第30話:贖罪を求めて
本来、ミレイ・ノルヴァの能力は特定の何かに肩入れ出来ないようになってるさね。
でも彼女の怠惰が、彼女の本来の能力を歪めたとしたら....。
ミレイ・ノルヴァは異例の女神さね。その能力は異常値を当たり前のように越える。
でも私にはミレイ・ノルヴァがそんなバケモノに見えなかったさね。
それはつまり【怠惰】によるリミッター。
もしその溜まりに溜まったパワーが俊介に向いていたとしたら....。
考えるのも恐ろしいことさね。身近にいた神々が皆こぞって創世主に楯突いているさね。
シュンに純也が殺されて、また無能力者に戻ったはずの俊介は、シュンヤが別時間軸からキャッチした【ウッドソード】を身に着けるしで....。
多分。これは本当にただの仮説なのだけれど、シュンはわざと自分が死ぬように仕向けていたような気がするさね。
根拠もないし、それによって生まれる利点が何かはサッパリ分からないけれど、それでもそんな気がして止まないさね。
もし仮に、もし本当にシュンがわざと死んだとしたら、少なくとも俊介が生き延びた理由は説明が付くさね。
それによって....俊介が生き残った事によって出来た可能性。
そうさね!【怠惰】さね。
ミレイ・ノルヴァの【怠惰】が払拭されて、別の人間に移ったさね。
俊介が居ないと、ミレイ・ノルヴァはあそこで死ななかったさね。
そうさね!
委託された怠惰は今勝治とか言う人間に移ったけれども、まさかシュンの目的はその【怠惰】の移行さね?
世界レベルで組み直してしまえば、委託された怠惰は確実なモノになるさね。
そうすれb...
━…━…━…━…
「見せて」
季子に日記を取り上げられた。
彼女は日記を取り上げるや否や、パラパラとページをめくってそして本を閉じた。
「なるほどねぇ....」
....は?
一瞬理解が遅れた。
生まれて初めて速読を見た。
パラパラと紙をめくっただけに見えたが、彼女はそれで全部読んだのだ。
記憶の中に入れて、それを高速で文字起こしして意味を理解する。
もはや季子に人間味を感じない。
この才能は天性のものなのだろうか?
本当にスゴイ。
季子は数秒考える仕草を取ったが、何かがピッタリハマったようで、ものすごく幸せそうな表情になった。
ミレイ・ノルヴァは元々【怠惰の女神】で、俊介は彼女を殺すことでその怠惰を払拭させた。
んで、その【怠惰】が俺に来たと....。
あぁ、俊介先生が何故側近に俺を選んだのかがようやっと分かった。
季子や奈恵先生とか優秀な人はいっぱいいるのに、あえて俺を選んだ理由。
これもまた【怠惰】を払拭させるためだ。
「ほら、これ」
季子が見せてきたのは日記の最終ページの一節だった。
【失われた怠惰の委託は死神の計画。取り出すのはおろか、見つけ出すのも困難さね】
「勝治、アンタに委託された怠惰って、ミレイ・ノルヴァが持ってたものの一部っぽいよ」
「その大半が概念として分散ちゃってるらしい。アンタに憑いてる怠惰を正確に表現するなら【呪い】ね」
「呪い...?」
「えぇ、呪い。貴方の怠惰は、ミレイ・ノルヴァが払拭した怠惰を引き付ける怠惰なのよ」
そんな早口言葉みたいな....。
しかし言いたいことは分かる。
俺が神でさえ手を焼く呪いを引き継いだのにこうしてピンピンしていられるのはつまりそういう事なのだろう。
ジェミニの仮面の一件の時も思っていたが、先生やミレイ・ノルヴァはいつも何かを探しているように見えた。
それは俺が引きつけてる【概念的怠惰】を探していたんだ。
色々な事に合致が行き、季子程ではないがかなりスッキリした気分になっている。
こんな清々しい気分は久しぶりだ。
まるで昔みたい....むかし。
おかしい。
どう考えてもおかしい記憶を俺に見つけた。
何故今まで気付かなかったのだろう。
俺の記憶にも、キムナエ先生に似た不自然な壁がある。
自身の壁だ。
壊す分には何の問題も無いし壊さなくては行けないんだけど....何故。
何故俺は気付かなかったのだろう。
こんな不自然な壁、自分自身にあるんだ。
気付かない方がおかしい。
壁を自分自身が隠していた....?
何かを隠すための壁を....隠したっての言うのか?
俺が?
七つの大罪の一つ、【怠惰】。
俺が生まれ持ってこの罪背負っていたと言うなら認めよう。
思い返せば俺は本当に怠惰だった。
前々から自分の怠惰さに嫌気がさしてたぐらいだ。
俺は求めなくちゃいけないんだ。
贖罪を。自分の怠惰に対する贖罪を。
━…━…━…━…
記憶の壁を壊すと、ものすごい量の向かい風がやってきた。
ちょっと前までならここで追い出されていただろう。
自分の記憶世界から追い出されるなんて情けない真似当然出来るわけがないが、それ抜きにしてもこれは普通に追い出されてもおかしくない量だ。
ギリギリで耐え抜くと、その向こうには地獄が広がっていた。
負のエネルギーが溜まりすぎている。
俺はこれを抱えた状態で生きてきたのか...?
「さh...でし....ね~」
誰かの笑顔。
両親ではなく....親戚?
後書きから失礼します、著者の【さも】です。
これにて【第3章:贖罪を求めて】が終了したわけですが、いよいよ盛り上がってまいりました。
テラの生命エネルギーを吸ったバルトの目的は?
俊介が勝治からどのように怠惰を払拭させるのか?
怠惰を移行されミレイ・ノルヴァはどう思っているのか?
続きの展開に目が離せません!
それではまた第4章でお会いしましょう( ^_ゝ^)




