴァレン。


「ナエラと連絡が付いたわ、昔のみんなで合流しましょうって。貴方も来る?」


「あ、ちょっと待って、ヴィクセン。グリシアに繋いでもらえる?」


「....貴方相変わらずの畜生ね」



━…━…━…━…


バリッシュさんの店で集合することになった。

バーミアに住む先生の過去の戦友。


そんな人達に会えるのも当然嬉しいが、それ以上に仲間が居ると言う【安心感】にとても言葉で表すことのできない感情を感じる。


カランコロン....と至福の鐘の音がなる。


「おじゃまs」


「奈~恵ぇぇ!!!」


突然キムナエ先生に飛びついた....キムナエ先生?


奈恵先生にそっくりな女性が奈恵先生に飛びついていた。


....なる程、ナエラさんか。


馬場さんとバリッシュさんでも思ったが、ドッペルゲンガーって言われるだけあって本当に似てる。


遠目で見ると理解するのに数秒かかるレベルだ。


ポンポン、と頭を撫でる奈恵先生を尻目に、バリッシュさんが妙にこちらに構えている。

その睨み目の先はグリシアに向けられていた。


「ほら、そう構えないで。今のグリシアは無害だから」


そう言ってポンのグリシアの背中を押すマヨイ。


「あの時は....その、悪かったよ。アタイも命令を遂行するので必死だったんだ....」


「その謝罪の相手は俺じゃねぇな....」


バリッシュさんはため息を付きながらそう一言漏らす。

どうやらもう過去のトラウマを精算したらしい。


受け入れるのが早いというか時間が解決したというか....。

精神も相当熟練されているようだ。


コルクの匂いが漂うこの雰囲気のいいお店。

奥でコーヒーをすする姿が一人。


先生の記憶で見たことがある。

【トウ】さんだ。


確か冬弥さんのドッペルゲンガーだったか。


「どうも初めまして」


「あ、どうも初めまして」


コーヒーをコツンと机に置き、満点の笑みでそう返してくれた。

根暗だが優しそうな人だ。


俊介先生が席に着くと、バリッシュさんがすぐさま近づいて行った。


「お前、マジでシュンを倒したのか?」


「たまたま....ラッキーだっただけさ」


はい、と言いながら地面に置かれた黄金色のドリンク。

魔女の鼻水だろうか?


先生がグイッと飲み干すその様を見て、何処か嬉しそうな様子を見せるバリッシュさん。


「記憶が蘇ったって事は、また何か起こったんだろ?ナエラ達が遺品だなんだと騒いでいたよ」


「あぁ、シュンが復活した」


先生の食い気味のレスポンスに、一瞬フリーズするバリッシュさん。


「どうやら俺も耳が遠くなっちまったみたいだ。なんて?」


「シュンが復活した」


「....そうか」


バリッシュさんが数秒何かを考える動作をしてニカッと笑う。


「まぁ、知ってたんだけどな」


「全部ナエラから聞いていたさ。俺だってお前等地球人で言うところの【異能力者】。今度こそ協力させてもらうぞ」


「あぁ、もうここまで来ると止めても無駄なんだろうな」


「よく分かってんじゃねぇか」


俊介先生は頭を抱え溜息をつく。


「んで、ナエラ。遺品の事なんだがな....」


俊介先生がナエラにそう言うと、彼女は一枚の紙をポケットから取り出し満足気に振り出した。


「そのリスト必要無くなったんだわ」


ショックがダイレクトに現れた表情を見せるナエラ。

紙がハラハラと地面に落ちる。


「ごめんなさい、連絡石で連絡すれば良かったんだけど色々あって....」


奈恵先生が申し訳無さそうな顔でナエラに会釈する。


その光景を見てフフッと笑いをこぼすマヨイを尻目に、ミレイ・ノルヴァはコーヒーを口に運ぶ。


ここからの旅は、どうも賑やかなものになりそうだ。

テラと季子の弔いの為にも、俺は。


俺は、何としてでもシュンの復活を阻止しなくてはならない。



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