第36話:死者の悟り
先生の中で何かが組み替えられる感覚が駆け巡った。
それは遺伝子情報なのかもしれないし、自分自身の精神なのかも....いや、その全てなのだろう。
彼は正真正銘【万物を司る神】になった。
先生に赤い眼光が入り、シュンはその光景に恐怖した。
恐怖して尚、狂気的に【笑った】。
どうしようもない圧倒的な存在。
それほどの高みに立ったこの2人の生物。
先生....いや、俊介とシュンは鏡の様に何もかもが【反転】された存在。
シュンはそれがどうしようもなく不快で、俊介は自分の中にシュンと同じ部分があることを嫌悪した。
【ウッドソ...】
シュンが能力を唱えてる間に、俊介は物凄い速度でシュンに近づく。
指をドリルの様な形にして、シュンの目に突き刺す。
「ウウゥッ...あ”あ”ッ”....」
「お前が痛がるのを初めて見たよ」
俊介の口角が狂気に歪む。
生命が枯れ果てた色のないこの空間。
シュンは目を抑え、俊介は狂気的に笑い。
【対極】の2人はお互いを【消そう】とする。
シュンがウッドソードで目を治し、数秒俯く。
そして....笑う。
俊介もシュンもどちらも笑った。
ただ、笑った。
「君はぁ....やっぱりオレだよ....俊介!」
【ウッドソード】
シュンが右手を暗黒物質に変える。
左手の手刀で右手を切り落とした。
暗黒物質は地面に触れるや否やスーパーボールの様に空中に跳ねて、再び生命を消滅させ始めた。
「お前じゃ、僕には勝てないよ。だってさ.....」
【ウッドソード・ロストブランク】
暗黒物質が光と共に弾ける。
弾けた断片が、弾けながら空間の歪みへと消えていく。
シュー....と音を立てながら、暗黒物質のパラメーターは【0】になった。
「へぇ....そういう....」
「これはシュンヤが作り出した能力なんかじゃない....。僕がこの時間軸で【再構成】した能力だ」
「蹉跌を繰り返すお前には絶対に来ることの出来ない僕だけの領域だ!」
「俺が....蹉跌?」
今度は逆に俊介が自身の能力で暗黒物質を作り出した。
時空を歪ませ沢山の時間軸からメリメリと出てくるシュン。
しかしその全てが、彼の作り出した暗黒物質に飲まれていく。
俊介の暗黒物質に吸い込まれまいと踏ん張っているシュンを尻目に、俊介は残酷だがやらねばならない事を頭に過ぎらせていた。
「シュン」
「....あ?」
「上見てみろ」
グシャッ.......
ウッドソードで天井を作りシュンを圧迫させた。
暗黒物質を消した。
圧倒的なエネルギーが篭っていたあの暗黒物質をそのまま消滅させるのは大変危険なので、【ロストブランク】で0にして消した。
シュンが【ウッドソード】を使い復活する。
あの時あの天井にステンエギジスを使えれば....。
それと同時に僕は右手に生成したものを【投げる】。
グサリ.....。
シュンの胸元から血が滲む。
「ウッ....カッ....」
シュンは刺さったナイフのようなものを手で引っこ抜き、ウッドソードでその傷口を回復させようとした。
あの時僕がチュラル村に行かせなければ....。
時が止まる。
僕はシュンにゴマ粒サイズの起爆装置を投げつけた。
もはやシュンはこの時間を認識こそ出来るが動くことは出来ないだろう。
時が動き出した瞬間。シュンの体は僕発粉砕した。
シュンが【ウッドソード】を使い復活する。
あの時僕がもっと用心深く動けば....。
僕が拳を握り締めると、シュンはグシャリと生々しい音を立てて崩れた。
また秒もしないうちに復活するのだが、流石に復活を繰り返し過ぎだ。
もはやシュンの体の形がおかしい。
あの時の僕にもっと強い力があれば....。
【ウッドソード・ロストブランク!】
瞬間、物凄い閃光が辺りに広がり、シュンはクリスタルの中に閉じ込められた。
僕は喋る事以外許可していない。
もはや視界も、聴覚も、何もかも機能していないだろう。
「これで最後だ....」
僕の手に黒いオーラがまとわれる。
それは物凄い高温を発しているが、感覚は氷の様に冷たい。
シュンの腹を僕の拳が貫く。
自分の見た目をした化物を、自分の拳で貫く。
「カッ....ハッ....やっぱりぃ...君は俺と同じだ俊介ェ!。例え相手が自分であろうと容赦せず殺す。お前と俺の圧倒的な違い....【人間味】を....お前は....捨てた!」
バキッ....メシッ....とクリスタルにヒビが入り、最期の結晶は砕け散った。
砕けたパーツが燃え、灰と化す。
灰がクラッカーの様に辺りに飛び散る。
「あぁ、同じだよ。お前も....僕も」
「お前は....僕と....おなz」
瞬間、視界にひどいノイズが走った。
猛烈な頭痛。
━…━…━…
グリシアの表情は変わらずで、気色悪い上目遣いで俊介を睨んだ。
「残念だったわね」
ゴォーーーンッッ.....
鈍く重い音が鳴った。
教会の屋根が超速度で地面に落ちた。
馬場さんを飲み込んで....。
「俊介、何やってんだ!早くステンエギジスを使って屋根を消せ!」
バリッシュさんが焦るようにそう言うが、先生はステンエギジスを使えない。
「い、いや..僕は....」
「早くしろぉぉぉぉぉぉォ....」
━…━…━…
「ナエラは....死んだわ」
「ナエラが?」
「えぇ、胸のあたりをナイフで一突き。意識が途切れるまでそんなに時間はかからなかったでしょうね」
「....」
俊介は深く後悔した。
こちらを恨んでるとは到底思わなかったとは言え、騒動の元凶であるエルフの集落にナエラを一人で行かせたこと。
ミレイ・ノルヴァが応援に行ってくれたからと言って完全に目をそらしてしまっていたこと。
俊介は死ぬほど後悔し、苦しみ。
くるし....
「お前だよ、勝治」
!!?
何処からか声がした。
「次に苦しむのはぁ...お前だよぉ!勝治ィ!」
そう言って突然記憶世界に現れたのは、シュンだった。




